標準軌と狭軌の違いの早見表! メリット/デメリットも比較

レール幅の違い

鉄道の線路幅の一種である標準軌と狭軌の違いを早見表にする。メリットとデメリットも比較しながら、双方の特徴について調査した。

標準軌とはレール幅は1,435mm、狭軌とは1,067mmの規格のことを指す。日本ではほぼすべての鉄道路線がこれらのいずれかの線路幅を採用している。

代表例に挙げると、標準軌は新幹線、狭軌は在来線(JRなど)である。どちらかを選択するかは、過去の鉄道黎明期の歴史にも根拠がある。


早見表:標準軌と狭軌の違い

標準軌 狭軌
軌間(レール幅) 1,435mm 1,067mm
建設・維持管理コスト 高い(軌道敷が広いため) 安い(軌道敷が狭いため)
曲線通過速度 大きい 低い
高速走行 安定 不安定
乗り心地 横揺れが少ない 左右に振れやすく揺れが大きい
スペース 広い 狭い
採用実績 新幹線
東京メトロ以外の全国の地下鉄の多数
関西私鉄:阪急・阪神・京阪・近鉄の一部(多数派)
首都圏私鉄:京成・京急(少数派)
その他大都市私鉄:西鉄
在来線(JR・旧国鉄)
東京メトロ(銀座線・丸ノ内線以外)
首都圏私鉄:東武・西武・小田急・東急など(多数派)
関西私鉄:南海・近鉄の一部(少数派)
その他大都市私鉄:名鉄・相鉄

標準軌(1,435mm)と狭軌(1,067mm)の2つの軌間を比較すると、上の早見表のとおりになる。

なお、ここで挙げる特徴はあくまでも線路幅だけに着目した場合である。

実際には鉄道車両側の性能によるところも大きい。近年は車両技術の向上もあって、以前と比べると2者の違いをほとんど感じさせない要素も出ている。

参照:全国の鉄道の路線ごとの「レール幅」の規格一覧

建設および維持管理コスト

建設や維持管理のコストは軌道敷が狭い狭軌の方に軍配が上がる。

横幅が狭いことで必要となる枕木1本の長さが短くて済む。1本程度ならそれほど値段に違いは見当たらないものの、数キロ以上にもなればその差ははっきりとする。

レールを敷く際の寸法測定にも、長い標準軌の方が時間と労力がかかる。

さらに、標準軌だと狭軌に比べてレール幅が広いということは線路そのものを敷くために必要な土地の面積も広く必要とする。用地取得という面でもコストが割高になる。

初期費用もランニングコストも標準軌と狭軌を比較すると1,067mmの狭軌の方が優勢と判断できる。

曲線通過速度

曲線通過速度

カーブを曲がる際のスピードである曲線通過速度は幅が広い標準軌の方に軍配が上がる。

車輪で鉄道車両を支える間隔が広い分、若干ではあるが速いスピードでカーブを曲がることができる。

中でも低中速域での曲線通過速度が標準軌の方が有利になる。ポイント通過の速度も狭軌より標準軌の方が速い数値に設定できる。

ただし、高速域になると今度は乗り心地の面が重視されるため、レール幅による違いは小さい。

高速走行

高速走行に有利な標準軌

高速走行に向いているのもレール幅が広い標準軌である。

新幹線では在来線とは違って1,435mmの標準軌を採用されているのもここに理由がある。

車輪を支える間隔が広いことで、高速走行時(特に時速200キロメートル超)の横揺れが少ない。

狭軌でも物理的に不可能とまではいかないが、高速走行時は左右に振れやすくなって横揺れが生じやすくなる。つまり不安定という意味になる。

乗り心地

乗り心地が悪い狭軌

在来線の時速100キロメートル程度の速度で走行している場合でも、標準軌と狭軌では前者の方が横振れが少ない。

座席に座っている場合にはほとんど気になるレベルではないものの、立って乗っている場合だと影響を感じることもある。

同じ仕組みの車両なら、レール幅が広い方が走行時の振れが少なくて乗り心地が良い。その分乗客にとっては乗っていて疲れにくくなる。

なお、狭軌でも車両側に対策を施せば左右の振れは抑えることが可能なのも確か。横揺れを和らげる「ヨーダンパ」を搭載した電車なら乗り心地は大幅に改善される。

JRの在来線でも、時速120~130キロメートルに最高速度が設定されている路線では、ヨーダンパ付の車両を導入している例が目立つ。

用地スペース

標準軌はレール幅が広い分、用地に関しては広いスペースを必要とする。反対に狭軌は若干ながらの狭いスペースでも線路を敷くことが可能。

山間部を通って急カーブが多いところでは狭軌の方が有利になる。

日本国内において戦前の鉄道黎明期に旧国鉄が1,067mmの狭軌を採用した理由の1つとしても、山間部が多い日本では狭いレール幅の方が有利だったからという説がある。

しかも国土が狭い日本はできるだけコンパクトにすることが求められる中、狭軌はこの条件に適応するのも否定はできない。

メリットとデメリット

軌間 メリット デメリット
標準軌(1,435mm) 高速走行に有利
乗り心地が良い
曲線通過速度が高め
建設および維持管理コストが高い
広めのスペースが必要
JR線への乗り入れ不可
狭軌(1,067mm) 建設および維持管理コストが低い
省スペース
JR線への乗り入れが可能
高速走行時に不安定
横振れしやすい
曲線通過速度が低め

標準軌

標準軌のメリットは、高速走行ができること・乗り心地が良いこと・曲線通過速度が高めなこと。

速達性が重視される鉄道では標準軌が力を発揮する。

新幹線をはじめ、私鉄各線でも標準軌なら同じ曲線半径でも狭軌よりも高速で曲がれる。

一般的にJRに比べて私鉄各線はカーブが多い。できるだけ減速せずに曲がるためには、標準軌の方が選択肢になる。

デメリットとは、建設および維持管理コストが狭軌よりも高くなること・広めのスペースが必要なこと・JR線への乗り入れが不可能なことである。

枕木1本辺りの長さが長く、レール敷設の際の測量も時間と労力がかかる。

土地も広いスペースが必要とするため、土地に限りがある都市部や山間部では不利になりやすい。

そして、JR線への乗り入れは不可である。JRは旧国鉄のため狭軌を採用している。

車軸幅を自由に調整できる「フリーゲージトレイン」でない限り、標準軌の鉄道路線はその時点でJRとの相互直通運転ができない。

狭軌

狭軌のメリットとは、建設および維持管理コストが安くなること・省スペースであること・JR線への乗り入れが構造上可能なことである。

標準軌よりも枕木1本辺りの長さが短く、レール敷設の際の測量も時間と労力が相対的に少ない。

土地も標準軌ほどはスペースを必要としないため、土地に限りがある都市部や山間部で有利になりやすい。

構造上はJR線への乗り入れは可能である。JRは旧国鉄のため狭軌を採用しているため、JR線と相互直通運転を行おうとする民鉄があれば、その実現性が高まる。

実際のところ、私鉄でも狭軌を採用する割合が高い首都圏エリアではJRと私鉄各社が相互直通運転を実施しているケースが複数ある。

逆にデメリットとは、高速走行に不向きなこと・乗り心地が悪いこと・曲線通過速度が低めなこと。

速達性が重視される鉄道では狭軌だと支障が出やすい。新幹線のように時速200キロメートル以上の高速走行を行うのなら、狭軌という選択肢はなくなる。

車体を支える車輪の間の間隔が狭いことで、走行時には左右に振れやすくなる。これによって横揺れが生じて乗り心地が悪化する。

曲線通過速度も狭軌だと低い。同一速度でカーブを通過する際に脱線しやすいのは標準軌よりも狭軌の方になる。

直線が多い路線なら問題ないものの、カーブが多発する路線は欠点になるだろう。

もっとも最近では車両の技術が向上していることで、以前と比べると乗り心地の改善、曲線通過速度の向上が達成されている。とはいえ、同一条件下なら標準軌に劣る。

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