京都市営地下鉄の運賃は公営地下鉄の中では日本一高い料金体系になっている。初乗りは210円で他と大差ないものの、距離に対しては全体的に高くなっている。
東京や大阪よりも高いことはもちろんのこと、神戸や名古屋、横浜よりも大きい。このため、市バスは観光客でいつも混雑しているイメージが強いが、地下鉄の方はガラガラのことが多い。
このように料金体系が高い理由とは何か。そして、値下げの余地はまったくないのか。
京都の地下鉄だけ高い理由
京都市営地下鉄の運賃が今のように他の都市と比べて割高になっている理由として考えられるのは、以下の3つになる。
- 烏丸線、東西線ともに建設費が高くついた
- 開業してからの歴史が浅い
- 利用者数が少ない
他の都市にも当てはまる点は存在するものの、京都市だけに該当する点もある。
特に京都は「古都」である点が建設費が割高になった最大の理由ともいえる。埋蔵文化財が建設の際にいくつも発見されたため、工事が長引いたのが要因である。
京都市営地下鉄の経常利益は2009年度からは黒字に転換された。しかし、旅客収入があっても建設借金の返済により利益自体はそう大きくはなく、負債額は現時点でも数千億円も残っている。
したがって、経営状況は決して良いとは言えない。運賃を値下げできる余裕もないと判断できる。
建設費が高かった
京都市営地下鉄の建設費が高くなった理由は次の通り。
- 埋蔵文化財が多数見つかり、工期はたびたび延長
- 今の物価で建設
古都ということで埋蔵文化財がいくつも見つかった。この点で他の都市とは違う。埋蔵文化財が発見された場合には工事を止めなければならないと法律(文化財保護法)で決められている。
年数が長くなればなるほど建設コストは高くなる。しかも、新たに埋蔵文化財がないかどうか慎重に見極めながら工事することが求められるため、工期が延びやすい。
さらに、開業したのもそれほど過去の話ではなく、今の物価に近い状態になってから建設された。物価そのものが安かった高度経済成長期とは違って大幅に莫大なコストがかかった。
烏丸線が全線開通したのは1997年、東西線は2008年のことである。特に東西線は1994年には完成すると当初の計画ではされていたが、埋蔵文化財の問題で14年遅れで開業した。
高い建設費に加えて、開業が遅れたのも経営状況が安定化せずに負債額を多く抱えている理由になっている。
利用者が少ない
高い運賃が災いとなって京都市営地下鉄の利用者数は当初の予定よりも少ない。
東西線に至っては路線単独では赤字となっている。京阪京津線と相互直通運転を実施していたり、線路を延伸したものの、損失が多い路線となっている。
京都市営地下鉄全体では黒字の烏丸線と合わせることでようやく黒字をギリギリ達成している。
運賃の問題もあり、京都市内の公共交通機関としては市バスが有力な手段となっている。バス路線は市内では非常に充実していて、観光客も住民もバスを好む傾向がある。
こうした事情から、京都市営地下鉄の利用者数が伸び悩んでいて、経営が安定しない原因にもなっている。