北陸新幹線の最高速度を時速300キロメートルに引き上げるべきだという意見は非常に多い。スピードアップすれば首都圏と金沢や富山を結ぶ時間が短縮されてより人の移動が活発になるという点から、今の時速260キロメートルには不満の声が大きい。
これは、東北新幹線の盛岡以北と北海道新幹線、九州新幹線にも同じことがいえる内容だが、北陸新幹線も含めて「整備新幹線」というものに法律上分類される。
法律上、整備新幹線では最高速度は260km/hと定められている。したがって、運行している鉄道会社であるJR東日本やJR西日本が独断で最高速度を引き上げることは不可能なのが現状。
仮に北陸新幹線の最高時速を引き上げるとなると、設備を改良するだけでなく国会にて法律を改正する必要が出てくる。
北陸新幹線の線路は国が保有
整備新幹線の場合、線路は鉄道建設・運輸施設整備支援機構という国の組織が保有している。列車の運行だけを行っているのが鉄道会社のJRである。
使用している線路の所有者である鉄道・運輸機構に対してJRが開業から30年間は使用料としてお金を支払うこととなっている。あくまでもJRは借りているという立場であるのが、北陸新幹線が分類されている整備新幹線というわけだ。
借りているため、最高速度を引き上げるには鉄道・運輸機構の同意が必要となる。しかし、鉄道・運輸機構がこれにYESと答えるためには国が法律を変えないといけない。
整備新幹線に関する法律は「全国新幹線鉄道整備法」で決められている。これを国会で改正されない限り、鉄道・運輸機構の認可が下りない。
たとえ、北陸新幹線の沿線の自治体である石川県や富山県、長野県が最高速度を300km/hに引き上げることを要請したり、JR東・西日本がそれに応えようとしても、国の方針が変わらない限りは不可能なのが北陸新幹線の速度に関する今の状態といえる。
E7・W7系は275km/hまでしか出せない
ところで、もし北陸新幹線の最高速度を時速300キロメートルまで引き上げるとなると、車両の改良も必要になる。現在運転に就いている車両であるE7系とW7系の設計最高速度は275km/hとなっている。
このままでは300km/hでの運転はできない。もしスピードアップするとなると、電気設備や信号のシステムを改良しなければならなくなる。
E7系とW7系は北陸新幹線と上越新幹線を走ることしか想定されていないため、現行の260km/hを超える速度で運転することは考慮されていない。
東北新幹線や東海道山陽新幹線で走る車両とはまた別に設計開発されている。したがって、直ちに路線最高速度を引き上げることができたとしても、実現は無理な話だ。
車両を改良するためにはそれなりのコストがかかる。270km/hから285km/hに最高速度を引き上げた東海道新幹線のように、需要が膨大であれば設備投資に費用をかけても得られる効果は大きい。北陸新幹線の利用者数は、それと比べるとかなり少ない。
費用対効果を考えると決して良い策とは言い難い。よって、北陸新幹線の最高速度を時速300キロメートルに引き上げるのは現実的は難しいといえる。