JR東海道線の静岡地区はほぼすべてでロングシートになっている。転換クロスシートでの運用はゼロに等しい。313系についても、御殿場線・身延線を走っている3000番台以外はすべて横向きに座るタイプになっている。
313系といえば、JR東海の在来線の電化された路線のほとんどに導入されている主力車両である。そして、東海道線もまた主力はこの313系となっている。
静岡地区については、313系と211系が走っている。掛川駅以西では311系も走っている。311系はすべて転換クロスシートになっているため、進行方向に座席が向いているタイプとなっている。すべてロングシートとなっているのは211系と313系。
一方、同じ313系であっても名古屋地区では転換クロスシートになっている。車両の端部がロングシートになっているものも一部存在するが、それでも大部分は縦向きに座るようになっている。
なぜ静岡地区だけロングシート?
名古屋地区の場合、東海道線はほとんどの区間で名鉄と並行して走っている。競合私鉄が存在しているということで、沿線の鉄道利用者の奪い合いが少なからず存在している。
また、郊外から名古屋の中心部へ移動する人も多く、遠距離ユーザーもかなり多い。そのため、長時間電車に乗ってもいいような快適さが求められている。快速系の電車の本数が多いのはこのためであるが、速達性だけではなくて乗り心地の面でも良さが大切となっている。
こうした理由に加えて、並行する名鉄では転換クロスシートが使われていることもあって、JR東海道線の名古屋地区では転換クロスシートを用いているというわけだ。
一方、静岡地区に関しては並行する私鉄が存在しない。JRが独占している地域である。さらに、三大都市のような主要な都市も存在しないため、鉄道を利用する人はそれほど多くはない。長距離を移動する人もあまりいない。
このため、転換クロスシートにする必要性がないのが現状になっている。ロングシートでも鉄道会社としての収益性に問題がない状況となっているのが静岡地区である。
2人掛けだと座りにくい?
転換クロスシートには、利用者にとって都合が悪い部分もある。座席は1列あたり2+2人になっているわけであるが、すでに誰かが座っている場合、そこから座席に座りに行くのをためらう人は意外と多いのではないだろうか。
もちろん、2人掛けであれば2人まで座ることができるのは事実であり、空いていれば遠慮なく座る権利がある。とはいえ、何となく座りにくいと感じるケースが多い。
また、2人掛けのところを自分が座っていないもう一方の座席にバッグなどの荷物を置いて占領しているケースもよく見かける。これもまた、ほかの乗客が座りにいくのをためらわせる要因になっている。
こうした点もまた、JR東海道線の静岡地区の313系を転換クロスシートではなくロングシートにしている理由といえるのではないだろうか。