新幹線で車内販売が終了(廃止)した事例とその理由

車内販売の終了

新幹線において車内販売が終了(廃止)した事例について。その理由についても調査。

かつてはほとんどの新幹線および在来線特急で客室を巡回しながら飲食物を販売するサービスがあったものの、最近は撤退するケースが増えている。

売上高の低迷から販売員の人手不足といった理由が背景として存在している。


車内販売が終了した事例

<車内販売が終了した新幹線と種別>
新幹線 種別 廃止時期
東海道新幹線 こだま 2012年
山陽新幹線 こだま 2012年
九州新幹線 全列車 2019年
北海道新幹線 全列車 2019年
東北新幹線 やまびこ
なすの
2019年
2015年
上越新幹線 たにがわ 2015年
北陸新幹線 あさま 2015年

全種別で車内販売を実施している新幹線はない。すべての路線で一部列車に絞って実施している。

2012年のこだま廃止から

車内販売の終了したこだま号

新幹線において車内販売が終了する傾向が始まったのは2012年の東海道・山陽新幹線のこだま号での措置からである。

2012年3月のダイヤ改正ですべてのこだま号で車内販売が取りやめになり、続いて2015年に東北・上越・北陸新幹線の一部種別、さらに2019年に九州新幹線と北海道新幹線のすべての列車で廃止された。

残っているのは各路線でも速達型の種別にとどまっている。

これと同時に車内販売の取扱商品の縮小も行われている。駅弁や土産類は販売しないのが主流になっていて、ホットコーヒーも廃止になるところも出ている。

車内販売の終了の理由

車内販売そのものが一部の新幹線で終了となった直接的な理由こそは売上高の低迷であるのは確か。

それに関連する間接的な理由もあり、以下がその内容になる。

売上高の低迷の理由

  • 乗車時間が短い
  • 販売員の人手不足
  • 駅ナカの売店の充実化

乗車時間が短い近距離輸送向けの列車では、そもそも長時間乗車し続けないため、割高な料金に設定されている車内販売を利用する需要が小さい。

当然ながら、長時間乗車を強いられる列車と比べて車内販売の売上は落ちる。

販売員の人手不足もさらに経営に響いている。非正規雇用労働者がパーサーを勤めているものの、その人材確保が厳しい状態が立たされている。

そして、駅構内の売店などを指す「駅ナカ」の事業が充実化していて、駅の中にあるコンビニなど事前に飲食物を購入できる環境が整っている。

以前と比べても拡充され、車内販売を利用しなくても乗車前なら購入できる機会が豊富に用意されている。

駅ナカの売店の売上高は年々上昇しているが、それに対して下落しているのが車内販売という構図ができている。

今も車内販売が残る列車の特徴

車内販売が残る新幹線

逆に新幹線で車内販売が今も残っている列車の特徴といえば、上記の逆のパターンになる。

車内販売が継続される列車の特徴

  • 乗車時間が長い
  • 利用者数(乗客の人数)が多い

具体的な例を挙げると、東海道・山陽新幹線ののぞみ号やひかり号、九州新幹線へ直通するみずほ号・さくら号の新大阪~博多間、東北新幹線のはやぶさ号、上越新幹線のとき号、北陸新幹線のかがやき号・はくたか号になる。

速達性が高い種別かつ大都市間を結ぶ路線では、乗車時間が長くて利用者数が多い。

潜在的な需要がそもそも大きいことから、車内販売を行えばまとまった売上へとつながる。

人手不足はどこでも避けられず、これによって販売する商品の種類を縮小しているケースは上記の特徴に当てはまる路線にも該当するものの、完全廃止とまでは至っていない。

需要が期待できる列車では限りある供給力の範囲内で車内販売を行っているというわけだ。

事例:九州新幹線の車内販売終了の理由は4つ

主な理由 詳細な内容
利用者数が少ない 九州新幹線は全国の他の新幹線と比べると利用者数が少ない。みずほ・さくらも山陽新幹線内より乗客数が少ないため採算がより取りにくい。
人件費高騰と人手不足 国内の人手不足とそれに伴う人件費の高騰により、コストが高くついて経営を圧迫しかねない状況になっているため。
乗車時間が短い 九州新幹線は乗車時間がそもそも短い。博多~鹿児島中央でも片道2時間以内のため、車内販売を利用する人がその分少ない。
売店の充実化 わざわざ割高な車内販売でなく、駅構内のコンビニなどの売店を利用する人が多い。駅ナカ事業が充実していることも背景の1つ。

九州新幹線の博多~鹿児島中央の全線にて車内販売が完全に終了した理由は、上記の4つに当たる。

車内販売を継続するのが困難になった背景として、乗客数・乗車時間・労働市場・駅ナカ事業が重要なキーワードである。

参照:新幹線の路線・種別ごとの車内販売の有無!

利用者数が少ない

乗客数という母数が少ないことは車内販売の売上高が小さくなる原因になる。

九州新幹線は全国の他の新幹線と比べても利用者数は少ない。大都市を数多くアクセスする東海道新幹線をはじめ、山陽新幹線や東北新幹線と比べると地理的に不利な立場にあることが何となくわかるだろう。

九州新幹線は博多駅のある福岡市、熊本市が人口規模が大きい政令指定都市だが、それ以外はそう大きい都市ではない。

東京や大阪のようなメガ都市は1つもない。常に乗客が多い状態が起きにくい構造になっていることは無視できない理由である。

新大阪駅まで乗り入れるみずほ号・さくら号も、利用者数が多くて満席に近い状態になりやすいのは山陽新幹線内(新大阪~博多)である。九州新幹線(博多~鹿児島中央)は相対的に乗車率が低いことがほとんど。

新幹線の数ある路線中では、もともと採算性が良いとは言えない車内販売の採算が悪くなるのは必然的だろう。

人件費高騰と人手不足

車内販売を行うには「パーサー」と呼ばれる販売員が必要になる。その労働力を確保するのも今では難しいといわざるを得ない。

正確に言うと、人件費の相場が高騰しているため、採算が合うような水準内での賃金を提示するとなかなか人手を確保できないことが背景にある。

給料水準を引き上げれば募集をかけることで応募者も増えるものの、そうすると今度は車内販売で人件費としての支出が大きく膨れ上がってしまって採算が取れない状況に陥る。

東海道新幹線や山陽新幹線では継続できるほどのレベルだとしても、売上が良くない九州新幹線ではそれより前には困難になる。

安い賃金で十分な労働力を確保できない環境になっているため、売上高が小さい九州新幹線で車内販売を継続する合理的な要素がないことが、車内販売が全廃された理由に当たるといえる。

乗車時間が短い

九州新幹線の博多~鹿児島中央の乗車時間は短い。車内販売は長距離かつ乗車時間が長い列車ほど購入客が多くなるが、九州新幹線はそれとは対照的な状態にある。

主な駅間の乗車時間は以下になる。

  • 博多~熊本:35分(みずほ)、42分(さくら)
  • 博多~鹿児島中央:1時間18分(みずほ)、1時間35分(さくら)

利用者が多い区間といえば博多~熊本になる。ところが、所要時間は30,40分と短い。これくらいだと車内販売を利用せずに事前にコンビニなどで食べ物や飲み物を購入して新幹線に乗車する人がほとんど。採算が取れるとはいいがたい。

博多~鹿児島中央でも乗車時間は1時間半程度に収まる。同じくわざわざ車内販売を利用するまでの長時間の乗車とは言えない。

しかも熊本~鹿児島中央間は乗車率が終日少ない区間でもある。車内販売を利用する人の割合がある程度あったと仮定しても、利益率が良いとは考えられない。

みずほ号とさくら号の一部列車は山陽新幹線へ乗り入れるものの、九州新幹線+山陽新幹線をまたいで利用する乗客数はそう多くはない。

大半は博多駅で入れ替わっているため、乗車時間が短いのが現状。車内販売の潜在的な乗客が少ないことには変わりない。

駅ナカ売店の充実化

そして、近年無視できないのが駅ナカ事業の充実化だろう。駅構内にはコンビニのようなちょっとした飲食物を販売する売店がある。

以前なら売店といえば駅弁やお土産がメインのところが主流だったが、最近はコンビニ代わりとなるような商品を並べるところがメインに変わった。

値段もふつうのコンビニとほとんど同じ価格帯のため、利用する人が多い。長距離利用者は新幹線に乗る前にこれらの売店で列車内で飲食する物を買う人が目立つ。

駅ホーム上でも最低でも自動販売機は設置されているところがほとんど。

わざわざ値段が高い車内販売で買わないでも、事前に購入できる機会が用意されている。

選べる種類も豊富かつコンビニ並みの値段で食べ物や飲み物が購入できる駅ナカの売店がかつてより充実化したことが、車内販売を利用する人が減った理由に上げられる。

九州新幹線に限った話ではないが、JR九州でもこれによる影響は決して小さいとは言えない。

車内販売が復活する可能性は?

車内販売

上記で挙げた九州新幹線で車内販売が復活する可能性は残されているのだろうか。

結論を言うと、今のところはほとんどゼロに等しい。

列車内で飲食する人は全く変わらず、その数が少なくなっているわけではない。

それを購入する場所が変わっているのが大きな昔と今で違うポイントである。

駅構内にKioskやコンビニなどの売店が充実していることで事前(乗車前)に食べ物・飲み物を購入する手段がある以上、価格的に不利な車内販売をあえて利用するメリットがない。

飲み物も駅ホーム上に自動販売機があるため、買う場所に困る人はほとんどいない。車内販売が消滅したことで困っている人がいるかというと、その数はかなり少ないはず。

もともと需要が少ない新幹線でにて車内販売が復活できる可能性は残っていないとしか言えない状態。


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