複々線とは!? 細かい種類は全部で4つある!

複々線

複々線とは同一区間において線路が4本敷設している部分のことを意味する。基本的には単なる複線が2セットある状態を指す。

条件として同じ駅間かつ同一の鉄道事業者が所有する線路でなければならない。異なる2つ以上の会社を合計する方式は「複々線」には該当しない。

目的とは、単なる複線では輸送力が不足してしまうため、さらにもう1セット上下線の線路を追加して線路容量を増やすことである。列車の運転本数が多い大都市部で目立つ。


複々線の種類

複々線という言葉では同じでも、詳細な種類は全部で4つに分類される。

廃線による違いと運転系統による違いにも分けられる。

複々線の種類 イメージ図 詳細な内容
方向別複々線 上り・上り・下り・下り 同一方向へ向かう線路が隣り合うタイプ。島式ホームなら同一ホームでの乗り換えができる。
線路別複々線 上り・下り・上り・下り 隣り合う線路は方向が逆のタイプ。複線が単純に2つある構造。乗り換えはホームが違うため面倒。
緩急分離運転 急行・急行・緩行・緩行 通過駅の設定がある速達列車と各駅停車で別々の線路に分けた運転系統。並び順は様々。
系統分離運転 A線・A線・B線・B線 路線ごと、旅客線と貨物線で別々の線路に分けた運転系統。並び順は様々。

前者2つは配線上の構図による違いである。後者2つは運転系統による違いである。

配線による違い

方向別複々線:上り線・下り線がそれぞれ隣同士に並ぶ。同一ホームでの対面乗り換えが可能。

線路別複々線:複線が2つ組合わさった構図。同一ホーム乗り換えが不可。

方向別複々線

方向別複々線

方向別複々線は、同一方向へ向かう列車が走る線路が隣り合う構図になっているタイプのことを指す。

特徴として、同一方面の列車同士の乗り換えは島式ホームなら対面乗り換えが可能なところが挙げられる。つまり、同一ホームでの乗り換えができるというわけだ。

「通勤五方面作戦」という高度経済成長期に首都圏のJR各線で複々線化以外のJR・私鉄ではこの「方向別複々線」を採用しているところがほとんど。

特に通勤ラッシュの混雑緩和のために輸送力強化を目的に複々線化した路線では、ほぼこのタイプである。

さらに、運転系統としては緩急分離型で運転している例が多い。外側線を急行線、内側線を緩行線にする例、またはこの逆バージョンにして複々線区間を運用している。

参照:複々線化による「効果」はどれくらいある!? 事例から分析

線路別複々線

線路別複々線

線路別複々線は、隣り合う線路は逆方向へ向かう列車が走る線路となっている。単なる複線が隣同士でセットになった形になっている構図である。

特徴として、同一方向へ向かう列車間の乗り換えでは必ず別々のホームへ移動する必要がある。

ホームと連絡通路を結ぶエスカレーターや階段を利用することが求められるため、乗り換えが不便かつ面倒という欠点がある。

首都圏にて高度経済成長期に都心から郊外へ延びるJR線(旧国鉄)で実施された「通勤五方面作戦」という複々線化事業ではこの「線路別複々線」を採用している。

路線名でも別々に区別している。

東海道線ー京浜東北線、東北本線(宇都宮線と高崎線)ー京浜東北線、東海道線ー横須賀線は完全に名称が異なる。

総武快速線ー中央総武緩行線、中央快速線ー中央総武緩行線、常磐快速線ー常磐緩行線は名称は重複するが、実質的には2つの異なる路線として運転されている。

2つの複線がそれぞれ独立した構造になっていることで、緩急接続には難点がある一方、ダイヤの乱れの影響が受けにくいという良点もある。

運転系統による違い

緩急分離運転:急行線と緩行線で列車が走行する線路を分離した運用方法。

系統分離運転:異なる路線(A線とB線)ごと、旅客列車と貨物列車で分離した運用方法。

緩急分離運転

緩急分離運転とは、複々線の4本の線路のうち、2本を通過駅のある速達列車が走行する線路(急行線)とし、残り2本を各駅停車が走行する線路(緩行線)とする運転系統のことを指す。

イメージ的には以下のようになる。

上り急行)・上り緩行)・下り緩行)・下り緩行

上り緩行)・上り急行)・下り急行)・下り緩行

上り急行)・下り急行)・上り緩行)・下り緩行

通過駅のある優等列車が走る線路とすべての駅に止まる各駅停車の走る線路を分けることで、優等列車の速度は向上し、各駅停車も通過待ちによる待避がなくなる。

方向別・線路別を問わず種別で分離している場合には、より円滑な列車の運転が可能なのがメリットといえる。線路容量もフルに使えるのも緩急分離運転ならではの特徴である。

系統分離運転

系統分離運転とは、複々線の4本の線路のうち、異なる路線2本ずつ使用するタイプの複々線の運転系統を指す。

A線とB線で複線が2セットになったものや、旅客線と貨物線で分離した「貨客分離」のものがある。

異なる2つの路線が合わさって複々線になっている事例として、東急東横線と東急目黒線、京成本線と京成押上線などがある。

緩急分離運転と重複するが、「通勤五方面作戦」で複々線化された首都圏のJR線も系統分離運転にも該当する。

停車駅が同一の場合で緩急分離運転の要素がない路線の場合、列車本数の合計こそは単なる複線よりは向上する一方、効率的な運転という点では不満が残る。

優等列車が先行する各駅停車に追いついてしまって遅くなる現象、速達便の通過待ちをする各駅停車の待避は消滅しないためだ。


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