山陽新幹線の最高速度を320km/hへ引き上げる予定はないのか。2007年から姫路駅以西の区間では300km/hでの運転を、主にのぞみ、みずほ、さくら号で実施している。
近年は新幹線のさらなる高速化が進んでいる。東京~新大阪間の東海道新幹線ではN700系の運転時には270→285km/hに引き上げられた。車体を傾斜させることでカーブでもスピードを落とさずに曲がれる技術が進歩したためだ。
東北新幹線でも、新型車両のE5系・E6系で運転されるはやぶさ号では275→320km/hに引き上げられた。やまびこ号、はやて号などでは従来通り275km/hまでとなっているが、最速列車は大幅なスピードアップとなった。
当面は300km/h止まりか?
山陽新幹線では10年以上も300km/hでの高速運転を行っているが、今後もこのままの状態が続く可能性が大きい。最高速度を引き上げることで所要時間を短縮する傾向はみられない。
このところは、ATCという鉄道信号を改良することで無駄な減速を省き、所要時間を短くすることに力を入れている。
これまでは、停車駅に近づくと段階的に速度を落としていっていた。安全にスピードを落とせるというメリットがあるが、無駄に減速することで、速達化の妨げとなっていた。
そこで、ATCの仕組みを見直し、停車駅に止まるために減速する際には段階的にではなく、一気にスピードを落とすような仕様へ切り替わった。
信号設備の改良により、特に停車駅が多いこだま号の所要時間が大幅に短縮化された。主要駅にしか止まらないのぞみ号などでも、数分の短縮化が実現した。
最高速度がこれまで通り300km/hのままだが、ATCを改良したことで山陽新幹線単独の平均速度のスピードアップが行われたといえる。
320km/hまでは難しい?
山陽新幹線と東北新幹線の違いとして、前者はカーブが多くて線形があまりよくない。東京~新大阪間の東海道新幹線に比べると直線的になっているが、それでも300km/hを超えるスピードでの運転を前提として建設されているわけではない。
山陽新幹線が1970年代前半の当時は、最高速度は250km/hでの運転を前提として建設していた。開業当初は0系による210km/hで運転されていた。
最小曲線半径が4,000mになっているが、それでも300km/hを超える設計になってはいない。N700系は、傾斜をつけてカーブを曲がる仕組みになっているが、これでも300km/hを超えてカーブを通過するのは難しい。
320km/hへ引き上げることが可能だとしても、今の車両では直線でしかスピードを維持することができない。カーブに差し掛かれば減速せざるを得なくなる。
カーブの通過速度を改善しない限り、所要時間の短縮化は難しい。したがって、山陽新幹線では当面の間は今の300km/hが最高速度であり続けるだろう。