名古屋市営地下鉄桜通線の延伸計画の全容について、建設構想がある区間およびそれが着工される実現性を調査してみた。
今のところは両端ともにさらに新線を建設する案が存在する。徳重~豊明北~豊田市南部までの東部、中村区役所~七宝町(あま市)が延伸計画として持ち上がっている。
事業化された区間が全線開業してからまだそれほど長い月日が経過していない桜通線だが、すでにさらなる延伸を待っている自治体もあるようだ。
桜通線の延伸計画
延伸区間 | 現実性 | 概要 |
徳重~豊明北 | ★★ | 鉄道路線の空白地のため、実現性は若干あり。名古屋市外のため第三セクター化が予想。市営地下鉄はエリア外。 |
豊明北~豊田市南部 | ★ | 名古屋市内から遠く離れている点、沿線に代替路線があるため困難。 |
豊明北~刈谷市内 | ★ | すでに名鉄名古屋本線、JR東海道本線があるため実現困難。 |
中村区役所~七宝町 | ★★ | あま市内は鉄道空白地のため、延伸の可能性は若干あり。 |
名古屋市営地下鉄桜通線の各延伸計画の全容は上の通りになる。実現性を★5点満点で点数化してみた。
いずれも事業化される見込みは立っていない。あくまでも構想段階にとどまっている。現時点では、2011年に開業した野並~徳重で事業完了となっている。
ただし、今後も桜通線の利用者数が伸びたり、延伸部分の人口が増えるなどの変化があれば、延伸計画が事業化される可能性は残る。
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徳重~豊明市内
徳重駅から豊明市内にかけての区間は比較的利用客が見込めるといわれている。周辺地域では名鉄名古屋本線、名鉄豊田線(地下鉄鶴舞線へ直通)があるが、地図上で桜通線の延長線を見ると完全に鉄道空白地帯になっている。
沿線に該当する東郷町はまったく鉄道がない市町村である。道路網はあるが公共交通機関の面では交通の便が悪いのはまったく否定できない。
最寄りの鉄道の駅まで行こうにしても、バスに乗っていかないといけないくらいの距離が離れている。
こうした背景から、桜通線の延伸計画では徳重~豊明北の部分が最も実現性が高い。
豊田市南部、刈谷方面
豊明市内からさらに豊田市南部や刈谷市内にも延伸させてほしいという要望がある。桜通線がここまで延伸すれば、名鉄線やJR線に代わって名古屋市内へ直結する路線ができるとして期待されている。
最終的な形は名鉄三河線と接するところまで延伸される構想になる。
ただし、こちらの計画はさらに実現性が低い。名古屋市内中心部から距離が離れていることに加えて、完全な鉄道空白地帯というわけではないからだ。
その一方ですでに住宅街が広がっている地域もあり、用地取得は決して簡単なものではないだろう。莫大な費用と時間を費やしてまで鉄道を新しく建設するメリットがあるかというと、そうとは限らない。
実際に桜通線の延伸計画でここまで実現する確率はほぼゼロに近い。
中村区役所~七宝町(あま市)
桜通線の西側の起点は中村区役所駅である。ここからさらに延伸してあま市七宝町まで延ばすという計画も存在する。
多くの区間は名古屋市内を通ることから、名古屋市営地下鉄が桜通線をここまで線路を建設してもよいだろうとの意見は少なくない。
ただし、実現性はやはり小さい。付近は名鉄津島線、JR関西本線、近鉄名古屋線が通っている。
あま市七宝町に限れば確かに鉄道空白地帯だが、莫大な予算を費やしてまで新線を建設するメリットは薄い。
さらに、距離は今の中村区役所駅からそう離れているわけではないため、鉄道事業者は名古屋市交通局になる可能性が高い。こうなると、それに消極的な姿勢の市営地下鉄のため事業化は難しい。
そもそも桜通線は赤字
桜通線の延伸計画が実現できない最大の理由は、路線単体での経営状況が赤字になっている点とも言える。
名古屋市営地下鉄の場合、利用客が最も多い東山線、名城線、鶴舞線は黒字である。一方の上飯田線、桜通線、名港線は赤字である。
上飯田線は営業キロ数が0.8kmしかなく、あくまでも名鉄小牧線との連絡線という性質のため、市営地下鉄全体に対する赤字の影響力は小さい。
一方の桜通線はすでに19kmもあり、赤字の影響は大きい。これは名古屋市営地下鉄としても無視できないダメージになる。
延伸計画に積極的になれる理由がなく、たとえ別の鉄道会社が延伸部分を管轄するとしても、車両の増備や信号設備の改良を強いられる。
こうした背景から桜通線の延伸計画が実現する見通しはまったく立っていない。