大阪メトロの各路線のホームドア(可動式ホーム柵)の設置状況について調査。整備の有無から背景にある理由についても解説。
一部の地下鉄路線ではすでに全駅にてホームドアが設置されている路線がある一方、まったく進歩していないところもある。
本体の導入コストはもちろんのこと、利用者数や在籍車両数などが絡む。
大阪メトロ9路線のホームドアの設置状況
路線名 | ホームドアの設置有無 | 補足 |
---|---|---|
御堂筋線 | 一部のみ | 心斎橋駅、天王寺駅のみ整備 |
谷町線 | 一部駅で導入中 | 東梅田駅 |
四つ橋線 | なし | |
中央線 | なし | |
千日前線 | 全駅整備済 | ワンマン運転実施 |
堺筋線 | 一部駅で導入中 | 堺筋本町駅 |
今里筋線 | 全駅整備済 | ワンマン運転実施 |
南港ポートタウン線(ニュートラム) | 全駅整備済 | 無人運転実施 |
大阪メトロの各路線のホームドアの設置状況は上記の表の通り。
路線全体にてすべての駅にホームドアが設置されているのは3路線。千日前線、今里筋線、南港ポートタウン線(ニュートラム)が該当。
御堂筋線は心斎橋駅と天王寺駅の2駅のみホームドアを使用中。それ以外ではまだ未整備。
谷町線と堺筋線ではそれぞれ東梅田駅、堺筋本町駅にて設置中。それ以外の駅での具体的な整備計画は出ていない。
四つ橋線と中央線ではホームドアが一切設置されていない。
ワンマン運転
ホームドアが全駅設置が実現している路線では大幅にホーム上の安全性が向上。
これに伴って、千日前線・今里筋線の2つでは車掌が乗務せずに運転士1人で運行するワンマン運転を実施している。
従来のツーマン体制では最後尾に乗務する車掌がドアの開け閉めを行うが、ワンマン運転ではドアの開け閉めは運転士が行う。
ホームドアによって車掌による発車時のホーム監視が不要になったことが背景にある。
各路線ごとの整備事情
続いて、大阪メトロ各線のホームドアの設置計画の背景にある事情について取り上げる。
未だに全駅設置が実現していない路線では様々な問題を抱えている。
御堂筋線
御堂筋線では2015年に心斎橋駅と天王寺駅の2駅にてホームドアが設置された。
しかし、それ以降は頓着状況が続いている。
背景には利用者数の多さによる朝ラッシュ時の激しい混雑がある。
ホームドアを設置すると、車両側のドアとホームドア側の扉の開閉にはタイムラグが生じる。これにより従来よりも停車時間が長くなる。
過密ダイヤには対応しにくい事情があり、全駅設置が追い付いていない。
しかも、御堂筋線のホームドアは車両側のドアとは非連動式タイプを採用しているため、開閉作業が連動式よりも時間を要する。これも実現を困難にしている。
いずれは連動式タイプを導入すると予定だが、車両側の工事も必要なため、直ちに設置が追い付かない。
また、ホームドアを本格的に導入するためには、駅ではより正確な位置に電車が止まる必要がある。
これを支援するツールに当たるTASC(定位置停止装置)またはATO(自動列車制御装置)の導入も必要。こちらも線路上および車両の工事が必要になる。将来的に導入される見込みだが、直ちに設置するのは不可能。
大阪メトロでは2020年をめどに全駅設置を目指すと発表しているが、その実現可能性が低いのが現状。
谷町線
谷町線では2020年中に東梅田駅にてホームドアを設置する計画。
それ以外の駅への設置はまだ具体化されていない。
TASC(定位置停止装置)またはATO(自動列車制御装置)の導入もめどが付いていない。
谷町線は特に駅数が他の路線と比べても多い。26駅もあることで、ホームドアの全駅設置はまだまだ先の話になるだろう。
四つ橋線
四つ橋線は1駅もホームドアがない。
並行する御堂筋線と比べても整備には消極的。
混雑が大幅に激しくて運行ダイヤに影響を与えるようなことはない。
その一方、利用者数が比較的少ないこともあってホーム上が大幅に危険というものでもない。
導入コストの問題もあり、どうしても大阪メトロで一度にホームドアの整備を進められる部分には限りがある。
優先順位が高くない四つ橋線が後回しとなっているのが現状。
中央線
中央線では1駅もホームドアがない。
こちらもまた、混雑が大幅に激しくて運行ダイヤに影響を与えるようなことはない。
優先順位が高くない四つ橋線が後回しとなっているのが現状。
千日前線
千日前線では2014年中に全駅へのホームドアの設置工事が完了。
2015年からはワンマン運転を開始。以後、車掌は乗務せずにドアの開け閉めは運転士が行う方式へ切り替わった。
全線を通して利用者数が少なく、ホームドアの導入とワンマン運転の実施に問題がなかったことで、早期整備が実現した。
ATO(自動列車制御装置)も導入されている。運転士は原則として発車ボタンとドアの開け閉めを行うにとどまる。
堺筋線
堺筋線では堺筋本町駅にてホームドアの設置工事を実施。
それ以外の駅への設置はまだ具体化されていない。
TASC(定位置停止装置)またはATO(自動列車制御装置)の導入もめどが付いていない。
背景にあるのは利用状況などの要因もあるが、最大は阪急電鉄との相互直通運転にある。
阪急所属の車両も堺筋線に乗り入れているため、ホームドア設置のための装置を車両側に取り付けるためには阪急電鉄の協力が不可欠。
ただ、これには多額のコストがかかるため、全駅へのホームドアの本格導入は具体化されていない。
今里筋線
今里筋線は2006年の開業当初から全駅にホームドアを設置。同時にワンマン運転を実施。
TASC(定位置停止装置)を導入。基本的な運転操作は運転士が手動で行うが、駅停車時のブレーキ操作は自動。
すでに時代そのものがホームドア+ワンマン運転が主流になったときに建設されたことが背景にある。