JR西日本の山陽本線の「新快速」の岡山駅乗り入れという延伸計画はやはりゼロの状態なのか。
京阪神地区の追加料金なしで乗れる無料列車としてはかなり速い種別である。山陽本線では神戸~姫路~相生で運転されているものの、相生以西は赤穂線の播州赤穂駅へ乗り入れている。
上郡・岡山方面は普通列車のみとなっている。本数も1~2本程度と大幅に少なく、完全な地方の田舎の鉄道になる。
新快速の岡山駅乗り入れの意見
岡山駅への乗り入れを前提とした相生駅以西の山陽本線への新快速の運転区間の延伸に対する意見は賛否両論がある。
<新快速の延伸に対する意見> | ||
賛否 | 主体 | 理由 |
賛成 | 沿線の自治体 | 大阪・神戸方面との交通網の利便性向上のため
東備・西播地区の交流促進のため |
反対 | JR西日本 | 需要が少なく採算性が取れないため
車両、乗務員に余裕がないため |
賛否が分かれている団体は、線路がある沿線の自治体と運行会社であるJR西日本だが、地域の活性化を狙う地方公共団体と利潤が第一の鉄道事業者では意見がまったく異なる。
参考:あの「新快速」が最高速度130km/hを出す区間はどこ?
乗客の意見
乗客でも新快速の岡山方面への延伸構想には賛否両論がある。
姫路駅以西の山陽本線の沿線に住んでいる人や、岡山~神戸・大阪と行き来することが多い人だとこれに賛成する。青春18きっぷのユーザーも同じはず。
逆に姫路駅以東の沿線に住んでいるは反対だろう。新快速の運転区間が長くなれば、その分混雑が激しくなるからである。
姫路駅や加古川駅では、これまでは新快速でも座席に座れたが、延伸によって座れなくなったという不安が現実になることも予想される。
賛成する沿線自治体
姫路~岡山において「新快速」の運転を要望している地方公共団体は県単位に及ぶ。
兵庫県知事と岡山県知事は2010年には共同でJR山陽本線の姫路~岡山間の列車運行本数の増発と新快速電車の運転に同意してJR西日本に要望書を提出した。
つまり、2つの県ともに岡山駅への新快速の延伸を強く求めていることを示す出来事と判断できる。
市町村単位、さらには町内会単位でも同じような傾向がある。基本的に山陽本線のさらなる西への新快速の延伸に消極的な自治体はない。
ここまでして要望している理由がある。
- 岡山~神戸・大阪との人の行き来の活性化
- 人口増加の促進
- 国道2号線の渋滞緩和
地方公共団体が実現させたいと考えているのは、自分だちの地域と神戸。大阪、岡山市との交通の利便性向上と人口の増加である。
新快速が岡山駅まで乗り入れれば、今よりも鉄道による行き来が便利になる。そうなれば、人々の行き来と人口の増加が見込めるというわけだ。
反対するJR西日本
山陽本線の鉄道事業者であるJR西日本は新快速の岡山駅乗り入れと延伸構想には反対する姿勢を取っている。
こちらはあくまでも民間企業という立場から、第一に考えるのは利潤、つまり企業の利益を上げることである。
したがって、需要に見合った供給を行う一方で、過剰な供給力は避けたいという思惑がある。
JR神戸線区間になる姫路駅以東は確かに乗客が多く、通勤ラッシュで満員電車になるほどの混雑になる。
参照:JR神戸線の区間別の混雑状況を調査! 朝と夕方のラッシュの時間帯
ところが姫路駅を境にして利用者数は大幅に変化する。
新快速を岡山駅まで乗り入れたとしても、以下の問題点が生じる。
- 乗客数が少ないため採算が合わない
- 車両の増備、乗務員の確保
- 山陽新幹線の乗客数減少
姫路駅以西のエリアでは鉄道利用者数が一気に減少する。JR西日本としても単独では採算が合わない区間にもなる。
新快速を延伸させたところで、利益が増えるどころかランキングコストという出費が増えるだけで赤字になってしまう。
車両の増備、乗務員の確保も必要になる。運転区間が長くなれば、その分設備増強も必須になるからだ。
山陽新幹線の利用者数が減少する可能性も否定できない。
岡山県、兵庫県西部と大阪方面とは新幹線による行き来が中心だが、速達性が確保されている新快速ができれば、乗客が新幹線から在来線へとシフトするかもしれない。
新快速は普通列車と同じく乗車券のみで乗れる種別のため、特急料金が入ってくる新幹線よりも収益性が悪い。JR西日本にとっては不都合だろう。