会社で仕事に必要な備品が自己負担であるというケースは決して少なくはない。ボールペンやホチキスといった事務用品のみならず、場合によっては携帯電話・スマホや自動車、パソコンなども自費でそろえなければならない企業もある。
本来、これらは業務上必要なものであるということで会社側が経費で落とさなければならないものである。しかし、実際にはそうした原則を守っていないところもある。
どんな例がある?
例えば、スマートフォンが会社所有ではなく個人所有のものを使うように指示されているのがよくあるケースだ。通話料は自己負担になったり、仕事でインターネットを使うためにかかるデータ通信料が出してもらえなかったりするのが定番だ。
自分の趣味などを調べたり、仕事には関係のない家族や友人と話すときには使用の携帯を使うことになるのは当たり前だ。しかし、会社の上司や取引先のビジネスパーソンと話す場合には業務上の行動であるため、本来は勤務先が負担べきものだ。
また、社内で使うボールペンなどの事務用品も会社負担であるのが道理である。ボールペン程度なら値段が安いということで自己負担でも影響はかなり小さい。しかし、パソコンやタブレット端末となるとその影響は大きい。
パソコンは1台最低でも数万円はする。CPUやメモリが高質なものとなると10万円は軽く超えてしまう。1か月分の給料を仕事で使う備品につかうのはかなりばかげているとしか言えない。個人所有のものではなく会社の備品としてそろえるべき設備であるのは間違いない常識だ。
法律上は違法ではないの?
会社での仕事で使う設備や備品が自己負担で用意しなければならないという方針について、法律上はどうなっているのだろうか。
答えは、残念ながら「違法ではない」。備品の費用は誰が支払う出来なのかは、労働基準法などの法律では触れられていない。
とはいえ、給与の「全額払いの原則」がある。これは、働いた分の賃金は100%すべて労働者に支払わなければならないという決まりであるが、もし仕事で絶対に不可欠なものが自費だとすると、理論的にはすべての給与をもらっていないことになる。
一部が控除されているのと同じ状態だ。労働基準法には、「賃金は、一部を控除することなく、その全額を支払わなければならない。」という文面が記載されている。つまり、備品を会社員に払わせる行為は間接的には違法であるとみなされるケースもある。
特に、その値段が高額で会社員の生活に大きく負担をかけている場合は、違法性が問われる可能性もある。