京急本線は全列車トイレなし! なぜ設置されていないのか?

車内トイレ無しの京急

京急本線を走る車両には車内トイレが全く付いていない。快特・特急・エアポート急行などの全種別どれも同じ。都営車・京成車も変わらない。

なぜ御手洗の設備がまったく設置されていないのか。理由としては、長距離列車というわけではなく、運行本数が多いことが挙げられる。トイレを付けても費用対効果が低い。

有料座席指定制のウィング号もトイレ無し。電車に乗る前に用を足しておくことが乗客には求められる。


京急本線にトイレがない理由

京急本線にトイレがない具体的な理由としては、以下のようにまとまる。

トイレ無しの理由 詳細な内容
近距離電車だから 京急本線系統の品川~三崎口の距離は66km。都心から郊外へ放射状に延びる私鉄では長い方だが、トイレ必須というほどの道のりではない。
運行本数が多いから 京浜東北線は高頻度運転を実施。快特でさえ日中でも10分間隔で走っている。車内トイレが求められるほど少ない本数とは程遠い。
費用対効果が合わない トイレの維持管理には多額の費用がかかる。在籍車両数が多いこともあって、コストの割りに合わない。

近距離電車のため

京急本線と久里浜線の合計の営業キロ数は約66km(品川~三崎口)である。私鉄(つまりJR以外)の中では長い方に分類される。他の路線は30~40kmのところが多いため、京急線は長いと判断できる。

ただし、私鉄においてトイレが付いている路線はほとんどない。車内トイレが完備されているのは追加料金が生じる有料特急がほとんど。普通列車だと片道100km以上も走る東武日光線や近鉄の一部などに限られる。

京急本線は羽田空港から都営浅草線を経由して京成本線、北総鉄道線、京成成田スカイアクセス線と相互乗り入れを実施している。

1本の電車が走る片道の距離は長いものの、それでも85kmほどで、しかもほとんどの乗客は都心部を乗り降りする人ばかり。車内トイレの需要はそう多くはない。

JR東海道線

JR東海道線は全列車トイレ有り

なお、京急本線と品川~横浜間で並行して走るJR東海道線にはすべての車両にトイレが設置されている。こちらは片道100km以上走るような中距離電車のため、トイレの設置基準を満たしている。

>>京急vsJR東海道線・京浜東北線! 2路線を徹底的に比較してみた

運行本数が多いため

京急本線は、最も運行間隔が広がるエリアでも日中は1時間当たり6本(10分間隔)で運転されている。

これは鉄道の中では「高頻度運転」に該当する。

どうしてもトイレに行きたい場合には、途中駅で一旦降りて用を足すという手段が選べる。一度電車を降りると、次が来るのが30分から1時間後というようなレベルではない。

一方のトイレが設置されているJR線の中距離電車ではそういうわけにはいかない。

東京都心に近い地域なら本数が多いものの、郊外へ行くと本数が少ない。1時間に1本というエリアもある。

京急をはじめ私鉄各社では近距離輸送に重点が置かれているため、トイレの設置にはかなり消極的である。

費用対効果が合わないため

京急と相互直通運転を行う京成

トイレを本当に付けるとなると、鉄道事業者である京急電鉄にとって負担となるコストは設置時だけではない。日々の維持管理にも多額の費用がかかる。

トイレのタンクの清掃や水の補充の作業が必要になる。これらの管理のための費用が生じてまで列車内にトイレを設置する必要性が低い。

通勤路線ということで、朝夕は満員電車となって激しく混雑する。トイレのスペースができれば、その分乗客が乗れるスペースがなくなるというデメリットもある。

混雑がよりひどいものになる原因にもなりかねない。

参照:京急本線の朝ラッシュの混雑状況を時間帯・区間ごとに調査!

しかも、京急本線は単独路線ではない。品川駅が都心部の中核駅という性質が強いものの、その1駅都心部側の泉岳寺駅からは都営浅草線と相互直通運転を実施している。

さらに、都営浅草線の終着駅の押上駅からはそのまま京成押上線へ乗り入れ、さらに京成本線・北総鉄道線・京成成田スカイアクセス線へも乗り入れる。

つまり、京急本線には京急(自社)・東京都交通局・京成の3社局の車両が乗り入れている。

これらにトイレを付けるには、複数の鉄道会社間での合意が結ばれることが大前提になる。

こうした手間もあり、車内トイレの設置には至っていない。

ウィング号も車内トイレ無し

京急ウィング

京急本線の有料座席指定列車であるウィング号にもまた、すべての車両にてトイレが付いていない。

  • 京急ウィング号
  • モーニングウィング号

追加料金がかかり、乗車券・定期券に加えて座席指定券Wing Ticket, Wing Passが必要になる。

「特急券」のようなものと考えればよいだろう。

通過駅の多く設定されているため、有料特急の性質が強い。とはいえ、実際にはどちらかというと「ライナー」と言える。

使われているのはあくまでも通常の快特などで使われる通勤型車両である。座席のタイプこそは進行方向に向かって座る転換クロスシートだが、構造そのものは普通列車と同じ。

そんなこともあって、有料座席指定列車のウィング号でも車内トイレは全く付いていない。

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