上越新幹線に「全車指定席」がない理由! 自由席廃止の可能性は?

全車指定席ではない上越新幹線

上越新幹線はとき号、たにがわ号ともに自由席の設定があって「全車指定席」ではない。北陸新幹線のかがやき号のように全席指定になったり、東北新幹線のように自由席が廃止になっていなく、その可能性も今のところは低い。

なぜ上越新幹線はすべての座席を指定席にする計画から外されているのか。JR東日本が管轄する他の新幹線の路線とは違った特徴があることが背景にある。

結論を言うと、運転区間が短い上に速達型でも停車駅が多いことが大きな理由と考察する。


上越新幹線で全車指定席にはならない理由

<自由席に積極的な背景>
主な理由 詳細な内容
運転距離が短い 上越新幹線の東京~新潟間の営業キロ数は334km。東京→仙台よりも短い。長距離ではないため指定席の需要が小さい。
乗客数が少ない 指定席・自由席ともに満席になる確率が低い。1日を通して空いている。座れないという問題があまり生じない。
短距離利用者が多い 上越新幹線の利用者が多い区間は東京~高崎間。新潟県内と行き来する人よりも首都圏だけの利用(短距離利用)の方が主力になりやすい。
整備新幹線ではない 指定席特急券は割高のため鉄道事業者に入る収入は大きく、開業後まだ年月が浅くて建設債務が残る路線では有効だが、上越新幹線は開業時期が早く採算性が良い。

上越新幹線にて自由席の設定がある理由は、これら4点ではないか。

JR東日本の管轄下もしくはその影響下にある新幹線では速達型の種別を中心に普通車の座席がすべて指定席となる「全車指定席」を採用している一方、上越新幹線はその例外的な存在になっている。

自由席が廃止されるのではないかという予想をする人もよく見かける。とはいえ、本当に自由席が消滅する可能性は薄い。

参照:新幹線の路線ごとの「全車指定席」を導入の有無! それらの背景も

運転距離が短い

上越新幹線の営業キロ数は東京~新潟間で334km。東京新幹線の東京~仙台間は352kmということで、これよりも短い距離であるのがわかる。

最速列車の種別はとき号。東京~越後湯沢・新潟間を走り、所要時間は2時間前後のダイヤは多い。最速は1時間47分。

全線を通しで乗った場合だと、他の新幹線だと2時間30分以上はかかるところが多い。

全車指定席の北陸新幹線のかがやき号は首都圏発着の列車も東京~金沢で2時間28分が最速で、これに近い所要時間。東北新幹線のはやぶさ号も東京~新青森で2時間59分。こちらも同じく長時間乗り続ける列車である。

乗り続ける区間が長いほど自由席よりも指定席の方の需要が大きくなりやすい。近距離移動では自由席のシェアが大きい。

そんな背景が全車指定席にはならない1つ目の理由である。

乗客が少ない

指定席の最大のメリットは着席保障がある点。100%確実に座れることがセールスポイントであり、満席だと座れないという事態が起こりやすい自由席との違いである。

全車指定席を導入しているところでは、その種別に自由席を設けると混雑することが予想される。

また、速達型と停車型の種別で混雑差があって、なるべく停車型の種別にも利用客を分散させる狙うもある。

上越新幹線の場合はとき号・たにがわ号の混雑差はそれほどない。とき号も自由席が満席になることは少ない。

北陸新幹線のはくたか号、東北新幹線のやまびこ号よりも満席になる頻度が少なく、行楽シーズンの一部の期間やダイヤの乱れが生じた時などのイレギュラーな時がほとんど。

乗客数が少ない上越新幹線のため自由席を廃止してまですべての座席を指定席にするメリットが薄い点が理由の1つに当たる。

>>【路線別】新幹線の自由席に座れない確率を時間帯・曜日ごとに調査

短距離利用者が多い

上越新幹線の東京~新潟でも利用客が多い区間といえば東京~高崎である。冬の行楽シーズンは東京~越後湯沢にまでなるが、新潟駅まで乗り続ける人は多くはない。

駅別の乗降客数を見ても、新潟駅よりも高崎駅の方が多い。

首都圏の速達列車という性質が強く、短距離利用者が主力なのが上越新幹線ならではの特徴でもある。

首都圏の新幹線通勤の圏内にもなっていて、上越新幹線はとき号、たにがわ号ともに新幹線通勤者が乗る種別の対象にもなっている。

北陸新幹線は東京~長野・富山・金沢、東北新幹線は東京~仙台・盛岡の利用も多い。

短距離になると乗車時間が少ないため座席指定をする手間や割高なコストを敬遠する人が多くなる。

指定席の需要が少ない理由でもあり、全車指定席を導入しない背景の1つにもなるだろう。

整備新幹線ではない

上越新幹線が開業したのは1982年ということで早い時期に完成した。上野~大宮の東北新幹線区間が開業したのは1985年、東京~上野は1991年と後になってからのため、当時はまだ大宮~新潟間の開業だったものの、他の路線と比べると早い。

日本がまだ安定成長期だった時代にはできていたため、建設債務はすでに償還済。借金返済の負担がないため経営状況は安定している。

一方の全車指定席の北陸新幹線・東北新幹線(盛岡以北)は最近建設された「整備新幹線」に当たる。開業してからの歴史が浅いため、建設債務の返済が重く残っている。

指定席特急券なら料金が割高に設定されているため、1人当たりから得られる収入の金額が大きい。経営状況を少しでも良くするための手段でもある。

上越新幹線はそのような借金返済のコストを不要とするため、全車指定席にしてまで実質的な値上げを行う必要が薄い。

今後、全車指定席になる可能性は?

全車指定席の是非

上越新幹線で今後全車指定席が導入される計画は今のところはなく、その可能性も小さい。

E7系の導入、最高速度を275km/hへ引き上げられることが検討されているものの、全席指定席にする根拠ではない。

JR東日本の在来線特急でも全車指定席へ変更して自由席を廃止する列車が相次いでいるものの、この理由はまた別になる。

在来線特急の場合は検札(切符拝見)の手間がある。車内で特急券を購入する人も多かったため、乗務員の負担が大きいという問題があった。

全車指定席にすることでそのような問題点が解消された。

新幹線の場合は改札の段階で特急券が必要になる。実際、車内検札はJR東日本の新幹線では行われていない。

上越新幹線で在来線特急のように全車指定席にする理由が見当たらない。ゆえに、今後も自由席は維持されると考える。

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