大阪地下鉄千日前線と近鉄難波線・阪神なんば線は並行して走っている。桜川~今里の区間では完全にこれらの私鉄の路線と並行して走っている。
しかも、千日前線と近鉄線では壁1枚を挟んだだけで完全に線路が並んでいる区間もある。
このような構図になっているため、千日前線の利用者数は大阪メトロの中でも少ない方に入る。そして、今里筋線と同じく赤字路線となっていて、収益性も悪い。
「千日前線はいらない」という意見も少なくない。なぜ、このように2つの路線が同時にできてしまったのか。
地下鉄千日前線の方が先にできた
今となっては近鉄難波線と阪神なんば線が相互直通運転を行っていて、2社を通しで乗れるようになった。
しかし、かつては千日前線しか東西に乗り入れていなかった。大阪市内の交通手段としては、どうしても地下鉄の方が便利だった。
阪神なんば線が開業したのは2009年のことである。「千日前線=いらない」という声が出てきたのはこれが開業してからの話。
阪神と近鉄が難波駅まで乗り入れは戦前からの目標でもあった。
沿線から直接乗り換えなしに大阪のナンバー2の中心地である難波まで行けるとなると、鉄道会社としての収益性が上がる。
しかし、千日前線と近鉄難波線ができた1970年頃はまだ市内交通は大阪市営地下鉄の利権が強く、阪神なんば線の計画が遅れた。千日前線が先にできた理由はこれが大きいかもしれない。
路線の性質は違う
路線の性質も違う。千日前線は大阪市内の移動手段を目的として作られた。また、御堂筋線・四つ橋線・中央線などを補完する役割も果たしている。
同じ大阪メトロということで、他の地下鉄路線との乗り継ぎには便利である。なんば駅を基準にすると、地下鉄を複数路線乗る場合には、東西移動は千日前線という選択肢になる。
南巽駅や野田阪神駅まで乗り入れていて、通勤路線という役割もゼロではないものの、市内の移動手段という性質の方が大きい。
一方の近鉄と阪神なんば線は大阪市中心部と郊外を結ぶ路線という役割を果たしている。阪神本線、近鉄奈良線も含んで、郊外のベッドタウンと都市へのアクセス網という性質だ。
大阪市内の交通手段という役割は非常に薄い。今日では相互直通運転を行っているが、それでも市内の移動手段のためというわけではない。
神戸方面と奈良方面を移動する人が大阪市内で乗り換えなどの不便さをなくすことが目的である。
このように地下鉄千日前線と近鉄・阪神では鉄道路線の性質と役割が違うのも間違いない。