東海道山陽新幹線で2020年から運転開始される新型車両「N700S」の最高速度は今のところ300km/hを予定している。
現時点では、東海道区間に当たる東京~新大阪間は時速285キロメートルが上限となっているが、N700Sでは300km/hへ引き上げられるかもしれない。
従来のN700系よりも高速走行の時の振動が少なくなるような設計になっている。このため、今までよりもスピードが出せる設計が車両に施されるのは間違いない。
東海道新幹線でも300km/hになる可能性は?
東海道新幹線においては山陽新幹線の区間よりも最高速度が遅く設定されている。285km/hが上限となっている。300km/h走行できるのは山陽新幹線の部分のみである。
東海道区間で285km/hが最高速度に抑えられている主な理由は、きついカーブが挙げられる。基本的に曲線部分は2,500mが基準となっている。今のN700系は、このカーブは270km/hで通過できる。
東京~新大阪間では直線が長く続くところはあまりない。古い時期に作られたこともあって、くねくねしている線形となっている。
かつてよりも最高速度が上がっている理由は車両性能が向上しているからだ。N700系からは車体傾斜装置が開発され、カーブで車体を傾けることで高速通過できるようになった。N700Sでもこの装置が取り付けられる。
車体の振動が少なくなったことも主な要因に挙げられる。技術の進歩により、車内の揺れが少なくなったため、より高速走行ができるようになったのも確かだ。
N700Sは、より振動が少なくなるようだ。これで、今の285km/hから300km/hへ最高速度が引き上げるのは物理的には可能。
所要時間は短縮化できない
ただし、カーブではこれまでのN700系と同じようにスピードを落とす必要がある。車体傾斜装置そのものの性能は従来のN700系とほとんど同じである。
したがって、直線では快適な高速走行ができてもカーブ直前で減速せざるを得ない。すなわち、N700Sの投入で所要時間の短縮化ができる可能性は低い。
300km/h運転をしても、加減速を繰り返すような走りとなるのは目に見えている。すでに285km/hが東海道新幹線の上限といわれているのは現状である。
線路周辺への騒音の問題もある。今よりもスピードアップさせるとなると、新たな騒音対策も必要になる。N700Sの導入のような車両側の改善では解決できない。
これには莫大なコストがかかる。リニア中央新幹線の建設という大規模なプロジェクトがある以上、東海道新幹線の高速化は優先度が低いと考えられる。
山陽新幹線の今の300km/hから320km/h、あるいはさらに360km/hへの高速化も難しい。高速化よりも優先させる課題がある以上、N700Sの投入でますます早くなるとは考えにくいのが正直なところだろう。