東海道線や中央西線、関西本線といったJR東海の電車に乗ると、必ず車掌から次のようなアナウンスが行われる。
「お客様にお願いします。発車間際の駆け込み乗車は大変危険です。おやめいただきますよう、ご協力お願いします。」
この放送は、始発駅や途中の大きな駅を発車した直後に、列車の案内とともに行われる。さらに、実際に乗客のドア閉めの直前に飛び乗って、ドア再開閉をした場合にも、電車が出発した直後にアナウンスを通じて注意される。
放送を通じて言われることから、この放送を耳にするととても気まずい雰囲気になると感じることもあるかもしれない。
駅のポスターに目を通しても、駆け込み乗車禁止と書かれているものがよく目に入る。これは、在来線だけでなく、東海道新幹線の駅構内にも数多く見受けられる。
他社の場合はどう?
しかし、これほど頻繁に駆け込み乗車に関する警告を行っている鉄道会社は、日本全国の事業者を見てもJR東海くらいである。
他社の場合は、JR東海ほど頻繁に駆け込み乗車を防止する故の放送を行うことはなく、交通安全期間などの啓発放送の一部に盛り込む程度である場合がほとんどである。
さらに、他の鉄道会社においては、駆け込み乗車に関する啓発運動を行っている地域は列車の運行本数が多い都市部に限られる。1時間に1本くらいしか運行していないような田舎の路線ではまったく行っていない。
しかし、JR東海では1時間に1本程度しか走っていない地区でも都市部と同じようなアナウンスやその他啓発運動を行っている。
また、駅での乗降終了後に一度ドアが閉まった後、たとえ追加で利用客が電車によるために車両に近づいてきても再び開けて乗せるということはない。
ドアを閉めた後は、もう乗客を乗せないという方針を採っているのだろうか。
他の鉄道会社では、地方であればたとえ一度ドアを閉めた後であっても、乗りたいと意思表示をしている人がいれば、再度ドアを開けて乗せる例がほとんどである。
名古屋地区を走る私鉄の名鉄でも、単線区間で本数が少ないようなところだと、ドアの再開扉を行ってくれる例もあるようだ。これと比べると、JR東海は冷酷な対応と受け止めることもできるかもしれない。
なぜダメなのか?
JR東海の啓発ポスターやアナウンスによると、発車間際の駆け込み乗車をお断りしている理由は、あくまでも危険であるからということになっているように感じる。
安全面で良くないため、乗客に余裕を持った行動を促しているような内容となっている。
しかし、実際にはもっと他の理由がある。それは定時運行に関する要素である。JR東海のみならず、電車は秒単位で動いている。
発車時刻になっても乗車しようとする利用者がいると、列車が数秒でも遅れる原因となってしまう。これは、鉄道会社としては避けたいことであるのは間違いない。
たとえ数秒であっても時刻表通りの定時運行を行いたいこともまた、駆け込み乗車をお断りする理由の1つであるのも確かではないだろうか。