JR阪和線で運転されている225系と223系はすべて転換クロスシートになっている。一方で、座席数はほかの路線の車両と比べると少ない。1両当たりに座れる乗客の数がより限られてしまうようになっている。
京都線・神戸線で運転されている新快速や快速、宝塚線の丹波路快速、大和路線の大和路快速では、座席の配置は2+2になっている。
しかし、阪和線だけは1+2の配置になっている。片方だけ1人掛けの構造になっている。最新型の225系でも、10年以上前に作られた223系もこのような座席配置になっている。
なぜ、JR阪和線の系統だけがこのような1+2型の特殊な形になっているのか。他の路線のような近郊型の車両ではダメな理由はあるのだろうか。
空港を行き来する人向け
JR阪和線は日根野駅から関西空港線が分かれている。大阪市内と関西国際空港のアクセス手段という性質を持つ。
空港へ行く人は、大きなキャリーバッグやスーツケースを持っている人が多い。それらを電車に持ち込むと、自然と多くのスペースを使うことになる。
一般的な2+2の転換クロスシートだと、スーツケースやキャリーバッグを置けるスペースはとても限られてしまう。ロングシートとは違って、車内空間のほとんどを座席が占領している。
着席できる人の数は多いものの、荷物をもって乗るような電車とはいいがたい。そこで、空港へ行ける阪和線では、座席を1+2の配置にして、キャリーバッグやスーツケースを乗せやすくしているというわけだ。
他の路線では、快速系の電車であっても大きな荷物をもって電車に乗る人は少数派。そのため、スペースの確保よりもできるだけ多くの乗客に着席サービスを提供できるように、転換クロスシートでは2+2の配置で運用している。
普通電車も転換クロスシート
阪和線では、近年普通電車にも転換クロスシートの225系を投入している。将来的には、普通電車も225系または223系で運転される予定となっている。
他の路線を見ると、各駅停車ではロングシートの車両を使っているところが多い。ラッシュ時でも多くの乗客を一度に大量に輸送できるように、4ドア車の通勤型車両を入れている。
国鉄時代の旧式の車両を置き返す際にも321系のようなロングシート車を導入している。
しかし、阪和線だけは例外となっている。ロングシートではなく、転換クロスシートで近郊型車両の225系を採用している。
この理由も、座席数が従来の転換クロスシートの車両よりは少ない点があるのかもしれない。スペースが多く確保されているために、ラッシュ時の大量輸送にも対応できる。
わざわざ4ドアの通勤型車両を導入する必要がないものと考えられる。大阪環状線で導入されつつあるロングシートの323系もいらないのかもしれない。