北海道新幹線の採算について、なぜ赤字の状態に陥っているのか。今後は札幌延伸の際に黒字転換されるという考えもあるが、採算が取れない現状が続く可能性も否定はできない。その理由とは何か。
今の時点では、北海道新幹線はあくまでも暫定開業とされている。新函館北斗駅から札幌駅にかけての区間はまだ建設中であり、完成するのは2031年頃を予定されている。
暫定的な開業の中では、赤字の状態が続いているのは決して珍しいことではない。東京~函館間を新幹線がつながっているものの、函館という土地自体が、そもそも需要は大きくはない。
函館~本州よりも札幌~本州人の移動の方が圧倒的に多い。北海道新幹線において、まとまった数の利用者が集まるのは札幌駅まで延伸されてからになるのは間違いない。
それでも黒字になるかは微妙
北海道新幹線及び東北新幹線の盛岡~新青森間は「整備新幹線」として建設されている。国策に基づいて作られた路線だが、線路の設備を保有しているのはJR各社ではない。鉄道運輸機構という独立行政法人が保有している。
つまり、実質的には国が線路を保有している形になっていて、JRはただ列車を走らせているだけという感じになっているという意味だ。
最高速度は260km/hまでに制限されている。これを前提に札幌駅まで延伸されたとしても、特に首都圏と札幌の移動に新幹線の需要が出ない可能性が高い。
東京~札幌間の所要時間は5時間以上もかかることとなる。航空機との競合を考えると、圧倒的に不利な状態だ。
今のスピードで新幹線が運転されるとなると、札幌まで完成したとしても、北海道新幹線の採算が取れて赤字が解消される可能性はかなり低い。
4時間以内にならないと赤字
新幹線が航空機よりも優勢になれる基準が、「所要時間が4時間以内」である。出発駅から到着駅まで4時間以内で結べれば、飛行機よりも新幹線の方が利用者の割合は大きくなる。
東京からだと、広島駅までが新幹線の方が有利な立場にあるとされている。東京~広島間の所要時間は最速列車である「のぞみ」で3時間45分程度。博多駅は5時間近くかかるため、航空機の方が優勢となっている。
北海道新幹線においても、東京~札幌間の所要時間が4時間を切れるかどうかが、今度の採算状況を左右する重要な基準となる。
東北新幹線の大宮以北と北海道新幹線の全区間で最高速度は360km/hまで引き上げられれば、東京~札幌間の所要時間は3時間57分になるとされている。将来的には、新幹線の大幅な高速化が期待されているが、あくまでもスピードアップの実施が前提となっている。
今のように260km/hまでしか出せないとなると、航空機が優勢のままとなり、北海道新幹線の黒字化を期待するのは難しい。