駅のホームドアが設置されている場合、列車の停止位置には従来よりも正確さが求められる。決められた位置から少しでもズレてしまうと開口部が一致しなくなるなるため、より精密に定位置で止まる技術が必要となる。
TASC(定位置停止装置)がベストだが
正確な停止位置に電車を止めるために、一部の路線ではTASC(定位置停止装置)を取り付けている。これにより、電車は停車駅に接近すると自動でブレーキがかかり、勝手に決められた場所に電車を正確に止めてくれる。
運転士が手動でブレーキをかけなくても勝手に自動でブレーキがかかるため、オーバーランや誤通過の防止策としても非常に有効的な手段となっている。これがあれば、ホームドアの設置駅でも正確な位置に列車が停止できる。
さらに、TASCによって運転士が自分の判断でブレーキの操作をする必要が一切ないことから、乗務員の負担の軽減にもつながる。その結果、一部のホームドアとTASCが整備された鉄道路線では車掌が乗務しないワンマン運転を実施しているケースも多い。
例えば、地下鉄の一部路線(丸ノ内線・副都心線など)や東急目黒線、つくばエクスプレスが挙げられる。いずれも全駅に可動式ホーム柵が導入されていて、TASCまたはそれを含んだATO(自動列車運転装置)がつけられている。
高度な最近技術を導入した路線であることで、従来とは違ってワンマン運転が行えているのは間違いない。
コストがかかるのは避けられない
ただし、TASCにも欠点がある。それはコスト面の負担額の大きさである。最新技術を駆使したシステムであるため、どうしても値段が高い。導入できる鉄道事業者は、黒字路線ばかりを保有している大都市の私鉄くらいである。
赤字ローカル線を多く抱えているJR各社でさえ厳しいケースが多い。JRでも山手線など全線に渡って利用者が多くて乗降客数が圧倒的に多いところでしか難しいのが現状ではないだろうか。
しかも、TASCの装置は線路上に設置するだけでなく、走る電車の車両にも取り付けなければならない。いくつもの車両を持っている路線の場合は特にTASCを導入するのがコスト的に難しいケースが多い。
近郊路線のように、都心部から郊外まで延びる距離の長い路線であれば、それだけ1つの線路を走る車両数も多いため、取り付けにも多額の費用を要してしまう。
こうしたことから、ホームドアを作るとより正確な停止位置に列車を止める技術が必要であるが、それを実践できるための設備を導入できるのは一部の限られる。
だからと言って、運転士の腕だけに頼ってしまうと、結局はオーバーランして停止位置を修正するのに時間がかかり、列車の遅延の原因となりかねない。ホームドアの設置はそう簡単にはいかないのは言うまでもない。