JR京葉線において15両編成化してほしいという声は少なくない。増結すれば、列車1本当たりの輸送力が大幅に向上し、朝や夕方の通勤ラッシュの混雑緩和へとつながる。
東京~蘇我間を走る京葉線の通勤電車は、今のところすべて10両のみとなっている。並行する総武線快速では15両で走っていることを考えると、車両数が少ないと判断できる。
なぜ京葉線では10両のままで15両化は実現されていないのか。もっと増結したくてもできない理由はあるのか。
ホームは10両分だけしかない
京葉線の駅のホームは、基本的に10両編成までにしか対応していない。15両編成にするためにさらに5両増結してしまうと、ホームに電車が入りきらない。
高架区間に当たる新木場~蘇我間では、ホームの延伸工事は比較的簡単に行えるようスペースが確保されている。
新たに用地買収を行う必要がなく、工事のための予算さえあればすぐにでも事業化できる内容ではある。
しかし、地下区間は完全に場所がない。後から開業した部分であり、将来的な15両化はまったく考慮されていないものと思われる。
東京駅をはじめ、八丁堀・越中島・潮見の各駅はスペースを確認しても10両分しかなく、簡単に+5両分のホームを増設できるとは思えない。
京葉線で15両編成での運転が行われていない理由の1つはここにある。
あくまでも総武線のバイパス路線
京葉線はもともと貨物線として計画されて建設された路線である。高度経済成長期の頃に計画されたものの、次第にモータリゼーションの普及によって貨物列車が衰退していった。
一方で首都圏では各鉄道路線の混雑が社会的な問題として取り上げられるようになり、総武線のバイパスとなるように京葉線を旅客化するという計画に変わった。
東京と千葉方面を結ぶ路線の主体は総武線で、京葉線はその代替手段という位置づけになったという歴史がある。
バイパスということで、輸送力はそれほど求められなかった。10両編成でも問題ないと認識され、駅の設備も10両分で作られた。
首都圏のJR東日本の都心から郊外へ放射状に延びる各路線の多くで15両編成での運転が行われているが、京葉線ではそうではない理由は、このような性質の違いにあると考えられる。
10両で十分になる?
将来的には、首都圏では広い地域で少子高齢化が進むと予想されている。京葉線の沿線もその例外ではない。
千葉方面の郊外が開発されてからすでに数十年経過しているところが多い。こうした地域では、住民の高齢化で都心へ通勤する人は減る見通しだ。
通勤客が減ると、それによって電車に乗る人も減る。朝ラッシュでも、今よりは乗客が少なくなるのは言うまでもない。
そうなると、わざわざ多額のコストをかけてまで京葉線の電車を15両に増結させることは求められない。
今の10両編成でも需要を賄いきれる。乗車率も次第に下がって、いずれは満員電車が消えるかもしれない。