大阪メトロには2017年時点で8路線あるが、そのうち4つは赤字の状態となっている。運賃による収入よりも経費としてかかる出費の方が多くなっている。
大阪の地下鉄の運賃が全体的に高い傾向にある理由はここにあるわけであるが、建設コストが割高になったり利用者数そのものが少ないなどの要因で赤字になっている部分を多く抱えている。
路線別では、今里筋線・千日前線・鶴見緑地線・ニュートラムが赤字の路線となっている。さらに、かつては御堂筋線以外の路線も赤字になっていた。
大阪メトロ全体の財務状況に関しては、2005年からようやく黒字になった。それまでは単独では採算が取れない状態が続き、足りない分は市民の税金が投入されていたという歴史をもつ。
また、以前は御堂筋線で獲得した収入を他路線の維持費に補填するという経営が続いていた。今では補てんする中央線・谷町線・堺筋線が黒字になったこともあってその傾向は緩やかになったものの、それでも依然として一部補填している路線が存在するのは事実。
なぜ4路線は赤字なのか?
赤字の状態に陥っている路線に共通することととして、そもそも利用者数が少ないことが当てはまる。
千日前線・鶴見緑地線・今里筋線ではすべて4両編成で列車は運転されている。本数自体も日中の時間帯は1時間あたり8本程度しか運転されていない。
次に、各路線別での赤字の理由は次の通りとなる。
- 今里筋線=JR大阪環状線の外側を走るため需要少ない
- 千日前線=ほぼ全線で近鉄難波線・阪神なんば線と並行
- 鶴見緑地線=需要の大きい繁華街を通らない
- ニュートラム=南港エリアのみ走るため
根本的に需要が大きくなるようなエリアを走っていないことが、現時点でも赤字の状態に陥っている理由となっている。
今里筋線の場合、そもそもJR大阪環状線の外側を走っているということで、需要がないエリアだけを結んでいる。鉄道空白エリアに建設できたという点では評価されることもあるが、それでも需要そのものが少ないのは否定できない。
千日前線は完全に近鉄難波線と阪神なんば線と並行して走っているため、需要が見込めない。路線距離や運行本数も近鉄と阪神の方が圧倒的に多いため、千日前線を使う人は限られてしまっている。
鶴見緑地線もまた、利用者数が多くなるような地域を走っていない。大阪ビジネスパークや大阪ドームへのアクセスとなっているのは確かだが、それでも主要駅が少ないことで利用者数が伸び悩んでいるのは確か。
ニュートラムの場合は臨海部の南港エリアへの通勤手段という性質があるため、利用者数は主要な路線と比べると少ない。
黒字化は難しいか?
さて、これらの赤字4路線が単独で黒字化する見込みはあるのだろうか。今のままだと、間違いなく運賃収入が増える可能性が低い。
単独で収入が支出を上回るようにするためには、旅客数を増やすしかない。沿線の開発や路線そのものの延伸がその改善策となるという声もあるが、沿線に住民や企業が集まらなければ利用者は増えない。
今里筋線と鶴見緑地線については、梅田や難波、天王寺といった大阪市の中心地が沿線に存在しない以上、沿線の活性化がない限りは赤字が続くだろう。
そして、千日前線についてはもはや黒字化はかなり難しい。近鉄と阪神と並行して走っている以上、乗客を奪い取るしかない。今ある土地からこれ以上利用客数を増やすのはかなり厳しいだろう。
延伸させれば、今よりも乗客が増える可能性はかなり高いが、それでも建設コストの回収ができるかどうかは不透明としか言えない。
こうした点から、これら4路線の赤字分の費用については今後もしばらくは乗客数が多い御堂筋線などでの運賃収入でまかなうしかないだろう。