北海道新幹線の全線で車内販売が全面的に廃止(終了)された理由とは何か。売上高が低迷していたことが直接的な原因だが、それの背景としては4つの間接的な要因がある。
新青森~新函館北斗間の部分が北海道新幹線に該当するが、はやぶさ号およびはやて号のいずれでも列車内で軽食や飲料品を売るサービスはまったくない。
同じはやぶさ号でも東北新幹線内の区間では車内販売が継続されている。JR北海道が管轄する新青森駅以北に限って2019年3月のダイヤ改正で終了した。
直接的要因=売上高が低迷したから
北海道新幹線において車内販売が完全に廃止となった直接的な原因は売上高の低迷である。
以下のグラフはJR北海道の車内販売があった時代の年間売上高の実績を示したものである。
車内販売の売上高の最高値を記録したのは2001年。これをピークにそれ以降は年々減少していることが読み取れる。
北海道新幹線のみならず、在来線特急だった「スーパー白鳥」の時代からすでに車内販売そのものを利用する人が少なかった。
北海道新幹線にて車内販売が完全に終了した理由の直接的な理由であることは確実視できる。
東北新幹線内のはやぶさ号でも売上低迷
そもそも新幹線の列車内の車内販売の終了の事例は北海道新幹線内だけに限った話ではない。
首都圏エリアという列車の利用実績自体は好調な東北新幹線でもやまびこ号・なすの号も同じ。これだけでなく、全国の他の路線でも同様のことが起きている。
東京~新青森間のはやぶさ号でさえ全廃には至っていないとはいえ、規模は大幅に縮小している。
取扱品の中で駅弁や土産類は廃止され、ホットコーヒーさえも消滅した。残っているのはペットボトルの飲み物、スナックなどのお菓子類にとどまる。
つまり、北海道新幹線内で廃止、東北新幹線内で縮小という形になった。
これらは例外なくすべて売上高が低迷していることが直接的な原因である。
そして、中でも北海道新幹線や九州新幹線において低迷が顕著だったことによって、車内販売が100%完全に廃止となった。
赤字を出すくらいなら終了した方が企業(JR北海道やJR東日本傘下の日本エンタープライズ)にとっては合理的な選択肢となる。
間接的な理由
主な理由 | 詳細な内容 |
乗車時間が短い | スーパー白鳥の時代よりも乗車時間が短くなったことで、青森~函館間で乗車中に飲食する人が減った。 |
利用者数が少ない区間 | 北海道新幹線の新青森~新函館北斗間の利用者数は少ない。車内販売の需要元がそもそも数的に少ない。 |
>人件費高騰と人手不足 | 国内の人手不足とそれに伴う人件費の高騰もあるが、JR北海道エリアはそもそもの利用者数が少ない面が大きい。 |
>売店の充実化 | 駅ナカ事業が充実していることも背景の1つだが、北海道新幹線はそれよりも利用者数の減少の方が重大。 |
北海道新幹線のすべての便で車内販売が完全に終了した理由として、上記の4つに当たる。
乗車時間・乗車率・労働市場・駅ナカ事業が重要なキーワードであるが、北海道新幹線の場合は特に最初の2つが特に重大な要因だろう。
乗車時間が短い
車内販売を利用する人は長時間乗車する人が中心である。短い距離しか乗らない人は割高な車内販売では食べ物や飲み物を購入しない割合が大きい。
北海道新幹線のはやぶさ号でも、首都圏と北海道を行き来する乗客なら乗車時間が長くなる。しかし、東京~新函館北斗間が4時間超ということもあって、新幹線よりも航空機のシェアの方が大きい。乗客数が少ないという意味だ。
北海道新幹線の乗客の乗車区間を見ると、次の区間が目立つ。
- 新青森~新函館北斗:約60分
もともと利用者数が少ない中で、まとまった利用者が多い区間といえば新青森~新函館北斗間になる。ところが、所要時間は1時間ほどである。車内販売が好調になる条件を考えると短い。
これくらいだと車内販売を利用せずに事前にコンビニなどで食べ物や飲み物を購入して新幹線に乗車する人がほとんど。ますます採算が合わない条件ができている。
車内販売は乗車中に何か「食べたい」またが「飲みたい」と思った乗客が利用するサービスという性質から、乗車時間が短ければ売上は伸びない。
東北新幹線内を通しで乗車する場合でも、もし車内販売を利用するとなれば東北新幹線内の区間で済ませるのが必然的。
さらに、駅構内の売店が充実していることもこれを後押しする。上り列車は、新青森駅までは出発直後のため、事前購入した飲食物が残っていることがほとんど。
下り列車は逆に下車直前のため、わざわざ割高な車内販売で購入する必要性が薄い。
利用者数が少ない
乗客数という母数が少ないことは車内販売の売上高が小さくなる原因になる。
同じはやぶさ号でも、東京~仙台・盛岡間では乗車率が1日を通して高い。満席になりやすい区間でもある。全車指定席だが通路側でも座席が埋まっている状態が目立つ。
一方の盛岡駅以北の区間ではガラガラの状態。同じはやぶさ号だが、車内は空席が目立つ。そして、北海道新幹線の区間に当たる新青森駅以北はさらに空いている。
地理的に不利な立場にあることが何となくわかるだろう。乗車率が低いとそれだけ車内販売の採算性は悪化する。
新青森駅以北の利用者数が少ないことが車内販売の廃止の間接的な理由であることに関して否定できる根拠はない。
暫定開業の状態で、将来的に札幌延伸するものの、北海道新幹線の利用者数がどこまで伸びるかどうかは不透明。
車内販売を札幌延伸が開業するまで継続させたところで、それ以降に黒字化するとは考えにくい。
なお、JR北海道では新幹線の他に在来線特急でもすべての列車で車内販売が終了した。スーパー北斗号でも実施されてきたが、2019年3月のダイヤ改正で廃止になった。
JR北海道からはすべての列車から車内販売そのものが消滅したことになるが、いずれも利用者数が少ないことによる。
まとめ
<北海道新幹線で車内販売が終了に至った理由>
売上高が低迷して赤字状態であったため
乗車時間が短い:新青森-新函館北斗の利用が多い(長距離利用者が少ない)
利用者数が少ない:首都圏に近いエリアのみの利用が中心
同じように車内販売が終了(廃止)と秋田新幹線の盛岡駅~秋田駅の区間も、背景にある理由は基本的にこれらと同じ。
北海道新幹線のみならず、JR北海道の在来線特急でも唯一車内販売が残っていた「スーパー北斗」でも同時に廃止となった。
各路線ごとの車内販売の事情
路線 | 内容 |
東海道新幹線 | 車内販売がやって来る時間 のぞみ/ひかりでも廃止の可能性とは、こだま廃止について |
山陽新幹線 | 車内販売がやって来る時間 |
九州新幹線 | 全列車廃止とその理由 |
北海道新幹線 | 全列車廃止とその理由 |
東北・秋田・山形新幹線 | 種別・区間ごとの車内販売の有無 やまびこ/なすので廃止の理由 <山形新幹線>区間ごとの有無と来る時間 <秋田新幹線>区間ごとの車内販売の有無 |
上越新幹線 | 種別・区間ごとの車内販売の有無 |
北陸新幹線 | 種別・区間ごとの車内販売の有無 |