JR宇都宮線の東京~黒磯間には特急列車がまったく走っていない。時刻表に掲載されているのは各駅停車に当たる普通と快速の2種類のみである。他の路線とは違う理由とは何か。3つの要因が挙げられる。
JR宇都宮線の正式路線名は東北本線である。その中の東京駅から栃木県の黒磯駅までの区間は宇都宮線という愛称が使われている。運転系統は宇都宮駅以南と以北で分かれている。東京側は10または15両編成で運行されているが、黒磯口では4または5両編成の短い列車となっている。
他のJR路線では特急列車が走っている。新幹線が並行して走っている東海道線や高崎線にも特急が存在する。しかし、東北新幹線と並行する宇都宮線には特急はない。
3つの理由は一体?
- 中距離輸送も新幹線
- 線路容量が限界
- 沿線に観光地なし
中距離輸送は東北新幹線が担っている。主に「なすの」と「やまびこ」が小山・宇都宮・那須塩原に停車することから、速達性を求めている人は新幹線を利用する。そのため、わざわざ特急を走らせる必要がないのが現状といえる。
栃木県内から都心まで早く行きたいが新幹線を使うまでは急いでいないという人は快速を使う。追加料金もかからないため経済的にもやさしいということで、たとえ特急があったとしても乗らないだろう。これもまた理由の1つだといえる。
また、線路容量にも限界がある。宇都宮線内を走る電車は人が乗る通勤電車のほかに貨物列車も走っている。東北方面と関東を結ぶ線路であるため、貨物列車の本数はかなり多い。
一方、線路は全線に渡って複線であり、複々線区間はまったくない。そこに普通電車と貨物列車が走っているということで、もうこれ以上は本数を増やせないという実情も加わっているものだと考えられる。
貨物列車がたくさん走っているという点でも、高崎線などとは異なるポイントであるのは間違いない。
さらに、宇都宮線の場合は沿線に観光地が存在しないのもまた特急列車が存在しない理由といえる。新幹線が走っていても並行する在来線に特急が走っている東海道線と高崎線の場合、都心から遠く離れた沿線には観光スポットがある。
東海道線には踊り子号の直通先である熱海や伊東線・伊豆急行線内に伊豆の温泉街がある。高崎線内には、直通先の吾妻線内に草津温泉という観光スポットがある。
しかし、宇都宮線内にはそのような温泉などの観光地が存在しない。日光は東武線が都心からの特急を走らせていて、すでに包囲している。JRよりも東武の方が便利であるため、たとえ特急をJR日光線経由で走らせても不利になってしまう。
こうした3つの理由から、JR宇都宮線には普通と快速の通勤型電車しか走っていないのである。今後もこの状態が続くと考えられる。