武蔵野線の本数が毎時6本と少ない理由について考察してみた。朝ラッシュの時間帯は10~12本まで増発されるものの、それでも首都圏の路線としては少ない。夕方の帰宅ラッシュは昼間とほとんど変わらない。
日中の昼間であれば、利用者も決して多くはないため、1時間当たり6本でも問題がないレベルだが、通勤ラッシュとなる平日の朝夕で少ないことで完全に輸送力不足の状態である。
なぜこのように武蔵線の本数は少ないのか。背景にある事情があるようだ。
本数が少ない武蔵野線
時間帯 | 1時間当たりの本数 | 他路線(南武線を例に) |
6-9時 | 7~11本 | 8~21本 |
9-16時 | 6本 | 8本 |
16-20 | 7~9本 | 8~11本 |
20時- | 4~6本 | 6~8本 |
武蔵野線の武蔵浦和駅の時刻表を見ると、本数は上の表のとおりになる。府中本町行、西船橋方面ともに1時間当たりだと6本が標準ダイヤである。
朝ラッシュの場合、ほかの路線だと12本以上となることが多い。首都圏は人口が極めて多く、どこの路線も高い混雑率となっているため、少なくとも5分間隔で電車が走っている。
>>武蔵野線の朝ラッシュの混雑状況を時間帯・区間ごとに調査!
特に7時台と8時台は走らせられるだけ走らせる。似たような路線状況となっている南武線を例にしても、ピーク時は3、4分で運転されている。
朝ラッシュでさえ少ない
しかし武蔵野線の場合は、1日の中で一番乗客が殺到する7時台、8時台であっても本数は多くても1時間当たり10本程度に収まる。
運転間隔が5分以上空いてしまうこともある。首都圏ではかなり少ない本数と判断できる目安になる。
乗客が少ないため供給を抑えていると思いたいところだが、実際には超満員電車となっている。特に西船橋駅付近はかなりの空間に余裕がないレベルになる。
ドア付近は完全に周囲の人達と体が接する。スマホの操作をするのはもはや困難だろう。駅を発車する際も無理矢理中にいる人を押し込んで乗る必要が出てくる。
需要を考えるともっと本数を増やさなければならないのは誰もが感じているはず。完全に輸送力不足と判断できる。
増発できない理由
旅客用の普通列車だけを見れば、武蔵野線でもっと増発できる余地はある。しかし、線路容量の面では限界に近い状態となっている。
武蔵野線は乗客が乗る電車だけでなく貨物列車も走っている。つまり、同じ線路を旅客列車と貨物列車が共有していることを意味する。
朝の時間帯は特に東北方面からの貨物列車が武蔵野線区間を走る時間帯と重なる。したがって、貨物列車の本数もそれなりに多くなる。
旅客の普通電車を今よりも本数を増やそうとしても、もうこれ以上は増やすのが難しいのが武蔵野線の事情なのだ。
もともと武蔵野線は貨物専用鉄道路線として建設された背景もある。後に旅客化されたものの、他にバイパス路線がないため旅客列車を優先できない。
武蔵野線自体がバイパス路線
武蔵野線が建設された背景は、都心部の山手貨物線の容量が圧迫していたためである。山手貨物線は埼京線が旅客列車として使用していたため、貨物列車が走れる余裕がなくなっていた。
そこで武蔵野線を建設して都心部を迂回するルートが作られた。これにより、朝夕でも貨物列車が首都圏エリアを走れるようになった。
しかし、武蔵野線が旅客化された現在では、今度も同じような問題が発生している。旅客列車と貨物列車の共用が難しくなっている。
それでも、武蔵野線のバイパス路線となるルートを新しく作るには莫大なコストがかかり、正直なところ現実的ではない。