首都圏の鉄道路線では「6ドア車」が少し前まで注目を集めていた。混雑緩和が期待されていたものの、ここ最近になって廃止されている。なぜ再び4ドアに戻ったのか。
JR東日本、東急電鉄、東武鉄道では、かつて6ドア車を積極的に導入していた。具体的には、JR山手線、中央総武線各駅停車、埼京線、東急田園都市線にて実施された。
その理由は、該当する路線にて朝ラッシュの混雑がかなり激しかったことだ。
高度経済成長期以降、首都圏の各路線では通勤ラッシュの時間帯の乗車率の高さが社会的な問題となっていた。
場合によっては1つの列車にホーム上にいる乗客が乗り切れずに積み残しが発生シテしまう現象もあった。
今日でも、遅延が少しでも発生すると満員のため積み残しが出ることがある。
しかし、以前は平常なダイヤであってもこれが慢性的に起きていたケースもあった。そこで登場したのが6扉の車両である。
6ドア車にはどんなメリットがあった?
6ドア車の特徴は、1つの車両に片側6つの扉が付いていることが挙げられ、その次に座席がなくてすべて立ち席になるケースがあるという点だ。
運用している各路線では、朝の時間帯では座席を収納して座れる人が誰もいない状態にしていた。こうすることで、より多くの乗客が乗れる。
乗降時間も短くなった。1つの車両に6つの出入り口があることで、乗客の乗り降りをスムーズにでき、停車時間を短くすることができたようだ。
輸送力を強化させるための手段として、座席が収納できて乗降時間が長くならない6ドア車を積極的に導入したという経緯がある。
6ドア車が投入された路線はいずれも混雑が首都圏の中でも特に激しい路線である。JR中央総武緩行線、埼京線、東急田園都市線はいずれもワーストトップクラスの混雑率を誇る。
山手線についても、ワーストランキングの上位ではないが、それでもかなりの混雑率となる。
混雑緩和がある程度はできたのが、6ドア車が上げた実績とメリットであると言える。
なぜ次々と廃車・解体へ?
しかし、どこの路線でも6ドア車は次々と消えていくようになった。
2010年代に入ると、従来の4ドア車でも朝ラッシュ時の混雑に十分対応できるという見方が優勢となり、新たに導入されることはなくなった
新型車両の投入によって、古い車両よりも定員そのものが増えたことが1つの理由である。最新型の電車は、旧式のものよりも横幅が若干長くとられている。
これにより、定員増加が実現できた。1つの列車に乗れる乗客数が多ければ、その分混雑は若干ではあるが緩和される。6ドア車をわざわざ入れる必要がなくなる。
また、ホームドアの設置が実行または計画されるようになったことも6ドア車が廃車され始めた理由でもある。
ホームドアを付けるためには、その路線を走るすべての電車のドアの位置が統一されていなければならない。
4ドアと6ドアが混在する中では、ホームドアを設置できないことから、すべて4ドア車へ統一させる動きが加速していった背景といえる。
こうした経緯から、今後は6つの扉の仕様はいらない。廃車と解体が行われていく流れである。
該当する車両とは?
路線 | 車両 | 廃車の時期 |
山手線 | E231系 | 廃車済 |
中央総武線(各駅停車) | E231系 | 2020年 |
埼京線 | 205系 | 廃車済 |
東急田園都市線 | 5000系 | 2017年度中 |
JR山手線においては、早い時期から6ドア車が消えた。ホームドアの設置計画が以前から取り上げられていたためだ。
中央総武線各駅停車では、ホームドアの計画が具体的にはなっていない。そのため、2020年頃を目途に6ドア車の廃止が計画されている。
埼京線では国鉄時代に製造された205系はすでに引退完了となっている。6ドア車は205系のみだったため、廃車済である。後継のE233系はすべて4ドアとなっている。
東急田園都市線では、5000系に2006年から6ドア車を導入している。最後に作られたのは2009年であるが、2017年度内にはすべて廃車となる見通し。
田園都市線においても、東急線内と東京メトロ半蔵門線内にてホームドアが全駅に設置される計画である。それを見据えた廃車といわれている。
導入から10年ほどしか活躍できなかったのは間違いない。失敗だったかというと、否定はできない。