大阪地下鉄今里筋線は赤字路線となっていて「いらない」という声もかなり多い。乗客が少ないため、走らせれば走るだけ損失が増えていくのが実態だ。
利用者が見込めないにも関わらずなぜこの路線を建設したのか。そんな理由について疑問を感じる。
JR大阪環状線の外側を走るため、大阪市の中心部さえも走らない。今里筋線の存在の意義が問われるのは必然的だろう。
今里筋線ができた理由
今里筋線以外にも大阪地下鉄では赤字路線を抱えている。千日前線、長堀鶴見緑地線、ニュートラムがこれに該当し、経営状態が悪い。
参照:【大阪メトロ】赤字なのは4路線もある!? 黒字化は無理か?
とはいえ、建設された理由はそれぞれで異なる。今里筋線が建設された理由として、計画された当時は以下のような目的があった。
- 井高野団地や豊里団地の住民の足
- 今里筋の渋滞緩和
- 大阪市の回りを走る外環状線の確保
特に井高野団地と豊里団地はかつては大きな団地だった。大阪市に位置するニュータウンのような存在ともいえるものだった。
しかし、このエリアには鉄道路線がなく、遠く離れて阪急電鉄の上新庄駅や正雀駅があるくらいだった。
そこに住む人々のために大阪市中心部までの交通機関を付与する目的に加えて、今里筋の渋滞緩和、さらにはJR大阪環状線よりもさらに外側を走る鉄道路線を建設するため、今のような形になった。
また、かつて大阪地下鉄は公企業だったこともあり、利益の向上よりも住民のサービス(公共サービス)を重視する姿勢も強かった。
このようなお役所のような考え方も今里筋線の建設を後押しする要因となったのも否定できない。
なぜ赤字で「いらない」存在に?
今里筋線が計画された当初は現在の2~3倍ほどの利用者数を予定していた。しかし、そうにはならなかった。
理由としては次のような点が挙げられる。
- 井高野団地・豊里団地の高齢化と人口減少
- 今里~湯里6丁目の未着工
- 吹田市内延伸の凍結
今里筋線はまず、今里から湯里6丁目まで線路を建設する予定だった。しかし、実際には今里駅で終点となった。
さらに、上新庄や岸辺駅あたりの吹田市内まで延伸させる計画も存在していたものの、実現することなく凍結されてしまった。
利用者の主力として期待されていた井高野団地・豊里団地の住民についても、この地域の高齢化と人口減少が加わったため、今里筋線ユーザーを確保できなかった。
こうした経緯から、今のように大阪地下鉄今里筋線が大赤字の状態になっていて、周囲からいらないといわれる原因となっている。
吹田市内へ延伸なら黒字化されるかも
今の北側の終着駅である井高野駅から吹田市内へ延伸した場合、利用者が伸びて単独で黒字化するという意見も少なくない。
特に阪急電鉄京都線との交点になる上新庄駅やJR京都線との交点になる岸辺駅まで延伸すれば、これらの路線からの乗り換え客が今里筋線へ流れ込むという見方が大きい。
存在する最長の延伸案だと万博記念公園まで建設するというものもある。こうなれば、千里ニュータウンからの通勤客も取り込めるということで、収益が伸びるとの考えにつながっている。
今の大阪地下鉄(Osaka Metro)は民営化される前は大阪市営地下鉄だったことで、営業範囲がどうしても大阪市内に限定される状態だった。
しかし民営化によって他の市町村まで線路を延ばせるのが簡単になったのは確か。今里筋線の吹田市内への延伸を求める声は少なくとも一定はあるのも事実である。