名古屋市営地下鉄鶴舞線において急行を運転させるという計画は度々登場している。名鉄犬山線と地下鉄内を通しで優等列車として運転するという案だ。しかしながら、実際に導入される目途はまったく立っていない。
1977年の開業以来、鶴舞線では一貫して各駅停車のみとなっている。急行を走らせてほしいという要望は少なくないものの、それが行われた試しはない。
名鉄豊田線や犬山線と相互直通運転を実施していることから、1つの電車が走る距離は長い。犬山線は朝夕だけの乗り入れとなっているが、豊田線とは終日に渡って直通運転を行っている。
上小田井~豊田市間を走る電車が多く、一度に39.6kmを走るため、他の地下鉄よりも長い距離を走る。
しかし、実際のところ急行運転の実現はかなり難しいといわざるを得ない。
待避設備がまったくない
名古屋市営地下鉄鶴舞線も、直通先の名鉄豊田線も待避設備がない。つまり、急行が各駅停車を途中駅で追い越せる場所がないというわけだ。
名鉄犬山線には途中駅に待避設備がある。西春・岩倉・布袋・石仏・江南・扶桑には待避線が整備されている。これらの駅では、前を走る各駅停車を特急や急行などの優等列車が追い抜ける。
鶴舞線と名鉄豊田線には、このような待避線のある駅がまったくない。赤池駅に当駅発着の電車のためのホームが本線とは別に設けられている程度である。
待避設備がないため、急行を走らせても各駅停車が前を走っている限りはそれを追い抜けない。運転間隔が短いとすぐに追いついてしまって、所要時間の短縮化ができなくなる。
よって、鶴舞線で急行運転を始めるのは現実的ではない。路線の相対距離が長いとはいえ、速達化は無理といえるだろう。
名古屋~豊田市間で特急の運転が始まる
ところで、名鉄では名鉄名古屋駅から豊田市間まで特急の運転を新たに設ける予定となっている。
これが実現すれば、名古屋市の中心部から豊田市まで行くルートは、鶴舞線+名鉄豊田線よりも便利で所要時間が短くなる。
リニア中央新幹線が開業する2027年頃を目途に、名古屋本線と三河線を経由して特急を走らせる計画。
名古屋駅からトヨタ自動車の本拠地までの交通手段の利便性を向上させるのが狙うだとされている。
今のところ、名古屋駅から豊田市まで行く場合、名古屋本線で知立駅まで行って、そこから三河線に乗り換える必要がある。
あるいは、東山線で伏見駅まで出て、地下鉄鶴舞線と名鉄豊田線を使うというルートだ。
三河線には特急や急行の運転は現状ではまったく行われていない。完全な田舎のローカル線のような感じになっている。
しかし、リニア中央新幹線の開業と同じ時期に名古屋駅から豊田方面へ向かう優等列車として、急行よりもさらに上位の特急を走らせる。鶴舞線・名鉄豊田線のルートよりも便利になるのは間違いない。
なぜ名鉄三河線なら特急運転ができるのか?
名鉄三河線は単線ということもあって、すべて各駅停車となっている。そのため、所要時間が長いという欠点がある。
これを改善させるために、今後特急を走らせるようだ。将来的には40分ほどの所要時間となる計画とされている。
名鉄豊田線と違って特急を走らせることができるのは、名古屋本線ですでに優等列車の運転が盛んに行われているからだ。三河線は各停のみでしかも単線だが、本数が少ない。
待避線がなくても先頭を走る各停に追いつくことなく通過駅を設定できる。ここが、名古屋市営地下鉄鶴舞線と名鉄豊田線とは違う点といえる。
名鉄豊田線・地下鉄鶴舞線は、待避設備がない地下鉄の区間でも本数が多い。優等列車にはどうしても各停に待避してもらう必要がある。
それが鶴舞線にも豊田線にもない。そのため、三河線のように急行を走らせられないのだ。