南海電車の運賃は高い。大手私鉄としては珍しく、近中距離を中心にJRよりも料金が割高になっている。なぜ黒字経営で主要な路線を持っているにも関わらず値段が安くはない状態となっているのか。
南海電鉄は関西の私鉄の中でも経営状態は良くはない。鉄道の旅客運賃による売上高と純利益ともに、全国の大手私鉄の中では最下位クラスである。世間的に「大手私鉄」に分類される鉄道会社としては、西鉄と名鉄に次いでワーストランク3位に位置する。
JRの運賃との比較
南海電鉄 | JR西日本(電車特定区間) | |
10km | ¥260 | ¥180 |
20km | ¥440 | ¥300 |
30km | ¥550 | ¥460 |
40km | ¥690 | ¥640 |
50km | ¥790 | ¥800 |
南海電車の運賃は近距離と中距離を中心にJRの電車特定区間よりも割高に設定されている。
利用距離が40kmまではJRの電車特定区間の方が安い料金となっている。一方で50km以上となると南海の方が安くなる。
南海本線とほぼ全線に渡って並行し、関西空港にも乗り入れているJR阪和線はすべて電車特定区間に入っているため、比較する際の運賃として参考になる料金である。
他の地域を見ると、私鉄の方がJRよりも運賃が低くなっているケースが多い。南海電車の場合はその例外といえるだろう。
なぜ運賃が高いのか?
関西の大手私鉄といえば、京阪神間を結ぶ路線を持つ鉄道会社が脚光を浴びている傾向にある。阪急・阪神・京阪がそれにあたる。大阪と神戸、京都の間に位置する地域は人口がかなり多く、関西圏の中でも人口が集中するエリアである。
鉄道利用者が密集する地域なのが京阪神地区ということから、いずれも収益性はとても良い。関東の私鉄と肩を並べるくらいの力を持っている。
一方の南海電車については、沿線が阪和間が中心となっている。大阪市の難波駅から阪南エリアや和歌山県方面を結んでいる。しかし、沿線の人口は京阪神間には及ばない。
沿線が住宅地で密集しているのは大阪市内と堺市内くらいといえる。それ以南となるとところどころに田園風景が見え始める。駅周辺は鉄道利用者でいっぱいになっていたとしても、やや距離が離れると車社会が定着しているところが多い。
南海電車に乗る乗客そのものの数がそれほど多くはないことが、鉄道会社自体の収益が伸び悩んでいる理由となっている。大手私鉄の中で南海電車の輸送人数がかなり低いといえる。
JRとの競合も激しい
さらに、南海本線に関してはJR阪和線と並行して走っている。海岸側を南海、内陸側をJR阪和線の線路が延びている。
互いに同じエリアを走っているということから、沿線の鉄道利用者を2分割している。人口が多い京阪神間の地域であれば影響はそれほど重大なものとまではいかないが、郊外型路線となっている阪和間の鉄道となるとどうしても競合することで乗客の数が少なくなる。
その結果として、南海電車の収益があまり良くはなく、乗客が負担する運賃の値段が高めに設定されている理由となっているわけだ。