鉄道の運転見合わせや運休の原因となって運転再開までかなりの時間がかかることが多いのが「人身事故」である。
これはホームから転落して列車にはねられたり接触したりする本当の事故であることもあるが、自殺であるケースが多いのが現実。
したがって、不慮の事故というよりは自ら列車に飛び込む行為が過半数となっている。人身事故が頻発する理由となっているのは確か。
人身事故=自殺の割合は60~70%
鉄道の人身事故に自殺が占める割合はおよそ60~70%となっている。実際には各路線によって異なるものの、すべての鉄道路線を総合的に見るとこれくらいの割合になる。
<人身事故のうち自殺が占める割合> | |||
年度 | 割合 | 年度 | 割合 |
2002 | 68.6% | 2008 | 68.9% |
2003 | 77.7% | 2009 | 68.2% |
2004 | 62.8% | 2010 | 63.2% |
2005 | 63.4% | 2011 | 63.8% |
2006 | 63.5% | 2012 | 62.5% |
2007 | 69.3% |
上の表は、各年度ごとの人身事故に自殺が占める割合を示したものである。
いずれの年度も概ね6~7割ほどで推移しているのがわかる。半数以下になった年は1つもない。
不慮の事故よりも自らの死のために列車に飛び込んだ人が多いというわけだ。こうした傾向から、人身事故が起きた時はその3分の2ほどは誰かが自殺したために電車の運行がストップしたと判断できる。
乗客や鉄道会社の社員にとっては大変迷惑なことであるが、これが人身事故=自殺になる今の現状である。
本当の不慮の事故とは?
逆に本当に「不慮の事故」であるのはどんな時になるのか。
運が悪くて列車との事故になるケースは以下が挙げられる。
- 駅ホームから線路への転落
- 踏切内での立ち往生
- 無理な踏切内への侵入
- 線路内立ち入り
踏切内での接触・衝突事故
踏切が多い路線では踏切に起因する事故が起こりやすい。車の踏切内での立ち往生は、特に郊外を走る路線で多い傾向にある。
幹線道路と平面交差するところが多い路線では、どうしても踏切内での車と列車との接触・衝突事故が多発する。
自動車と列車がぶつかる事故だけではない。歩行者や自転車が警報機が鳴って遮断器が下りている踏切に無理に入って列車にひかれるというケースもある。
特に何分も踏切が開かない「開かずの踏切」の箇所で多発する事故である。
駅ホームから線路へ転落
さらに、駅ホームからの転落事故も少なくない。目が不自由な人や酒に泥酔した人がホーム上から線路へ誤って転落して進入してきた列車にひかれるという事故が典型的な例である。
近年はホームドアを設置する鉄道会社が増えてきていることで、ホームから線路への転落事故は減ってきているものの、少ない事例といえるレベルではない。
ホームドアが設置されている路線ではそうではない路線と比べると人身事故が発生する頻度は大きく異なる。
当然ながら、安全対策が十分に施されている全駅ホームドア設置路線の方が定時運行率は高く、人身事故による運転見合わせや運休が大幅に少ない。