JR西日本が管轄する東海道・山陽本線の新快速では余裕時分が確保されているのか。福知山線脱線事故の間接的な原因となったとみられているダイヤのゆとりのなさは果たしてなくなったのだろうか。
2005年4月25日に起きた尼崎市内での福知山線脱線事故では、速度超過によってカーブを曲がり切れずに脱線したのが直接の理由である。207系の快速電車が70km/h制限がかかる半径300メートルのカーブを100km/h超で進入したことで起こったとされている。
しかし、なぜ運転士がそれほどスピードを飛ばしていたのかというと、余裕時分がなかったが、定時運転ができないと厳しい懲罰が行われるという日勤教育があったため、スピードを出すことで無理やり定時に回復させようとしたのが間接的な原因となった。
新快速の余裕時分は大丈夫?
さて、本題の新快速であるが、こちらは福知山線の最高速度よりも速い130km/hである。設定されているスピードの上限は問題となった福知山線よりもさらに速いというわけだ。
2005年のダイヤ改正までは、新快速もまたダイヤに余裕がない状態であった。所要時間は大阪~京都が27分であった。現在は29分であることを考えるとかなり短縮していたことがわかる。
停車時間もかなり無理のある設定になっていた。京都駅では30秒、高槻駅は15秒、大阪駅は50秒に設定されているダイヤが多く、乗降客数から考えるととてもゆとりがあるとは全く言えない状態だった。
こうした傾向から実際に起きた福知山線の事故の後、新快速のダイヤにも余裕時分が設けられるようになり、高槻駅では60秒の停車時間が設定され、途中で多少の遅れが生じても元通りに戻せるように改善された。
それでもゆとりはない!?
では、新快速の時刻表には運転時分にゆとりがある状態になっているのか。答えは、必ずしもYESとは言えない。
確かに草津駅や高槻駅などの途中駅での60秒停車が加えられたことによって、乗降時間の延長などによる少しの遅れは回復できるようになった。しかし、それ以外の停車駅では依然として20秒停車などが存在する。
ドアの開け閉めと安全確認を素早く行わなければならないという業務を行う車掌への負担は大きいのは確か。従業員にとっては依然として負担が大きいことには変わりはない。
また、最高速度130km/hを実際に出さないと定刻通りには到着できない区間も多数ある。また、曲線通過速度も他の鉄道会社より速い。
例えば、半径500メートルのカーブの通勤型電車の通過速度は100km/hに設定されている。JR東日本や東海では90km/hである。決してスピードダウンしたわけではない。ただ、一部の駅での停車時間を延ばしただけといってもいいかもしれない。