発車間際の電車への駆け込み乗車はダメだと駅員・車掌は注意するが、その理由とは何か。事故の防止よりも電車の遅延の原因になるからなのかもしれない。
特に都市部の鉄道においては、「駆け込み乗車」をやめてほしいという故のアナウンスや啓発ポスターが多くみられる。放送については、一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。
「駆け込み乗車はおやめください!」もしくは「無理なご乗車はおやめください」というセリフは、東京や名古屋、大阪、福岡などの都市部で電車に乗ったことがある人なら聞いたことがあるだろう。
なぜ禁止なのか?
すぐに発車するとはいえ、もし間に合うのであれば駅構内の階段またはエスカレーターを走ってでも電車に飛び乗りたい心理は人間の本能といえるかもしれない。もし可能であれば駅のホームでなんか待ちたくない。たとえそれが2,3分であったとしても避けたい。
しかし、鉄道を運行する会社からすると迷惑な行為といえる。乗務員がドアを閉めている最中に急に人が飛び乗ってくるとヒヤッとするだろう。ドアに挟まれれば乗客のけがにつながる可能性も否定できない。
また、電車が動き始めてしまうと接触事故が起きたり、電車とホームの隙間に転落してしまう事故の可能性も大きくなる。これが、鉄道会社が乗客へ注意する駆け込み乗車がダメな理由である。
ただ、もう1つ重大な理由がある。それは遅延の防止だ。日本の電車は秒単位で運転されている。JR・私鉄を問わず10秒・15秒単位で運行されている。駅での停車時間も秒ごとにきちんと決められている。
駆け込み乗車があると、数秒という時間であるが列車が遅れる原因となる。乗客からするとたった数秒の話でしかない。時刻表にも分単位でしか掲載されていないため、秒単位の事情なんか知ったことではないだろう。
とはいえ、鉄道会社からすれば数秒でも遅延が発生してしまうと、その後の列車運行に支障が出てしまうことが多い。乗換駅でも接続や後続列車に遅延の影響を与えかねないことになる。
こうした事情もあり、鉄道会社の駅員や車掌は乗客に対して駆け込み乗車をやめてほしいという内容の放送を行っているのである。そして、それは乗客側には少し理解できない背景があるのもまた本当の話といえるだろう。
法律上は禁止ではない?
ところで、駆け込み乗車は法律上はどうなっているのか。何か罰則はあるのだろうか。結論をいうと、法律には何も書いていない。したがって、列車に飛び乗ったからといって罰則があるわけではない。
また、約款にも特に「駆け込み乗車」に関する内容はほとんど書いていない。JR旅客営業規則(JR東海『運送約款』)にも「駆け込み乗車」についての条文は書かれていない。あくまでも鉄道会社のホームページや駅構内の啓発ポスターに書かれているだけである。
「ルール」というよりも「マナー」の問題といえる。ただし、近年はマナーが悪い消費者が増えていることが社会的に問題となっている。そんな中、1人1人の心がけが大切になる。電車への駆け込み乗車をなくすことについても乗客の品にかかっているといえる。