西武新宿線の複々線化の計画は今はもうほとんど存在しない。だが、かつては西武新宿駅~上石神井駅間において、地下に新たに急行線を敷設するという案があった。
池袋線では、練馬~石神井公園間にて複々線化が積極的に進められ、2012年に高架化と並行して工事が完了した。2000年代初頭から進められてきたという歴史がある。
一方の新宿線の場合は、複々線化の工事はまったく行われて来なかった。開業以来ずっと単なる複線のままの状態となっている。
なぜ、都心直結の路線という点では揺るぎないにも関わらず、西武新宿線ではまったく複々線化が事業化されてこなかったのか。
そして、現在も白紙の状態となっている理由とは何か。
線路を敷設する土地がなかった
西武新宿線において、以前から複々線化できなかった理由の1つとして、用地確保が困難だったことが挙げられる。
沿線はすでに開発が進んでいて、線路の脇は住宅が立ち並んでいる。これは、高度経済成長期の頃から変わらない。
高度経済成長期以来、西武新宿線の沿線の人口は増加の一途をたどってきた。朝ラッシュの通勤の時間帯は満員電車となり、年々その混雑度はひどくなっていた。
しかし、土地がなかったことで、複々線化の計画を事業化するには至らなかった。そして、ここが池袋線と大きく違う部分である。
ただし、バブル期の頃は西武新宿線においても複々線化を実現させるムードがあったのは間違いない。
西武新宿駅~上石神井駅の間に地下に急行線を建設し、地上の既存の線路を緩行線専用とする計画だった。
しかし、これも結局は廃案となった。バブル崩壊後、線路の建設費を賄える見込みが消えたこと、さらに地下線は莫大なランニングコストがかかるということで、費用対効果も良くないことが判明したため、計画は白紙となった。
少子高齢化と人口減少
西武新宿線沿線では、他の路線と比べると人口減少が進んでいる。乗客数のピークは1991年で、ちょうどバブル期の真中である。
バブルが崩壊した後は、沿線の人口が減少し続けている。少子高齢化に伴って、都心部へ電車で通勤通学する人が減っていることも、その理由に挙げられる。
乗客数が減っているということで、複々線化の必要性が乏しくなっているのも事実。
現在の連続立体交差事業を始める際に、複々線化を積極的に提案してこなかった理由も、将来的に見て輸送力を増強する必要性が薄かったからである。
こうした背景から、西武新宿線では今後も永久的に複線のままの状態が続くと考えられる。
東京都内の区間にて連続立体交差事業が完了しても、複々線化の工事が行われる見込みはほとんどゼロだろう。