鉄道の駅のホームドアの種類の一覧を掲載。主要なものとして4つに分類される。今回はそれぞれのメリットとデメリットの両方を比較する。
可動式ホーム柵、フルスクリーン式、昇降式、スマートホームドアの4つが主流となっている。
いずれもホーム上から線路への転落事故を防ぐことが最大の役割となっている。ただ、いずれも導入コストや安全性能、停車時間などの要素で違いが見られる。
ホームドアの種類の一覧
種類 | 特徴 | 導入実績 |
可動式ホーム柵 | 大人の腰くらい高さのホームドア。転落事故、車両接触は回避できるが、手荷物落下の危険性はある。やや軽量でコストは標準。最も導入実績が多い。 | 多数(東京メトロの大半、山手線など) |
フルスクリーン | 床から天井まで完全に覆うタイプ。ホーム上を完全に密閉するため、エアコンの効率が高く、突き落とし行為や自殺の阻止が可能。ただし高コスト。 | 東京メトロ南北線 |
昇降式 | ロープまたはバーが垂直に昇降するタイプ。ドアの位置が異なる車両が乗り入れる路線で有効。隙間から括り抜ける危険性あり。軽量でコストは標準。 | JR西日本(京都線・ゆめ咲線) |
スマートホームドア | JR東日本が開発。可動式ホームドアの軽量化版。一番下の隙間からくぐり抜ける危険性あり。軽量で低コスト。 | JR東日本の一部(横浜線・京浜東北線) |
ホームドアの種類はこのようになる。
最も多いのは「可動式ホーム柵」と呼ばれるタイプのものだ。一般的に駅で見るタイプのほとんどはこれに該当する。残りの3種類はいずれもレアだ。
参照:ホームドアのメーカーの主要10社! 鉄道会社ごとのシェアとは!?
可動式ホーム柵
<主な特徴>
- 国内で最も主流のホームドア
- やや軽量でコストは標準的
- ワンマン運転を同時に行う路線も
可動式ホーム柵は床からの高さが1.0~1.5メートルほどの高さの種類である。大人の腰くらいの高さで、転落事故や車両との接触事故が防げる。
重量はやや軽量、導入コストはふつう。特に何か特別な理由がない限りは、この可動式ホーム柵を採用する鉄道会社がほとんど。日本国内では導入実績が圧倒的に多いホームドアの種類でもある。
可動式ホーム柵を設置したことで安全性が向上したと判断し、電車の最後尾に車掌が乗務しないワンマン運転も行われている。
ただし、腰の高さから上側は何もないため、安全性は100%というほどにはならない。ホームドアを乗り越えれば線路へ転落してしまう。自殺するために行為に乗り超える人もゼロではない。
やや軽量とはいえ、従来の一般的なホームの構造では強度が不足する。したがって、可動式ホーム柵を導入する際には補強工事も必須になる。ただホームドアを設置するというわけにはいかない。
フルスクリーン
<主な特徴>
- 密閉式のため空調の効率が良く安全性が高い
- 重い、高コスト
- 導入実績が少ない
フルスクリーンは言葉の通り床から天井まですべて多いタイプのホームドアである。ホーム上はほぼ密閉状態になる。エアコンの効率が良く、転落事故や車両との接触をほぼ100%防げる。手荷物が落下する危険性もない。
安全性に関しては他と比べて一番高い。駅構内へ進入してくる列車の風圧もかなり防いでくれる。列車風の影響が大きい地下鉄で特に効果を発揮する。地下トンネル内の通過列車がある駅はさらに威力を発揮。
ただし、導入コストはかなり高い。可動式ホーム柵と比べても相当に割高になる。
実際のところ、日本国内での導入実績は少ない。東京メトロの南北線の多くと京都市営地下鉄東西線、京王線の布田駅くらいに限られる。
さらに、天井まで覆っている構造からどうしても死角が出やすい。電車の発車時の安全確認が行いづらいという欠点もある。
昇降式
<主な特徴>
- ロープ、バーが上げ下げするタイプ
- ドアの位置が異なる車両が走る路線で有効
- 低コストだが安全性はやや低い
昇降式はロープまたはバーが垂直方向に上がったり下がったりするタイプのホームドアである。
電車のドアの位置が異なる車両が走っている路線で有効な手段として注目されている。可動式ホーム柵だと決まった位置に車両のドアが統一されていないと使えない。
昇降式ならロープやバーが上げ下げするだけのため、車両のドアの位置はあまり関係ない。片側3ドアでも4ドアでも対応できる。
ただし、物理的な柵よりもロープやバーが壁の役割を果たすため、安全性にはやや欠ける。小さい子供だと隙間をくぐり抜けたり、ロープ・バーを足掛けにしてよじ登って線路に転落する危険性が残る。
隙間をくぐったり乗り越えることができる点で、可動式ホーム柵よりも安全性が低いのが懸念材料であり、昇降式ならではのデメリットに当たる。
導入実績としてはJR西日本の京都線・神戸線・ゆめ咲線などの一部、相鉄や小田急の試験的な設置が挙げられる。JR西日本が最も積極的である。
スマートホームドア
<主な特徴>
- 可動式ホーム柵の簡易版
- 軽量で低コスト、工期が短い
- 安全性に懸念ポイントあり
スマートホームドアはJR東日本が開発した新型の「可動式ホーム柵」である。基本的な仕組みは従来の可動式ホーム柵と同じである。
違う点は重量が軽量が軽量で、構造がコンパクトな作りになっている点だろう。
重さが軽いため、ホームドアの設置のために既存のホームの補強工事がほとんどいらない。工期も短く、運用開始までの時間があまりかからないというメリットがある。
一方で安全性は可動式ホーム柵よりも低いのが実情だろう。開口部はバーのような存在のため、下部には大きな隙間があり、高さもそれほど高いとは言えない。
スマートホームドアは簡単に乗り越えることができ、子供なら簡単に下からくぐり抜けることもできる。
転落事故や自殺防止を完全には防げない可能性が懸念される。したがって、車掌を廃止してワンマン運転を狙う鉄道事業者には向いていない。
可動式ホーム柵の細かい種類
日本国内で最も一般的な「可動式ホーム柵」という括りでは同じでも、種類はさらに細分化。
大きく分けると、車両のドアとホームドアが連動するタイプ、画像センサーによってドアの開閉を読み取ってホームドアが動く画像センサー方式。これは2つが連動型ホームドアに分類。
もう一方が非連動型ホームドア。名前から想像できる通り、ホームドアの開け閉めは列車の最後尾に乗務する操作する。
車両ドア連動型
特に1つの路線の中で全駅にホームドアが設置されている路線で主流のタイプがこの車両ドア連動型。
車掌または運転士(ワンマンの場合)が車両側のドアの開閉操作を行うと、連動して駅ホーム上のホームドアの開閉が行われる仕組み。
車両側のドア開閉の信号が直接ホームドアに送信されるため、ホームドア操作のための時間的な遅延が少ない。
長年の使用実績もあって故障等が最も少ないタイプともいわれている。
一方でデメリットはコスト上の問題。車両ドア連動型ホームドアでは、車両本体にもホームドア対応の設備を追加しなければならない。
ホームドアと車両のドアの開閉が連動するための装置を乗り入れ車両すべてに取付けなければならないため、相互直通運転があると乗り入れ先の鉄道事業者の協力も必要になる。
画像センサー方式
駅ホーム上にカメラを設置し、車両の定位置での停車、車両ドアの開閉を画像処理の技術で読み取ってホームドアが開閉される仕組みがこの画像センサー方式。
上記の車両ドア連動型とは仕組み上やや異なる。
列車到着時は定位置に列車が停止すると、カメラが列車到着を認識して自動的にホームドアが開く。
車掌または運転士(ワンマンの場合)はホームドアが自動的に確実に開いたことを確認してから、車両側のドアの開閉操作を行う。
ホームドア自体は車両側のドア操作に関係なく、定位置に電車が止まれば自動的に開くところが特徴。
列車発車時は、まず車両側のドアから閉まる。ホームドア側は、カメラが車両側のドアが閉まる動作があることを認識すると自動的にホームドアを閉める動作を行う。
車両側のドアが再度開くと、ホームドア側もカメラでそれを読み取って再度開く。
車両ドア連動型との違いは、車両とホームドアとの信号的なやり取りないこと。
あくまでもホームドア側はカメラによる画像処理で車両側の停止状況とドアの動きを認識するだけで動作。
そのため、車両側ではホームドアの対応工事なしでも運行できるところがメリット。
デメリットは動作にタイムラグがある点。信号の送受信では動作しない以上、駅停車時のドアの開け閉めに時間的な無駄が生じ、停車時間の延長と列車の遅れが起きやすい。
QRコード方式
カメラでの画像処理によってホームドアが動作する画像センサー方式と仕組み的には同じだが、こちらはQRコードを使って車両側のドアの位置を仕分けする機能が付いている。
路線によっては車両ごとにドアの位置が異なる場合がある。
ホームドアがあると、作動する必要がある箇所と必要がない箇所が混在。
そこで、車両側のドアにQRコードを張り付けて、駅ホーム上のカメラで車両の種類を認識させる方法といしてこれが発案された。
駅停車時の動作そのものは画像センサー方式と同じ。車両側とホームドア側の信号的なやり取りはない。
ホームドアの種類はこう決まる
ほとんどの鉄道事業者では、ホームドアを導入する際にまず検討するのが「可動式ホーム柵」である。安全性と設置にかかる費用を総合的に考えるとちょうどバランスが取ら他ものになる。
特に都市部周辺の路線では運行ダイヤには余裕がない。ホームドアの開け閉めも電車のドアと連動して行うことが求められる。
>>ホームドアで停車時間は増加!? 遅延や所要時間が長くなる原因に
中には非連動のホームドアもあるが、それは基本的には試験的に導入している路線がほとんど。本採用ではやはり停車時間を短くするために連動式が多数だ。
ホームドアと車両のドアが連動し、なおかつ開け閉めが迅速に行えるのは可動式ホーム柵またはフルスクリーン型の種類になる。
昇降式は安全性の観点から非連動が基本。導入コストを考えるとここでも可動式ホーム柵が第一候補になるだろう。
スマートホームドアも選択肢に入るが、こちらはまだ安全性に不安があるなどの点から、ホームドアの主役になるには至っていない。