都営大江戸線は他の地下鉄とは違う特徴がいくつもある。駅のホームが地下奥深いところに位置する。電車の車両のサイズもひと回り小さい。
一度乗ったことがある人から感じたことがあるのではないか。そして、その感覚は間違っていない。
- 地上から深いところを通る
- 車両のサイズが小さい
- 駆動がリニアモーター式
他の路線にはなく、大江戸線のイメージとしても定着している。
これらには都営大江戸線ならではの特殊な事情がある。一般的な地下鉄には作れなかった理由があるというわけだ。
後から建設されたから深い
地下鉄の路線は、建設された時期が早くて歴史が古いほど地上に近い浅い部分に線路が通っている。戦前に開業した東京メトロ銀座線が浅いところを走るのはこのためだ。
同じ都営地下鉄でも1960年代にできた浅草線は早い時期に作られたため、地面に近い浅いところを走っている。
逆に複数の路線網ができた後に建設された地下鉄は地面の深いところに作られている。そして、東京都心部で遅い時期にできた路線こそが都営大江戸線である。
大江戸線が開業した1991年にはすでに今あるほとんどの路線が完成していた。
地上に近いエリアはすでに既存の路線があるため、線路のためのトンネルが掘れない。しかも大江戸線は他の路線と交差する箇所がかなり多い。
23区内を1周するという性質上、やむを得ず地下深いところにトンネルを掘るしかなかった。
駅ホームが深いところに存在する背景には、こうした地下鉄の建設に関する事情がある。
車両のサイズが小さいのはなぜ?
車両のサイズが小さいのは、トンネルの幅が狭く作られたためである。
地下の深いところにトンネルを掘るには膨大なコストがかかるのは避けられない。そして、深度が大きくなればなるほど費用が膨らむ。
加えて、トンネルの幅が広ければ広いほど建設コストが高くなる。深度とトンネルの幅の数値はいずれも工費と比例する。
可能な限り少ない予算で地下鉄を建設するために大江戸線のトンネルは従来よりも小さい低規格で作られた。
計画当初では、大江戸線も都営新宿線と同じ規格で作られるはずだった。20m車10両編成で運転されることが想定されていた。
しかし、バブル期などと重なったため、それを断念して代わりに16.5m車8両編成で運転されることが決まった。これが今のような形である。
駆動方式がリニアモーター方式となった理由もまったく同じである。トンネル断面を小さくしたことで、車両を小型化できるリニアモーターによる駆動方法が採用された。