鉄道の遅延の原因とは!? よくある事例の一覧

鉄道で遅延が生じる原因とは何か。よくある事例の一覧とそれが全体に占める割合について考察。

「遅延」という括りの中でも、その規模は様々である。ダイヤの乱れであることには変わりないものの、利用者にとっての影響の大きさはそれによって変わってくる。

2つに分けると「小規模な遅延」と「大規模な遅延」に分離される。前者は10分未満、後者は30分以上の遅れが生じるもの。


小規模な遅延(10分未満の遅れ)

国土交通省が公表した『東京圏における遅延の原因について』という報告書では首都圏エリアにおける鉄道の遅延の原因とその規模について言及している。

主な原因 割合 具体例
乗車時間の超過 54.0% 混雑
急病人 11.9%
ドアの再開閉 6.4% 駆け込み乗車、荷物の挟まり
踏切の直前横断 4.8% 踏切の無理な横断
線路への落とし物 2.9% 線路への荷物落下事故
鉄道職員 1.4% 体調不良、遅刻
車両故障 1.2%
その他 17.4%
※国土交通省の2017年に行った調査より

2,3分程度の遅延がよく見かけるが、それらの理由は上記の表に該当する。

どうしても避けられない原因とは、急病人の発生と車両の故障くらいだろう。それ以外は当事者の努力次第で解決できる内容といえる。

混雑による乗車時間の延長

過半数は乗車時間の超過、つまり停車時間が長引くことによる遅れである。混雑していると、乗降にはどうしても時間がかかってしまう。

特定の車両に集中すると乗車時間に時間がかかりやすくなる。

「空いている車両に分かれてご乗車願います。」というアナウンスがあるのは、分散することで停車時間を規定通りに収めるようにするためだ。

駆け込み乗車はマナー上ダメだが、混んでいる車両に乗ることもまた好ましくない。

電車に乗る際には周囲の車両も見て、できるだけ空いているところを選んで乗ることが、定時運行への協力という点でのマナーでは求められる。

ただし、通勤ラッシュ時のように混雑が慢性化していることで、乗降時間が通常より長くなってしまうのも確か。

輸送力が限界に達している路線では改善するのが難しいのが実情なのは否定できない。

大型連休の新幹線や在来線特急もこれと同じ。

数十分の遅延が発生する事例が多いが、需要があまりにも圧倒的に多くて供給力を超過しているため、少なくとも通常ダイヤでは乗車時間の超過は避けられない。

ドアの再開閉

ドアの再開閉は主に駆け込み乗車と荷物の挟まりが具体的な原因になる。

車掌または運転士がいったん電車のドアを閉めたものの、人または荷物の挟まりが生じたため、最度ドアを開ける流れがこれに該当する。

乗客の悪いマナーによる原因で遅れる現象ともいえる。

これらの対策として、啓発ポスターの掲示や「ドアが閉まります。ご注意ください。」などのアナウンスでの放送による取り組みが実施されている。

発車メロディーやベルで電車の発車を知らせる鉄道事業者も多い。

ただし、これを実際に次の電車を待つか、手荷物に注意して電車に乗るかは乗客の行動にかかっている。意識的な問題である以上、鉄道事業者側には限界があるのは否定できない。

大規模な遅延(30分以上の遅れ)

主な原因 割合 具体例
自殺 49.4% 旅客案内上は「人身事故」
車両故障 7.9%
自然災害・天候不順 5.8% 地震、強風、大雨など
施設等の故障 5.6% 信号、ポイントなどの故障
保守作業のミス 4.0%
動物の侵入 2.5%
その他 24.8%
※国土交通省の2017年に行った調査より

大規模な遅延とは、もはや遅れというよりも完全に「運転見合わせ」に該当する。

鉄道運行情報やニュースにて「〇〇線は運転見合わせ」という表現がされることがあるが、これは大規模な遅延に該当する。

小規模な遅延なら単に「〇分遅れ」と駅の発車標に表示される程度で済む。報道機関で公表されるほどのレベルではない。

飛び込み自殺

人身事故で遅延する鉄道

大規模な遅延が生じる原因のほぼ半数を占めるのは列車への飛び込み自殺である。運転見合わせになる最大の理由だ。

高速で走る列車にひかれることで自殺を図る行為が一度発生すると、数時間は電車の運転再開までかかる。

自殺という人為的な行為でも本当の不慮の事故でも、駅構内での旅客案内では「人身事故」と表現される。

とはいえ、そのほとんどは偶発的な事故ではない。明らかな自殺によるものである。

鉄道での飛び込み自殺は多大なる乗客への迷惑となるため、可能な限りこれを防ぐための取り組みが対策として実施されている。

ホームドアの設置、駅構内や踏切に心理的に落ち着く効果がある青色ライトを設置する取り組みが目立つ。

このようなハード面での対策はとても重要な一方で、自殺そのものを減らすことを社会的に努力するというソフト面での取り組みも必要なのも事実。

参照:鉄道の人身事故=自殺の割合は何%に!? 本当の「事故」は少ない?

施設等の故障

施設等とは以下のようなものを指す。

  • 信号システム:信号灯器の現示異常、ATS/ATC/ATO故障
  • 線路の分岐器:ポイント故障
  • 架線:飛来物の接触、架線切断、ショート
  • 変電所:変電設備のトラブル

これらはいずれも電車の運転には絶対不可欠な設備である。

いずれか1つのでも異常が生じると、鉄道の運行は不可能になって運転見合わせという結果になる。

復旧までの時間は数分で終わることはほとんどないような内容のため、数時間は運転再開できない大規模な遅延に発展。

保守管理で改善する例もあるが、どうしても避けられない場合もある。

車両故障

鉄道の車両が故障して運転不能になるのもまた、大規模な遅延が生じる原因になる。

立ち往生するとそれを撤去して他の列車が正常に走行できるようにするためには最低でも3,4時間はかかる。

最新型の車両よりも旧式の車両の方が故障の可能性が高いため、最新型を積極的に導入することが1つの対策になる。

それでも、人身事故(自殺)のようなケースと比べると偶発的なトラブルにも当たるため、頻度を大幅に減少させることは難しい。

自然災害・天候不順

地震で運転見合わせの新幹線

地震発生のため全線で運転見合わせの九州新幹線

鉄道にて大規模な遅延が生じる原因の3位にランクインするのが自然災害および天候不順である。

具体的には以下のような事例だ。

  • 地震
  • 強風
  • 大雨・大雪
  • 落雷

中でも強い地震が発生すると、数日間から数か月間は鉄道が運休になることがある。

阪神淡路大震災や東日本大震災が代表的な例だろう。社会の機能そのものが麻痺している状態では、鉄道も平常運行はほぼ不可能と考えてよい。

強風、大雨・大雪、落雷による災害は数時間の運転見合わせで収まることがほとんど。

ただし、土砂崩れや盛り土流出、架線切断、電柱倒壊などの副災害が生じると、数日間にわたって運休が続くことがある。

自然災害・天候不順だけは大規模な遅延の原因の中でも絶対に避けられない事象である。自然現象であるため、設備の大規模な改良などを除いては対策のしようがない。

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