都営大江戸線は他社の路線と相互直通運転を実施していない。なぜ乗り入れがないのか、その理由について考察してみた。
東京メトロ丸ノ内線・銀座線と同じ形となっている。線内を走る電車は該当する路線以外の線路には入らない。
都庁前から六本木・勝どき・門前仲町・上野御徒町などを経て再び都庁前へ戻ってくる感情部分と都庁前~光が丘の放射部の区間が大江戸線に当たるが、それ以外には電車は乗り入れない。
大江戸線の相互直通運転なしの3つの理由
理由 | 詳細 |
大深度地下 | 地下40メートルに線路があるため、地上へ戻るのが困難 |
環状運転 | 都庁前駅以東の環状部があるため、山手線と同様に他路線乗り入れしたときのダイヤ調整が困難
練馬・光が丘方面も相互直通運転する路線がそもそもない |
建設規格 | 建設規格が低い、リニア駆動方式(JR・私鉄と異なる規格) |
都営大江戸線にてほかの路線との相互直通運転を行わない理由は、これらの3つになる。
いずれも地下鉄とJR・私鉄で相互乗り入れを行っている例とは性質が全く異なる。特殊な鉄道路線となっているのが大江戸線ならではの特徴ともいえる。
混雑率は首都圏の地下鉄として低い方に入るのも大江戸線だが、郊外の私鉄からの直通運転がないのが要因の1つともなっている。
>>都営大江戸線の朝ラッシュの混雑状況を時間帯・区間ごとに調査!
大深度地下に線路がある
大江戸線の線路がある地下の深度は東京の地下鉄の中では最も深い。「大深度地下」と呼ばれる地上から40メートルのところに線路のトンネルが掘られてある。
仮に他の路線と相互直通運転を行うとなっても、地下40メートルから地上に向けてトンネルを掘るのがそう簡単なことではない。
大きな需要を見込めるのであれば話が変わるものの、単に利便性を向上させるために地上へ向けたトンネルを掘るのは難しいだろう。
環状運転を実施
都営大江戸線は都庁前駅から東側の都心部では環状になっている。JR山手線と同じようになっている。
運転ダイヤそのものは都庁前駅にて折り返しとなるため、完全にグルグル回るわけではないが、それでも地図上では環状になっている。
混雑区間もそれにより都心部でも変化する。通常の地下鉄のように一方向だけが時間帯によって激しく混雑する上り・下りの概念がない。
「端っこ」というものがないため、他路線と乗り入れするメリットが薄い。大江戸線単独で問題ないのが現状である。
都庁前~光が丘は放射状になっていて、ここは通常の郊外へ延びる路線と同じ形になっている。環状にはなっていない。
ただし、光が丘駅からほかの路線へ直通運転を行おうとしても、そもそも他社の路線が存在しない。
途中駅では西武新宿線や西武池袋線と交差するものの、いずれも大きな需要を見込めるほど乗り入れを実施するレベルとは言い難い。
建設規格が小さい
大江戸線は大深度地下を走ることで、建設コストを下げるためにトンネルの断面サイズや車両の規格が小さい。
>>都営大江戸線の特殊事情ーなぜ深くてサイズが小さいのか!?
使われている車両は16.5m(先頭車は16.75m)の規格となっている。通常のJR・私鉄は20mとなっているため、大江戸線の車両は小さいことがわかる。
さらに、大江戸線は鉄輪式リニアモーター駆動方式を採用している。車輪を直接回すのが通常の鉄道だが、リニアモーターで駆動して直接車輪を回さないのが大江戸線である。
これは、トンネルのサイズが小さいことで通常のモーターによる車輪駆動では機器が大きすぎて搭載できないからである。
一般的な鉄道車両とは違うため、大江戸線と相互直通運転をしたいというJR・私鉄も存在しない。他社との乗り入れ構想も存在しない大きな理由である。
丸ノ内線や銀座線との違い
都営大江戸線は大深度地下を走り、それにより車両の規格が一般形とは違うのが他の路線との相互直通運転ができないのが大きい。
一方の東京メトロ丸ノ内線・銀座線の場合もまた車両の規格が異なる。しかし、その背景は大江戸線とはまた別である。
最大の違いは集電方式にある。丸ノ内線・銀座線ともに架線は線路の脇にある「第三軌条方式」となっている。
通常の鉄道では線路の真上に電線がある「架空電車線方式」である。これを採用する一般的な鉄道路線との乗り入れができない。
丸ノ内線・銀座線ともに地下鉄としての開業が早いのが背景にある。建設された当時はまだ地下鉄と他社との乗り入れの構想が薄かった。
>>銀座線・丸ノ内線で「相互乗り入れ」がない5つの理由とは!?
大江戸線の場合は建設コストの関係から、今のように特殊な規格になった。背景は丸ノ内線と銀座線とは異なるのがわかる。