愛知環状鉄道が黒字の理由とは!? 赤字から脱却できた背景

愛知環状鉄道の黒字の理由

愛知環状鉄道が黒字化できた理由を分析してみた。国鉄時代の不採算路線(岡多線)がJR化の際に第三セクター化されたところでは珍しい事例である。

赤字の経営状態から脱却できた背景には、沿線にトヨタ自動車の拠点があって従業員の通勤手段となっている点、名古屋市の通勤圏内という利便性が高い点がある。



黒字化できた主な理由

<愛環の赤字脱却できた要因>
理由 詳細な内容
トヨタ自動車の従業員の鉄道利用 トヨタ自動車では渋滞緩和策の一環として鉄道による通勤を奨励
名古屋市のベッドタウン化 名古屋都市圏の範囲内のため沿線の人口が増加
名古屋市内直結線との接続 名古屋市内へ直結する名鉄豊田線・瀬戸線、リニモ、JR線との接続
JR線の本数増加 国鉄時代は東海道本線、中央本線ともに毎時1、2本だったが、今では6本以上
※いずれも地方ローカル線とは根本的に事情が違う

愛知環状鉄道は名古屋市内中心部の駅には直接乗り入れていないものの、地域では名古屋都市圏に位置する地理的な要因が大きい。

しかもそれだけではなく、もう1つ重要なポイントがある。トヨタ自動車本拠地をカバーするという特徴だ。

愛知環状鉄道と同じく国鉄の民営化の際にJRから経営分離された赤字の地方のローカル線とは事情がまったく異なる。恵まれた社会的な背景があるのは間違いない。

参照:愛知環状鉄道の混雑状況を時間帯・区間ごとに調査

トヨタ自動車の従業員の利用者数増加

愛知環状鉄道を支えるトヨタ自動車の鉄道通勤客

三河豊田駅を中心とするトヨタ自動車の従業員が利用することで、定期券による収入がまとまって入ってくる。

以前はトヨタ自動車ではあまり鉄道による通勤は盛んではなかったものの、周辺の道路の交通渋滞が深刻な地域問題となっていたため、それを解消する目的で公共交通機関による通勤が奨励されるようになった。

この結果、愛知環状鉄道線を使う従業員の数が増え、愛知環状鉄道の会社全体の収益性が向上した。

朝夕のラッシュの時間になれば、トヨタ自動車の従業員の鉄道利用者で愛知環状鉄道線の列車は大都市部並みの満員電車になる。

今も単線区間が多いが、複線化も求められるほど。

>>愛知環状鉄道の複線化の計画の全容! 今でも白紙か?

トヨタ自動車の鉄道利用の従業員が増えたことで、新豊田~三河豊田が複線化された理由もこれに当たる。

乗車率が高くなると乗客にとってはマイナスの印象が出るかもしれないが、鉄道会社としてはあるべき姿で黒字経営ならではの光景ともいえる。



名古屋のベッドタウン化

愛知環状鉄道線と接続する名鉄豊田線

豊田市駅へ乗り入れる名鉄豊田線・地下鉄鶴舞線

愛知環状鉄道の沿線の地域は、国鉄時代だった1980年代の時点ではまだ開発が進んでいなかった。

名古屋市中心部のベッドタウン化も進んでいなく、田園風景が広がっていた。岡多線が赤字から脱却できなかったのも無理がない。

しかし、近年は郊外の広域化によって沿線に住宅街が広がった。

愛知環状鉄道線はいくつもの名古屋市内へのアクセス網と接続している。JR東海道本線・中央本線、名鉄名古屋本線・豊田線・瀬戸線、リニモがこれに該当する。

1、2回乗り換えれば名古屋駅などへ行ける。通勤がある程度便利という点は、愛知環状鉄道の沿線の人口が増える要因の1つともなった。

JR線の本数増加

JR線の利便性向上

もう1つ考慮するべき点はJR線の利便性向上である。国鉄時代よりも普通列車や快速列車の本数が大幅に増えた背景もある。

国鉄時代は名古屋近郊では普通列車が1時間当たり1~2本程度走っているにとどまっていた。ほとんどは特急や貨物列車ばかりで、地域輸送はほとんど無視されていたからだ。

しかし、JR化される時期になると地域輸送にも力を入れ始め、運行本数が増加された。

愛知環状鉄道と接続するJR線の利便性が向上したことも、名古屋市中心部へのアクセスが便利になった要因とも判断できる。

黒字化できた理由の1つとしては決して無視はできない。

愛・地球博が転換期

愛知環状鉄道が決定的に経営状態が良好になったのは2005年に開催された愛知万博「愛・地球博」である。

この年は愛・地球博の長久手会場へのアクセス網として輸送人員は前例にないほど過去最大値を記録した。

これと同時に沿線が開発されていくきっかけともなった。長久手市側とは異なり、豊田市八草町側はまだまだ山間部となっているものの、以前よりは確かに開発が進んだ。

2000年代に入ってからは愛知環状鉄道の収益性は年々良くなっていたものの、2005年の愛・地球博によって沿線の土地が注目されたきっかけとなったのは確かだろう。

今後も黒字維持の可能性大

赤字脱却を達成した愛知環状鉄道

愛知環状鉄道線の沿線では人口減少が懸念されつつある。これは全国的な社会問題であり、名古屋都市圏も例外ではない。

ただし、トヨタ自動車の本拠地が沿線にある以上、従業員の通勤手段としての性質が消え去る可能性はほぼゼロに等しい。

沿線の住宅街が再び田園地帯へ戻る可能性もかなり低い。つまり、愛知環状鉄道を使う人が大幅に減る見込みは薄いといえる。

かつての国鉄岡多線のように赤字路線へ転落するリスクは、革命的な出来事がない限りは有り得ない。

第三セクター化された路線の黒字化が達成できな数少ない事例の模範解答という立場は続く。

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