ホームドアを設置する鉄道会社は増える傾向にあるが、その歴史について疑問に思ったことはないだろうか。どこの路線で初めて導入され、いつ頃から本格的に作られるようになったのか。最近になって考案された設備ではないのは確か。
日本初は1974年の熱海駅
鉄道の駅の安全対策として近年設置が議論されているのがホームドアであるが、その歴史は意外と長い。日本で初めて整備されたのは東海道新幹線の熱海駅である。これは1974年のことであるため、もう半世紀近く経過する。
熱海駅は待避線が地形的に建設するのが困難な状況となっているため、通過する列車もホームのある線路を走る。しかし、通過列車は高速で通過するため風圧は強くホーム上にいる人にとってはとても危険な状態であった。
そこで考案されたのが「可動式ホーム柵」だった。そして、1974年には東海道新幹線の熱海駅に設置され、国鉄初のホームドアとなった。
その後、これと同じ理由から山陽新幹線の新神戸駅にも可動式ホーム柵が設置された。現在は新神戸駅はすべての列車が停車するようになっているが、当時はまだ通過列車が存在していた。
全線に渡ってホームドアが導入されたのは1981年に開業した神戸ポートライナーである。新交通システムということで、鉄軌道を走る鉄道ではないが、軌道を走る電車ということではほとんど同じであるといってよい。
神戸ポートライナーは全自動の無人運転を行っていることから、より駅のホーム上の安全を確保するためにすべての駅に設置されたという歴史を持つ。なお、神戸ポートライナーの場合はフルスクリーン型のホームドアとなっている。これは開業当時から変わらない。
鉄道では東京メトロ南北線が初めて
鉄道路線の中でも全線に渡ってホームドアが設置されたのは1991年の東京メトロ南北線である。当時は営団地下鉄であったが、ホームドアとワンマン運転が考案されたのがこの路線である。
現在では複数の地下鉄や私鉄でホームドア&ワンマン運転が実施されているが、このコンセプトの原点は地下鉄南北線というわけだ。
既存の鉄道路線にホームドアが設置されたのは2000年の都営三田線と東急目黒線である。ここまでくるとつい最近のことであると感じるだろう。それまで、既存の在来線にホームドアが設置されるというケースはなかった。
この時、ホームドアが作られた一番の理由は東京メトロ南北線への直通運転の開始であった。すでに全駅にホームドアが整備されてワンマン運転を行っていた南北線に乗り入れるため、2路線でも設置することにしたのがきっかけである。
JRは山手線恵比寿駅が初
JRの在来線においては、2010年の山手線の恵比寿駅への導入が初めてである。計画が発表されたのは2008年のことであり、それから2年後の恵比寿駅が先行する形となった。
最終的には2020年頃を目途に山手線のすべての駅に可動式ホーム柵を設けることが予定されている。実現すれば、JRでは初めて全線ホームドア設置の路線となる見通しだ。
ただ、JR関しては私鉄と比べてあまり積極的ではない。地方に赤字のローカル線を多く抱えてあることもあり、なかなかホームドアの設置に資金を回せないという事情があるのかもしれない。
JR西日本では昇降式ホームドアの設置を進めている。ドアの位置が車両によって異なるケースが多いため、それに対応できるものを開発している。JR東日本とはまた違ったコンセプトを持っている。