相互直通運転のメリット/デメリットそれぞれの一覧

相互直通運転

鉄道の相互直通運転のメリットとデメリットについて一覧化。実施前と後の効果は概ねほとんどの事例で共通点が見られる。

中でも東京を中心とした首都圏では、異なる鉄道事業者同士で同一車両を相互乗り入れさせる事例が多い。私鉄・JR・地下鉄のいずれも区別なく積極的に他社線への直通運転が広く行われている。

利用者である乗客にも電車を運行する側である鉄道会社にも相互にとって良い点もある一方で、思わぬ悪い点もある。


相互直通運転のメリットとデメリット

メリット デメリット
乗換回数が減少 遅延しやすい
所要時間が短縮 運転系統が複雑でわかりにくくなる
利便性向上による沿線発展 車両の管理が複雑に
接続駅の混雑緩和 ダイヤ管理が大変

鉄道の相互直通運転のメリットとデメリットを一覧にすると、このようになる。

乗客が感じる点、鉄道会社にとっての都合の良し悪しのいずれも含まれる。

相互乗り入れをスタートさせる事例は増加傾向にある一方、それを廃止にして自社線内完結型に切り替えるケースはほとんどない。

それでも良いことばかりではないのは確か。中には思わぬよくない点も存在することは無視できない。

中には5社相互直通運転を行っている事例もある。

東武東上線・西武池袋線・東京メトロ副都心線・東急東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線という5社にも及ぶ。

このようなケースでもメリットとデメリットそれぞれ存在する。

メリット

主なメリット 詳細な内容
乗換回数が減少 異なる2つの鉄道会社の接続駅での乗り換えの手間が省かれるため、乗客は乗り換えなしで相互の路線へ乗り継げる。
所要時間が短縮 乗り換え時間が消える分、移動にかかる時間が短縮化。境界駅での停車時間が多少長くても、乗継よりは圧倒的に短い。
利便性向上によって沿線発展 利便性が向上することで沿線の不動産開発が活発になって地域社会が発展。地域内の中核駅まで〇〇分というフレーズが使えるように。
接続駅の混雑緩和 異なる鉄道会社同士の接続駅での乗り換えがなくなる分、その駅の混雑が緩和。乗降時間も短くなる。

乗客にとっての長所とは、乗換が不要または回数が減少する点になる。

鉄道事業者にとっても利点は、利便性向上によってグループ会社の不動産事業による収益拡大が期待できる点になる。

乗換回数が減少

鉄道会社ごとに運転系統を分離させていると、2つの路線を乗り継ぐ人にとっては乗り換えの手間が生じる。

電車を降りて改札を出て、別の鉄道事業者の改札に入って電車に乗るという行動が伴う。時刻表の関係から、乗り継ぎがうまくいかずに時間が余計に無駄になることもある。

相互直通運転があれば、乗り換えの手間が消える。そのまま同じ電車に乗っていれば自然と異なる路線へ入っていく。

乗り換えの有無は乗客によってはかなり重要なポイントでもある。

目的地までの距離間でも、道のりそのものは同じでも、乗り換えがあると「遠い」、乗り換えなしだと「近い」という判断に分かれることもしばしば。

所要時間の短縮

目的地にまでの所要時間が乗り換えの時間分は減少する。

乗り継ぎが時間的に効率よく行かないこともある中、直通運転はそのまま別の路線へ継続して運転されることで、時間が合わないことがない。

基本的に電車の乗り換えには10分以上がかかることがほとんど。時刻表の接続性を考えると、合計で15分以上になることが結構多い。

もちろん駅によっても事情が異なるものの、大まかな目安として考えるとこれくらいが妥当な数値になる。

相互直通運転が対象の異なる路線を通しで乗車する場合、これだけの時間が短縮化される。

別々の鉄道事業者が交わる境界駅での停車時間は、乗務員の交代などに時間を要するため、一般的な途中駅よりも長くなるものの、それでも2,3分程度にとどまる。

乗り換えが必要な場合よりも圧倒的に所要時間が短くなるのは確か。これが相互直通運転の最大のメリットでもある。

利便性向上により沿線が発展

乗り換えの手間が消滅または減少することで所要時間が短縮化されることは利便性向上することも意味する。

これにより、該当する鉄道事業者の沿線の不動産開発が活発になって地域社会が発展しやすくなる。

本来なら別の路線へ乗り継がないと行けないとうな場所へも、相互乗り入れで電車1本で行けるようになる。

実質的に同一路線として考慮できるため、「〇〇駅まで△分」というキャッチコピーが使える。

接続駅の混雑緩和

乗り換えが必須の場合だと、その駅ではまとまった乗客が電車を乗り降りするため、駅ホームや改札付近が混雑しやすくなる。

ホームと改札階をつなぐエスカレーターや階段は人であふれて、駅利用者にとっては都合が悪い。

相互直通運転があることで、乗り換えのために電車を乗り降りするという行為がなくなる。

ホーム上やエスカレーター・階段、改札付近で人混みができる可能性が大幅に減って混雑緩和へとつながる。

デメリット

主なデメリット 詳細な内容
遅延が生じやすい 路線距離が長くなるため、何らかのトラブルで遅延が生じると直接的には無関係な直通先にまで影響が及ぶ。
運転系統がわかりにくい 行先が別の鉄道事業者の路線内になるため、運転系統がわかりにくくなる。初めて利用する人だと理解できずに誤乗車するリスクがある。
車両の管理が複雑に 車両の管理は鉄道事業者ごとに区別する必要がある。他社の車両が故障したときの対処が難しいため鉄道会社の負担が増大。
ダイヤの管理が大変 運転系統の複雑化でダイヤの管理そのものが大変に。鉄道会社間での協議も必要。ダイヤ乱れの復旧もより困難に。

乗客にとっての短所となるのが、遅延が生じやすくなって電車が時刻表通りに出発・到着しないことが多くなる点。

鉄道事業者にとっては運行ダイヤや車両の管理が面倒なものになる点が短所になる。

他にも、別の鉄道事業者からの影響を受けるという点もデメリットに上げられる。

公営地下鉄ではモンロー主義があるケースも。

>>なぜ関西私鉄は地下鉄との相互直通運転が少ない!? 理由を調査

遅延が生じやすい

相互直通運転による遅延

鉄道事業者としてはあくまでも別々の路線である一方で、物理的には同一路線という性質になる。したがって、路線距離が実質的に長くなる。

ダイヤの乱れが生じると、直接的に無関係な直通先にまでその影響が及ぶ。

電車に遅延が生じると、乗り入れ先の路線でも遅延が生じる。

「〇〇線内での△△のため電車に遅延が生じています」と案内されるが、これが2つの異なる路線で相互直通運転を実施しているところに見られる例だ。

単一路線で完結して乗り入れ無しの路線なら、別の鉄道事業者や路線で生じや遅延や運転見合わせなどのダイヤの乱れによる影響が出てこない。

実際のところ、相互直通運転を行っている事例では電車の遅延の頻度が高い。定時運行できている日が少なく、毎日のように何らかのトラブルが出ているところが目立つ。

これが相互直通運転の最大のデメリットでもああろう。

運転系統がわかりにくい

別々の路線でも1本の電車でつながっているという点では、利便性の面では都合が良くなるものの、運転系統が複雑でわかりにくくなる。

つまり、路線図を把握することは難しくなる。

定期的に該当する路線の電車に乗っている人であれば運転系統の仕組みがわかるため、問題は生じにくい。

しかし、初めて乗る人にとってはそれを理解するのが難しくなる。「異なる路線へ乗り入れる」という事実をイメージするのが難しいためだ。

首都圏の郊外の私鉄と地下鉄が相互直通運転を実施しているケースだと、上り列車の行先は都心のターミナル駅ではなくなる。誰もが知っている駅名でないと、初めて乗る人は方向性が理解するのが難しい。

「どの電車に乗ればよいのかわからない」となってしまいやすいのが相互直通運転ならではのデメリットだろう。

車両の管理が複雑に

鉄道車両の管理

相互直通運転を実施しているとはいえ、鉄道車両はそれを導入した各鉄道事業者に属する。

運行する車両がどこの鉄道事業者の所属のものなのか、各列車ごとに分別して管理しなければならない。

ダイヤ上では列車ごとに車両の割り当てを決めなければならないが、関係する鉄道事業者間で協議を行って決める必要性が出る。その分手間が増えるのは確実。

保守点検などの管理を行うのも、基本的には車両が所属する鉄道事業者である。

さらに車両の故障時には代走車を用意しなければならないが、それを用意するのも本来の車両が所属する鉄道事業者になる。

ダイヤの管理が大変

ダイヤの決定でも該当する鉄道事業者間での協議が必要になる。その管理にも1つの鉄道事業者が独自に行うことが難しいため大変になりやすい。

列車の運転間隔や本数、優等列車と緩行列車の比率、行き先の駅などを決める際にも相互の事業者の同意は必須になる。

どちらか一方の鉄道事業者や路線には不都合なダイヤにもなりかねないという事情も出てきやすい。

さらに、ダイヤが乱れた場合の復旧にも手間が生じやすくなる。単一路線の場合よりも時間もかかる。

利用状況に合わせたダイヤにするという点、異常時の対処という点では相互直通運転はデメリットになる。


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