阪神なんば線には現在のところ「特急」という種別の電車はまったく走っていない。有料列車である近鉄特急も大阪難波駅止まりとなっている。阪神本線の無料特急もすべて梅田発着となっている。
阪神なんば線を経由して大阪難波駅まで乗り入れているのは、各駅停車と区間準急、快速急行のみとなっている。このうち、阪神線内で通過駅のある電車は快速急行だけだ。
阪神なんば線は近鉄奈良線と相互直通運転を行っている。阪神電車の管轄は尼崎~大阪難波間となっているが、この区間を走る電車はほぼずべてが近鉄線へ乗り入れている。
しかし、特急は1つも走っていない。臨時列車で近鉄特急が神戸三宮駅まで乗り入れたことがあるものの、定期列車はゼロである。なぜ、このように阪神なんば線には走っていないのか。
阪神=無料、近鉄=有料
阪神電鉄でも近鉄でも、「特急」という種別は走っている。しかし、料金体系は両者で大きく異なる。
阪神の特急とは、通勤型車両で運転されていて、運賃も乗車券のみの料金となっている。特急券は必要ない。追加料金がかからず、急行や快速と同じような性質を持っている。
一方、近鉄の特急といえば有料列車である。専用の車両で運転され、座席はすべて指定席となっている。乗客は乗車券・定期券に加えて特急券を購入しなければならない。運賃は普通電車の2倍程度に上る。
JRの特急と同じような性質をもっている。近鉄では無料で乗れる特急は存在しない。阪神電鉄の場合とは対照的なのがわかるだろう。
近鉄奈良線と相互直通運転をしている阪神なんば線では、特急という種別の電車を走らせるとなると、有料なのか無料なのかわからない。そのため、2009年に西九条~大阪難波間が開業した際には、速達型の種別を「快速急行」とすることにした。
近鉄特急の阪神直通がないのはなぜ?
では、有料列車の近鉄特急が阪神なんば線に乗り入れないのはなぜなのか。実際に、阪神線にも近鉄特急を走らせてほしいという意見は少なくないようだ。
有料列車の運転に消極的なのは阪神側の方とされている。阪神では現在でもすべての電車が無料であるということで、近鉄特急の乗り入れにはまだ同意していない。
阪神本線は、元町駅から神戸高速線を経由して山陽電鉄にも乗り入れている。梅田~姫路間での乗り入れを行っているが、阪神電鉄に所属する車両はすべて山陽電鉄にも乗り入れられるように対応している。
一方、近鉄所属の車両は山陽電鉄と神戸高速線への乗り入れには対応していない。特急の車両も同じで、阪神の神戸三宮までは乗り入れられても、それより先には行けない。
近鉄特急を三宮まで延ばすことは物理的には可能だが、定期列車でこれを実施すると、今度は相互直通運転を実施している山陽電鉄側と対立する可能性があるようだ。
現在、阪神本線では優等列車が特急が毎時6本、なんば線経由で近鉄直通の快速急行が毎時3本が運転されている。これだけでも、1時間あたり9本という本数になる。
これ以上優等列車を走らせられる余裕がダイヤ上ないというのも、阪神電鉄側にはあるようだ。このため、近鉄特急が今後阪神なんば線までの乗り入れが実現される可能性はかなり低い。