小学生でもわかる「山陽新幹線の歴史」~日本で2番目にできたことで

山陽新幹線

山陽新幹線は1972年3月15日に新大阪~岡山間、1975年3月10日に岡山~博多間が開業。日本で2番目にできた新幹線路線。

どのような計画から、どんな経緯で建設され、その後どのようにしてスピードアップしたのか、今回は小学生でもわかるように解説する。


年表

出来事
1965年 新大阪~岡山間が「山陽本線の線増工事」として運輸大臣から認可。
1697年 新大阪~岡山間の建設工事が着工。
1969年 岡山~博多間がルート・駅ともに認可。
1970年 岡山~博多間の建設工事が着工。
1972年 新大阪~岡山間開業。
1975年 岡山~博多間開業(全線開業)。最高速度は210km/h。新大阪~博多間の所要時間は最速3時間44分(三原~博多間にて160km/h制限)。
1980年 三原~博多間の徐行運転解除、新大阪~博多間が最速3時間28分に。
1985年 新大阪~博多間が最速3時間16分に。
1987年 最高速度220km/hへ引き上げ。新大阪~博多間が最速2時間59分に。
1989年 最高速度230km/hへ引き上げ(グランドひかり)。新大阪~博多間が最速2時間49分に。
1993年 300系、のぞみ号運転開始。最高速度270km/hへ引き上げ。新大阪~博多間が最速2時間32分に。
1997年 500系運転開始。最高速度300km/hへ引き上げ。新大阪~博多間が最速2時間17分に。
2003年 新神戸駅に全列車停車。新大阪~博多間が最速2時間21分に延びる。
2007年 N700系運転開始。新大阪~博多間が最速2時間23分に(福知山線脱線事故による「ゆとりダイヤ実施により)。
2011年 九州新幹線へ直通開始。「みずほ」「さくら」運転開始。新大阪~博多間の所要時間が最速2時間22分に。
2017年 新大阪~博多間の所要時間が最速2時間21分に。

上記は山陽新幹線(新大阪~博多間)の歴史を示した年表。

東京~新大阪間については「東海道新幹線」のコーナーで解説。

小学3年生でもわかるようにすると

東海道新幹線が開業した頃、人々は言いました。

昔の人:東海道新幹線いいなあ! 新大阪から先も新幹線ほしいなあ!

東京オリンピックが開催された1964年の時点では、新幹線は東京新大阪間しかオープンしていなく、他の計画も特にありませんでした。とはいえ、新大阪から先、岡山、広島方面へ向かう山陽本線は大量に電車が走っていたため、これ以上電車を増やせないくらいいっぱいいっぱいでした。そこで、国鉄はこう言いました。

国鉄:山陽本線の線路をもう1本増やすぞ!

この時点では、まだ山陽本線の線路を増やせさえすれば、新幹線でも在来線でも構わないというスタンスでした。しかし、東海道新幹線の速さに人々は驚き、次第に新幹線にこだわるようになりました。

そして、政府もこれに賛成し、すぐに新幹線を作ることを決めました。そして、政府はこう言いました。

とりあえず、在来線がパンクしている新大阪岡山間を先に作れ!

こうして、山陽新幹線はまずは新大阪から岡山まで先に作られることになりました。その後も、それほど経たない内に、残りの岡山から博多までの区間も作ることが認められました。

ところで、山陽新幹線では新しい考えも取り入れられました。国鉄はこう言いました。

国鉄:今回はもうちょっと飛ばせるように作ろうぜ!

まず、山陽新幹線では東海道新幹線よりもさらにスピードを飛ばすことが計画されました。具体的には、最高速度は時速250キロを出そうと、工事をスタートする時点で考えていました。

より飛ばせるように、カーブはかなり緩やかにするようにと言われました。

東海道新幹線は最初の新幹線だったということもあって、カーブは結構きつめに作られてしまいましたが、山陽新幹線ではこれが反省点として活かされました。

そして、1972年には新大阪岡山間がオープンしました。この時の最高速度は時速210キロ、車両も0系が使われていたため、最高速度を250キロにすることはできませんでした。1975年には福岡県の博多駅までオープンして、山陽新幹線は完成しました。

ここまでが、山陽新幹線の計画から開業までの流れ。この先は、開業後の流れ。

在来線特急と比較すると確かにスピードアップはしましたが、この頃はまだ、最高速度は東海道新幹線と同じでした。

その後、100系という新幹線2代目が登場しますが、これも最高速度は時速220キロで、それほど速くはありませんでした。

そもそも、山陽新幹線はあくまでも山陽本線のお手伝いみたいな扱いだったこともあって、国鉄もスピードアップにはあまりやる気がなかったようです。そんな感じで、1980年代の終わりまで大きな変化はありませんでした。

山陽新幹線で本格的なスピードアップがされたのは、国鉄が普通の会社、つまりJRとなった後のことでした。山陽新幹線はJR西日本に割り振られました。普通の会社となったJR西日本は言いました。

JR西日本:お客さん増やすために、なんとかスピードアップさせるぞ!

東海道新幹線を動かすこととなったJR東海と同じように、JR西日本もスピードアップにはかなりやる気でした。1993年には300系という車両を取り入れ、「のぞみ」という列車名を作りました

新しい300系を使用した「のぞみ号」の最高速度は時速270キロにスピードアップしました。

東海道新幹線の方は、これである程度満足しましたが、山陽新幹線の方がまだまだこれでは終わりませんでした。

JR西日本は言いました。

JR西日本:真っ直ぐな線路を持つ俺たちが、くねくねした東海道新幹線とスピードが同じって、おかしくねえ?

山陽新幹線を運営しているJR西日本は、キツイカーブがほとんどない点に着目し、さらなるスピードアップを狙っていました。そして、新しい車両を取り入れました。それが、500系です。500系を使った時の「のぞみ号」の最高速度は時速300キロとなり、東海道新幹線の区間ではそれまでと同じく270キロが最高でしたが、山陽新幹線の区間では300キロで走るようになりました。

次に登場した700系は、値段が高すぎるとかの問題もあって、最高速度は285キロまでしか出せませんでした。一旦、山陽新幹線は300キロ運転をあきらめるかと思われました。

しかし、その次のN700系は300キロ運転ができる車両となりました。

N700系は、カーブを曲がるときに車体を傾ける機能が付いているため、これまでの車両よりも高速でカーブを通過できるようになりました。山陽新幹線だけでなく、くねくねしている東海道新幹線でもスピードアップができました。

ところで、新しい車両にすべて切り替わった東海道新幹線とは反対に、山陽新幹線では新しいN700シリーズだけでなく、500系や700系といった古い車両がまだ走っています。JR西日本はこう言っています。

JR西日本:カネがなくて、新しい車両なかなか買えねーんだよ!

山陽新幹線を運営するJR西日本はあまり儲かっていません。東海道新幹線だけでなく、山陽新幹線も是非乗ってくださいね。

計画から誕生まで

1964年10月1日の東海道新幹線開業

東海道新幹線が開業した1964年、まだ山陽新幹線の本格的な計画が進んでいなかった。

とはいえ、戦前は東京~下関間で東海道本線と山陽本線の線増目的でもう1本新線を建設することが計画があったことで、東海道新幹線の延長線上に何か建設する構想は確かに存在していた。当時、日本は朝鮮半島や満洲国を統治していたことから、内地と朝鮮半島の行き来が活発になりつつあった。

東海道本線と同じように、1950年代後半になると、山陽本線でも輸送力がひっ迫。京阪神地区のみならず、岡山以東では全体的にパンク状態だった。

そんな背景もあったことで、東海道新幹線と同じように、山陽新幹線も「山陽本線の線増扱い」だった。最初は単純に、既存の山陽本線を複々線化のみで完結しようとする動きもあった。

しかし、東海道新幹線による高速鉄道の成功もあって、新幹線方式で建設する動きが盛んになり、結果的に今のように直線的なフル規格の新幹線として整備された。

開業後

0系

1972年、新大阪~岡山間がまずは開業。当時、最高速度は210km/h。

1975年、岡山~博多間が開業し、山陽新幹線は全線開業を果たした。この時の新大阪~博多間の所要時間は最速3時間44分。三原~博多間にて、路盤が不安定だったことによる160km/h制限があったことが影響。

1980年、路盤不安定による徐行運転が解除され、新大阪~博多間の所要時間は3時間10分となった。

100系

1987年に100系登場に伴って最高速度が220km/hへ引き上げられた。新大阪~博多間の所要時間は2時間59分となった。

1993年には300系によるのぞみ号が運転開始。最高速度が270km/hに引き上げられた。新大阪~博多間の所要時間は最速2時間32分となった。

500系

1997年には500系によるのぞみ号が運転開始。最高速度が300km/hに引き上げられ、所要時間は最速2時間17分になった。

当時は新神戸駅を通過していたことで、歴代の中で最速となった。(新神戸駅への全列車停車は2003年から)

700系

1999年、700系が登場。700系は500系とは違い、最高速度は285km/hに抑制。コストの面から300km/h運転対応は見送られた。

N700系

2007年、N700系が登場。車体傾斜装置を搭載したことで曲線通過速度が向上、300km/h運転へ対応。

2011年、九州新幹線の全線開業に伴い直通運転を開始。山陽新幹線へ「みずほ」「さくら」が乗り入れ開始。

2017年には、保安装置(信号システム)をアナログATCからデジタルATCへ切り替え。これにより、所要時間が「のぞみ」「みずほ」「さくら」で約1分ほど短縮。新大阪~博多間が最速2時間22分に短縮。