JR八高線は全線が単線となっている。複線の区間はまったくない。そして、電車の本数も首都圏の中ではかなり少なく、日中だと30分に1本しか走っていないが、その理由とは何か。
同じ八高線でも、運転系統は高麗川駅を境に南北で異なる。南の八王子側は電化されていて、単線だがダイヤはどちらかというと都市型のものとなっている。
北側の高崎側は非電化区間となっている。気動車が使われていて、首都圏の路線というよりも完全な地方のローカル路線となっている。本数は1時間に1本しかない。時間帯によっては次の電車まで2時間近く空いていることもある。
なぜそもそも単線なのか?
八高線が建設されたのは戦前のことである。当時は沿線は山林や農地だけが広がっていた。住宅地は一切なく、旅客向けのサービスはほとんど考えられていなかった。
軍事的な要因から、八高線は作られたという経緯がある。当時は、東海道線や中央線から北関東あるいは東北方面へ鉄道で結ぶには東京都心を通過するしかなかった。
しかし、もし戦災で東京都心の線路が使えなくなってしまったら、北関東や東北と関東以西の地域との物流が遮断されることとなる。それを防ぐためのバイパス路線として八高線の建設を決めた。
ただ、普段の輸送量は少なかったため、複線ではなく単線での建設を行った。将来的な複線化も考慮されていなかったため、土地の線路1本分の用地しかない。
沿線に住宅地が登場したのは戦後の高度経済成長期に入ってからのことである。多摩ニュータウンの延長として、八高線の周辺も開発された。ただ、複線化を積極的に進めるまでには至らなかった。
複線化や本数の増発はしない?
八高線の複線化を求めている人は一定数はいる。沿線の自治体もできれば単線のままではなく、複線化を望んでいる。
複線となれば本数も今より多くなる。そうなると沿線の人口が増え、自治体の財政状況が向上するのは間違いない。
しかし、現実的には複線化も本数の増発も難しい。八高線の利用者は決して多いとは言えない。列車も電化区間はすべて4両編成で運転されている。
4両編成というのは、首都圏の中ではかなり短い。単線であっても毎時4本までは余裕だが、現在は2本となっているが、これが需要のなさを表しているともいえる。
沿線の人口が増加して八高線の乗客の総数が増えれば、複線化の話も表に出てくる。しかし、そこまで人口は増えていない。今後は逆に減少することが予想されているほど。
よって、八高線では複線となる日は来ないだろう。列車の本数の増加も当面は行われないと考えられる。