東京メトロ日比谷線は8両編成から7両編成に切り替わっている。新型車両である13000系(東武70000系含む)の投入で車両の連結数が減らされた。
利用者からは朝や夕方の通勤ラッシュの混雑が激しいことで、もっとも車両数を増やしてほしいという声もある。千代田線や半蔵門線のように10両編成にしてもらいたいとの意見もある。
なぜ日比谷線だけこのようになったのか、背景にある事情をみてみよう。
7両編成でも輸送力は以前と同じ
東京メトロ日比谷線では、以前の主力車両は03系(東武20000系含む)だった。さらに、今と同じように東武スカイツリーラインへ直通していて、さらには東急東横線とも中目黒駅を境に相互直通運転を行っていた。
しかし、それらの旧式の車両は廃車となっている。東横線への乗り入れもなくなった。
車両の置き換え | 東京メトロ所属 | 東武鉄道所属 | 編成数 |
変更前 | 03系 | 20000系 | 8両(18m) |
変更後 | 13000系 | 70000系 | 7両(20m) |
東京メトロ13000系と東武鉄道70000系の投入によって、それまでは18m車8両編成だったのが、20m車7両編成へ変わった。
しかし、1編成当たりの輸送力は今も昔も変わっていない。車両の連結数は確かに減ったが、1両あたりの長さが長くなった。結果として、新型車両でも乗車定員はほとんど変わっていない。
通勤通学の時間帯となれば日比谷線も激しい混雑となるが、輸送力が大幅に欠如するほどにはなっていない。
もちろん、乗客の気持ちとしては今の7両編成よりも8~10両にしてもらった方が混雑率が下がりゆとりができるのでメリットがあるのは確か。
それでも大規模な予算を費やしてまで行う対策というほどでもない。
日比谷線で長編成化できない理由
日比谷線で長編成化できない理由は1つである。駅ホームの有効長が18m車で8両編成分しかないからだ。
20m車にすると7両編成が限界となる。千代田線や半蔵門線などとは違って、10両編成には対応していない。
短い編成で運転している銀座線や丸ノ内線、南北線も同じ事情にある。
日比谷線の場合、直通先の東武線は10両編成での運転が行われているため、ホームの長さも10両分が確保されている。
早い時期に建設された日比谷線は、まだ利用者数がそれほど多くはなかった時期に作られた。
不足感が出てきたのはバブル期以降のこと。そして、今の需要に対応しなかった点が長編成化できない理由というわけだ。
日比谷線は7両編成で十分?
もっとも、日比谷線は東京メトロの各線の中では比較的混雑が緩やかな方に入る。朝ラッシュの混雑率の最大値は150%台で推移している。
これは副都心線、南北線に次いで混雑率が低い。東京メトロの各線の混雑率のランキングは次のようになる。
順位 | 路線名 | 混雑度 |
1 | 東西線 | 199% |
2 | 千代田線 | 178% |
3 | 半蔵門線 | 173% |
4 | 丸ノ内線 | 163% |
5 | 有楽町線 | 163% |
6 | 銀座線 | 160% |
7 | 日比谷線 | 157% |
8 | 南北線 | 156% |
9 | 副都心線 | 151% |
乗車率が大きくて満員電車の状態であることは間違いないが、首都圏の他の路線と比べるとそこまで地獄の様子というわけではない。
莫大なコストをかけてまで日比谷線のすべての駅を8両あるいは10両編成に対応させる工事を行う必要性があるかというと、そうではないだろう。
朝の混雑率が200%にもなる東西線の混雑緩和、ホームドアの設置工事など、優先されるべき課題がある中、日比谷線の輸送力強化はどうしても先送りになってしまう。
したがって、今のような7両編成でも十分といっても決して過言ではないというしかない。