武蔵野線(府中本町~西船橋)において遅延が多く発生している原因について調査。
気になる主要な理由には3つ挙げられる。相互直通運転による他の線区の影響・局地的な混雑の激しさ・駅構内の列車緊急停止ボタンの作動と安全確認などによる支障が特に挙げられる。
とはいえ、首都圏の中で遅延が発生する頻度はふつうクラス。何らかの形で電車のダイヤが乱れることはよくあるが、毎日必ず起こるほどの多さではない。
全線が高架または地下を走る。踏切が1か所もないため、人身事故は少ない。
<最新の遅延情報(JR東日本公式ホームページ)>
目次
武蔵野線の遅延の主な理由
遅延の原因 | 頻度 | 詳細な内容 |
---|---|---|
混雑 | ★★★★ | 混雑による乗降時間の延長で電車が連鎖的に遅れる |
強風 | ★★ | 以前は主要原因だったが防風柵の設置で改善 |
安全確認 | ★★★★ | 駅の列車緊急停止ボタンの作動など |
営業キロ数 | ★★★★ | 府中本町~東京の営業キロ数は95.9km |
他線区の影響 | ★★★★★ | 京葉線との直通運転による影響 |
武蔵野線の府中本町~西船橋間で遅延や運転見合わせの原因となるのは、上の3つが当てはまる。
局地的な混雑や安全確認によるロスタイム、「他線区の影響」がさらに遅延の主な原因に当たる。
大半の電車は西船橋駅からは京葉線の東京方面または海浜幕張方面へ乗り入れる。
運転系統がもし武蔵野線単独で構成されていたら、他の路線の影響はそれほど受けない。しかし、直通運転をほとんどの電車で行っている以上、外部の影響を受けるのは避けられない。
また、府中本町~東京間の営業キロ数の長さもある。これもまた遅延しやすい傾向の理由と考えられる。
踏切は1か所もないため、これによる人身事故、線路内立ち入り、緊急停止非常ボタン作動は少ない。
車両故障・設備故障なども設備的なトラブルもあり得る。だが、こちらは影響度としてはそれほど大きくはない。
路線名 | 平日20日当たりの遅延日数 | ランク |
---|---|---|
中央総武緩行線 | 19.1日 | 非常に多い |
中央線快速 | 18.3日 | 非常に多い |
武蔵野線 | 11.8日 | ふつう |
南武線 | 7.7日 | かなり少ない |
埼京線 | 17.9日 | 非常に多い |
京浜東北線 | 17.4日 | 非常に多い |
京葉線 | 10.4日 | ふつう |
常磐緩行線 | 16.8日 | 非常に多い |
参考:【ランク別】首都圏の遅延が多い/少ない鉄道路線を一覧化
武蔵野線と関連のある路線については上記で解説。
他線区の影響
西船橋駅から武蔵野線の電車は東京方面または海浜幕張方面へ向かう。いずれも京葉線へ直通する。
東京駅から市川塩浜駅までは武蔵野線の電車も京葉線の線路を走る。
路線名こそは1つの存在のように見えるが、実際の運転系統は複数の線区にまたがっている。
京葉線内でのトラブルが発生すると、同時に武蔵野線にも遅れが生じることはよくある。
こんな感じで武蔵野線も遅れる
例えば、京葉線内にて信号故障が発生して運転見合わせになると、武蔵野線の電車も一時的にストップするか、駅に電車がやって来ない状況になる。
西船橋駅での折り返し運転という措置が講じられることがあるが、それでもダイヤの乱れは発生してしまう。
一部列車では少なくとも10分程度の遅れは発生してしまう。
混雑や駅構内の列車緊急停止ボタンの作動による場合も同じ。
貨物列車の遅れ
武蔵野線では貨物列車の運転も高頻度で実施されている。
東京都心部を通過しない貨物線のバイパス路線として建設された経緯もあって、武蔵野線の線路は旅客列車だけでなく貨物列車が多く運転されている。
貨物列車は東北本線(宇都宮線)、常磐線、中央本線、武蔵野南線(貨物専用)などの路線と直通運転を行っている。
ただ、貨物列車で遅延が発生した場合のダイヤでは基本的に旅客列車が優先される。
普通電車の妨げとならない範囲にて、それを合間縫って走る形を取っている。
よって、貨物列車の遅れが普通列車に影響することはあまりない。
混雑による乗降時間の延長
混雑が原因での遅延の詳細
- 武蔵野線:東浦和→南浦和が最混雑区間
- 混雑率およそ170%前後
武蔵野線の朝ラッシュは首都圏でもやや上位クラス。
朝ラッシュに当たる7~9時の場合で遅れが生じる原因は混雑によることが多い。停車駅での乗降時間が長くなって遅れがその理由。
武蔵野線内のみならず、京葉線内でも同じことが起きやすい。
参考:武蔵野線の朝ラッシュの混雑状況を時間帯・区間ごとに調査!
舞浜駅・海浜幕張駅に起因する混雑
こちらは特に土日祝に多い事例。特定の駅での乗降時間の延長による遅延もある。
舞浜駅は東京ディズニーリゾートの最寄り駅。「ディズニーラッシュ」という現象が起きる駅でもある。
基本的に1日を通して乗降客数が多い駅である。
ここでの乗降時間が通常よりも長くなることがよくある。
海浜幕張駅は幕張メッセやZOZOマリンスタジアムの最寄り駅。これらの施設でイベントがあると、海浜幕張駅は大混雑になる。
ここでの停車時間が伸びることで、結果的に5分以上の遅れになる場合が見られる。
いずれも混雑が原因で電車の遅れにつながる。
満員電車の状態のため、途中駅での停車時間も長くなりやすい。結果的に5分以上の遅れが生じやすい。
2駅ともに京葉線内の駅だが、直通運転を行う武蔵野線にも影響しやすい。
強風(改善済)
乗り入れ先の京葉線は東京湾岸の沿岸部を走り、しかも高架を走るため、風の影響を非常に受けやすい。
武蔵野線も北朝霞~西浦和間の荒川を渡る橋、三郷~南流山の江戸川の橋を中心に強風の影響を受けやすい。
ただ、「風に弱い」という事象は過去の話になっている。実際のところは強風による運転見合わせの頻度は高くはない。
仮に強風で電車がストップした場合、埼京線や宇都宮線・高崎線、常磐線、総武線などの他のJR線も運転見合わせになる。
京葉線内と同様に、2006年からは始まった高さ2メートルの防風柵の設置による効果によって改善。風の強いポイントに重点的に設置されたことで、運転を中止する基準を従来の風速25メートルから30メートルに緩和。
これによって、強風のため運転見合わせになる回数は以前よりは減少し、いくらか改善済といえる。
営業キロ数
武蔵野線と京葉線の区間を含めた府中本町~東京間の営業キロ数は95.9km。
全区間各駅停車しかない路線としては首都圏でも最長。一度に走る距離が長いことも遅延が生じやすい原因。
路線距離が長い場合、途中で何かのトラブルが発生する確率が上昇。
架線支障、ポイント動作不良、信号トラブルなどの設備の故障が距離が短い路線よりはリスクが高い。車両故障のリスクもまた高まる。
武蔵野線の本来の区間である府中本町~西船橋間は営業キロ数は71.8kmと決して長くはない。これだけでも結構長い。
さらに東京駅まで乗り入れることで、1列車が走る距離が100km近くということで、近郊路線並みの道のり。
遅延が生じやすくなる理由の1つと否定することはできない距離。
緊急停止ボタンによる安全確認
駅構内の列車緊急停止ボタン(非常ボタン)の作動も遅延の原因になる。
何も事故等が起こらなくても安全確認を行うなどで5分以上の遅れが生じるが、これは武蔵野線などの一部に限った話ではない。
ただ、武蔵野線の場合は駅数が多いこともあって駅構内でのトラブルが発生しやすい。
南浦和駅、新松戸駅などでよくある。京葉線を含めると、舞浜駅、新木場駅も同様に多い。
武蔵野線では高速で通過する列車がないため、飛び込み自殺は少ないものの、こうした緊急停止による遅れが目立つ。
それほど影響はしていない要因
遅延の原因 | 頻度 | 詳細な内容 |
---|---|---|
設備故障 | ★★ | 車両、線路、信号、電気系統などの故障。頻度は前述の内容ほどではない。 |
過密ダイヤ | ★ | 武蔵野線内は過密ダイヤといえるほど本数は多くない。 |
悪天候 | ★★ | 防風柵の設置により強風による遅延・運転見合わせが減少 |
遅延の原因として認識されやすい内容として上記の内容もある。
しかし、いずれも武蔵野線が他よりも遅延が起こりやすい大きな理由と断定できるほどではない。
設備故障
車両故障、ポイント動作不良・レール破断・架線支障・信号トラブル・電気系統トラブルなどの設備故障も電車が運転見合わせになる原因。
実際にこれらの要因で遅延が生じることがあるが、その頻度は決して多くはない。
どんなに多く見積もっても、1週間に1回程度には収まる。
設備故障が毎日のようにダイヤの乱れが生じる原因とは言えない。
過密ダイヤ
武蔵野線の場合は朝ラッシュでも6~9分間隔という間隔。
朝の通勤時間帯としては本数が少ない。したがって、遅延の原因が運転本数は入らない。
貨物列車の運転もあるが、朝夕はそもそも貨物列車の本数は少ない。
これも武蔵野線の電車に遅れは生じる理由とは言えない。
踏切
踏切は人身事故が起きる場所の典型例。クルマなどの一般交通と電車が衝突する可能性も高く、踏切が多い路線ほど電車が運転見合わせになりやすい。
電車が100%止まってしまい、復旧には時間を要するため、大幅にダイヤが乱れるよくある理由。
ただし、全線が高架上または地下を走る武蔵野線にはそもそも踏切が1か所もないため、まず踏切関連の支障が単独では起きない。
直通先の京葉線も同じく踏切は一切存在しない。
JR東日本のほかの近郊路線と比べると圧倒的に有利な立ち位置である。
その他、各路線の遅延事情について
鉄道事業者 | 路線名 |
---|---|
JR東日本 | JR中央総武緩行線、JR宇都宮線、JR高崎線、JR中央線快速、JR横須賀線、JR総武線快速、JR埼京線、JR川越線、JR東海道線、JR京浜東北線・根岸線、JR山手線、JR常磐線快速、JR武蔵野線、JR京葉線、JR横浜線、JR南武線 |
東京メトロ | 千代田線、東西線、有楽町線、半蔵門線、南北線、丸ノ内線、副都心線、日比谷線、銀座線 |
都営地下鉄 | 都営三田線、都営浅草線、都営新宿線、都営大江戸線 |
京成電鉄 | 京成本線 |
東武鉄道 | 東武伊勢崎線(スカイツリーライン)、東武東上線、東武野田線(アーバンパークライン) |
西武鉄道 | 西武池袋線、西武新宿線 |
京王電鉄 | 京王線、京王井の頭線 |
小田急電鉄 | 小田急線(小田原線・多摩線・江ノ島線) |
東急電鉄 | 東急東横線、東急目黒線、東急田園都市線、東急池上線、東急大井町線 |
京浜急行電鉄 | 京急本線 |
相模鉄道 | 相鉄本線 |
その他の私鉄 | つくばエクスプレス、東葉高速鉄道、北総鉄道、埼玉高速鉄道、東京臨海高速鉄道りんかい線 |