小田急電鉄では現在D-ATS-Pという種類の鉄道信号システムを使用している。これは2012年から順次導入したものだが、どうしてATC化はしないのか。車内信号にはしない理由について今回は考えてみる。
小田急では線路の脇に信号機が設置されている。保安設備は「D-ATS-P」というものを導入していて、種類的にはJRなどで多く使われているのはATS(自動列車停止装置)となっている。
小田急はATC化しなかった!
小田急がこれまで使って生きた従来のATSを導入したのは高度成長期の1969年のことである。これは、停止信号を誤通過すると自動的に列車のブレーキが作動して止まる仕組みのものであった。
次の閉塞区間に列車がいると、後続の列車はそこには進入できないようになっていて、追突を防止するシステムなのが従来のATSである。
しかし、制限速度を超えないように自動的にブレーキがかかるような保安装置はなかった。そのため、運転士が制限速度を超えてスピードを出そうとしても簡単に出せていた。
その結果起きたのが2005年のJR福知山線脱線事故である。これ以降、国土交通省は全国の鉄道会社に対して、線路の条件に沿って速度制限が自動的に制御できる保安設備の設置を義務づけるようになった。
制限速度がかかるカーブやポイント通過の際に、それを超えて列車が加速しようとすると自動的にブレーキが制御されるATSやATCを各社が導入したわけであるが、小田急はATSを改良したものを投入することにした。
なぜATSを選んだのか?
国土交通省の省令を遵守するために、特に首都圏の私鉄各社ではATCに切り替えたケースが多い。東急や京王、東武東上線、地下鉄各線ではATCという車内信号を投入した。
しかし、小田急ではこれまでの信号機を線路わきに設置したATSのままにすることを選んだ。そして、投入したのが「D-ATS-P」というわけだ。
なぜATC化しなかったのか。最大の理由は路線の距離(営業キロ数)になると考えられる。ATCは線路上に置く地上子とすべての列車内に信号設備をつけることで作動する。
しかし、小田急の場合は路線距離が長いということもあって車両の総数が多い。すべての列車に車内信号の設備をつけるとなると、コストと時間が膨大にかかることとなる。
新たに地上子を線路上に設置するにしても、営業キロ数が長いため工事には費用がかかる。複々線化事業に積極的に取り組んでいる現状を考えると、ATC化に力を注いでいる余裕がないのも間違いではない。
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