東急池上線では急行や快速といった通過駅の設定がある優等列車がまったく運転されていない。平日も土日祝日も1日を通してすべて各駅停車のみとなっている。
池上線は五反田駅から蒲田駅までの10.9kmを走る路線である。3両編成で運転されているため、首都圏の通勤路線というよりは地方のローカル線のような雰囲気が漂う。
それでもJR山手線と接続する五反田駅まで乗り入れている。都心直結型の路線というのは間違いない。
同じ東急電鉄でも東横線や田園都市線、大井町線、目黒線では急行などの優等列車がある。各駅停車に加えて遠距離利用者向けのサービスが充実している。
近距離利用者向けの路線
東急池上線とそれ以外の路線との違いは、池上線は完全に近距離利用者向けの路線というところである。都心から遠く離れた郊外へのアクセス手段というわけではない。
東横線、田園都市線は、都心と郊外を結ぶ路線という性質が非常に強い。速達列車の需要が極めて大きい路線である。
目黒線や大井町線は決して距離自体は長くはない。しかし、他の路線への乗り入れを行っているため、遠距離利用者はその一部を利用する。
目黒線は、東京メトロ南北線・埼玉高速鉄道と都営三田線と相互直通運転を行っている。また、武蔵小杉駅や日吉駅から東横線の横浜方面と乗り換える人もかなり多い。
大井町線も二子玉川駅から田園都市線の溝の口駅や長津田駅まで乗り入れる電車が多い。また、田園都市線の沿線から大井町線経由で目黒線に乗り換える人も多い。
同じく長距離を乗る人が少なくない路線である。一方、東急池上線から他の路線へ乗り換えるという人は少数派である。
五反田駅では山手線へ乗り換える人はいるが、蒲田側ではかなり少ない。途中の旗の台駅で大井町線へ乗り換える人も多くはない。
池上線の沿線の人が利用者の主流層である。そのため、近距離利用者がほとんどとなっている。
相互直通運転を行っていない
さらに、池上線は地下鉄などとの相互直通運転を行っていない。そのため、都心から電車1本で乗ってくるというケースがない。
しかも、周辺には大体路線も多い。近くには東急目黒線や都営浅草線、JR京浜東北線が走っている。
いずれも池上線と比べると駅数が少ないため、所要時間が早い。池上線はこまめに停車駅があるため、地域密着型の路線ともいえる。
やや長い距離を移動するのであれば、駅数が少ない代替手段を使えばそれで済む。わざわざ速達列車を走らせる必要がないのが現状ではないか。
そうした事情から、東急池上線では急行が運転されていない。