
旅行会社の新卒入社後3年以内の離職率の目安の一覧を各企業ごとに掲載。他の業種と比較しても特に高い。大手5社から中堅規模まで各企業ごとで実態には違いがある。。
新卒3年以内の離職率は3割と世間的に言われているが、旅行業界は全体的に離職率がやや高めである。定着率は決して良くはない。
大卒の就職先としては非常に人気の業界であるものの、すぐに辞めていく人もかなり多い傾向が見られる。
旅行会社の各社の離職率
企業名 | 新卒3年以内の離職率 | 備考 |
---|---|---|
JTB | 5-15% | |
KNT-CT | 10-20% | |
日本旅行 | 32.5% | 大手5社で唯一公表 |
HIS | 20-40% | 高め |
阪急交通社 | 5-10% | 低め |
まずは旅行業界の大手5社の新卒入社後3年以内の離職率についてである。
新卒3年以内の離職率を公表している会社に関しては具体的な数値で掲載。2015年度入社の社員を対象としたデータ。
未公表の会社に関しては推定値で掲載。会社の評判、年間休日や残業時間に関する情報などを参考に算出。
>>旅行会社への就職、難易度のレベルは!? 学部学科は関係ある?
JTB
旅行会社の中でも最大手であるJTBの新卒入社後3年以内の離職率は5~15%と推定される。
業界トップということで、大卒の就職市場でも特に人気の高い就職先となっている。男女問わず、「旅行=楽しい」というイメージから、仕事内容の印象も華やか。
毎年の新卒採用の倍率は数十倍以上には達するほど就職を希望する人が非常に多い。
社員の平均年齢は34.2歳、平均勤続年数は13年と明らかに悪い数値ではない。
ただ、離職率は決して低い数値ではない。旅行業界の中では比較的落ち着いているものの、他の業種と比較すると高い。
超大手企業であることも考慮すると、離職率の数値は気になる。
背景には、支店などでの営業になると個人客を相手するBtoCという性質がまず挙げられる。販売目標というノルマの一種もあり、クレームも殺到しやすい。
給料水準も決して高いわけではない。その上、休日も本部系の部署を除いてカレンダー通りには休めない。有給消化率でも日数は9.3日(56.4%)と多いわけではない。
シフト制という性質から、希望通りに休みが取れず、ここが不満のポイントとなる人も多いようだ。
残業時間も52時間(2017年)と長いと判断できるレベル。
そして、何よりも「旅行会社=華やか」という印象を抱いて入社したものの、実際に働くと仕事の厳しさを感じ、イメージと現実のギャップにショックを受けることも、離職率が高くなる要因でもある。
KNT-CT(近畿日本ツーリストなど)
近畿日本ツーリストなどのKNT-CTホールディングスもまた旅行会社ということもあって新卒3年以内の離職率は高い。10~20%になると推定される。
理由に関しては、基本的にJTBと変わらない。
BtoCという営業相手の顧客の性質、販売ノルマ、薄利他売から来る低い給料水準、残業時間、休日の取りにくさが挙げられる。
有給消化率も8.1日ということで10日未満。高いというレベルではない。
旅行会社ならではの華やかさに憧れて入社したものの、そんな華やかさがない現実とのギャップに失望して辞めていく人もまた少なくはない。
日本旅行
日本旅行の新卒入社後3年以内の離職率は32.5%と公表されている。
旅行業界大手5社の中では唯一正式に企業側から公表されている。ただ、高い数値であるのは間違いない。
背景にある理由は他社と変わらない。BtoCの性質、販売ノルマ、給料水準の低さ、残業時間、休日の取りにくさが要因。
ただし、HISよりは働きにくいわけではない。有給取得日数も日本旅行は9.2日と旅行会社の中では良好な方。
平均勤続年数も15.0年、社員の平均年齢は41.3。こちらも良好な数値ではある。
月平均残業時間も10.9時間となっている。
とはいえ、3年以内の離職率は3割を超えていて、ホワイトな企業といえるものではないだろう。
HIS
HIS(エイチ・アイ・エス)の新卒入社後3年以内の離職率は20~40%になると推定。旅行会社の中でも高い方に分類される。
残業時間は月平均58時間(2017年)というデータが出ている(リクナビ上では25.2時間)。50時間以上ということでかなり長い水準に達する。
有給消化率も28.1%とされている。JTBの56%の半分ほどではるかに低い数値である。
同じく給料水準も高くはない。休日も本部系の部署を除いてカレンダー通りには休めない。シフト制で希望通りに休むのは難しい。
旅行業界ならではのイメージにつられて就職した人にとっては地獄の世界のようだ。
なお、HISの平均勤続年数も7.7年、社員の平均年齢は33.8。定着率が良くないと伺える内容ではある。
そうした理由から、HISの3年以内の離職率は2~4割が目安になる。
阪急交通社
阪急交通社は旅行会社の中では最も離職率が低い。新卒入社後3年以内の離職率は5~10%と推定。
平均勤続年数は15.8年、社員の平均年齢40.8歳と公表されている。
他と比べると定着率が良いことを示している。
月平均残業時間は25時間。他社と比較すると決して少ない時間ではない。
ただし、残業時間の上限値はしっかりと管理されているとの声が多く、他社と比べて特定の部署で大幅な超過がほとんどない。
子会社系の旅行会社
上記以外の旅行会社も多数あるものの、大手5社以外だと大手企業の子会社に該当する企業が多い。
新卒3年以内の離職率の事情もやや異なってくる。航空会社では基本的に離職率が低い一方、鉄道系やメーカー系はやや高い。
航空会社系

~主な商社系の情報通信業の企業~
・伊藤忠商事系=ANAセールス
・JAL系=ジャルパック
新卒入社後3年以内の離職率…5~15%前後
ANAセールスとジャルパックはそれぞれANA、JALの子会社である。
ANAセールスは新卒入社後3年以内の離職率は7.6%と公表されている。
旅行会社という分類ではかなり低い数値である。大手5社と比較しても特段に低い。
ジャルパックは新卒採用がそもそも実施していない年もあって、データも公表はされていない。
推定では10~20%になるものの、大手5社に比べるとやや低い数値になると考えられる。
会社そのものの評判も高く、残業時間や社風に関するマイナスの声も少ない。
鉄道会社系

~主な商社系の情報通信業の企業~
・ジェイアール東海ツアーズ
・びゅうトラベルサービス
・東武トップツアーズ
・名鉄観光サービス
・西鉄旅行
・京王観光
・南海国際旅行
・小田急トラベル
新卒入社後3年以内の離職率…10~40%前後
鉄道会社系の旅行会社はそもそも数が多いため、新卒入社後3年以内の離職率も各社で大きく異なる。
JR系と私鉄系にも分離されるが、離職率では制度やコンプライアンス意識が高いだろうJRの方が低いと思われる。
私鉄系は各社の社風に左右されやすく、新卒3年以内の離職率も高くなりやすい。
いずれも基本的には3割程度になると予想する。
他の業界・職種の離職率について
業界別 | ゼネコン、証券会社、保険会社、銀行、小売業、航空会社、不動産、電力会社、自動車メーカー、情報通信業、製薬メーカー、ホテル、旅行会社、電機メーカー、IT、総合商社、化学メーカー、物流・倉庫、 |
職種別 | 営業職、 |
規模別 | 中小企業、国家公務員、地方公務員、消防士、警察官、 |
上記の記事では、それぞれの離職率に関する内容を取り上げる。
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東京都江東区在住。1993年生まれ。2016年国立大学卒業。主に鉄道、就職、教育関連の記事を当ブログにて投稿。新卒採用時はJR、大手私鉄などへの就職を希望するも全て不採用。併願した電力、ガス等の他のインフラ、総合商社、製造業大手も全落ち。大手物流業界へ入社。
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