なぜJRの在来線は「狭軌」!? 標準軌にしなかった時代的背景

狭軌のJR在来線

JRの在来線はなぜ線路幅に1,067mmの狭軌を選択しているのか。1,435mmの標準軌にしなかった理由に関して、国鉄時代の鉄道黎明期という時代的な背景から考察する。

今でこそは旅客鉄道会社線(JRグループ各社)は民営化されて本州3社は少なくともほぼ私企業になったものの、1987年までは国が直轄で運営する日本国有鉄道だった。

レール幅を「狭軌」にすると決めたのも国鉄である。


国鉄が狭軌にした理由

主な理由 詳細な内容
イギリスからの推奨 日本は山間部が多くて急カーブを作ることを余儀なくされるというイギリスからの提唱で狭軌を選択。あくまでも説にすぎないが、それでも有力。
建設費を安い、工期が短い 標準軌より狭軌の方が敷設が低コスト。明治時代は富国強兵の時期で、1日でも早く鉄道を開業させることが重視されていた。
大量輸送の必要性に乏しかった 大量輸送は標準軌が向いているが、国土が狭い日本では大量輸送の必要性がそれほど高くなかった。

JRの前身である国鉄が狭軌(1,067mm)を選択した背景には上記3つが挙げられる。

標準軌・狭軌にはそれぞれ一長一短あるものの、なぜ狭軌で統一したのかという点には時代的な要因がある。

参考:標準軌と狭軌の違いの早見表! メリット/デメリットも比較

イギリスからの推奨

日本でまだ鉄道がまったく存在しなかった明治初期のころはイギリスから鉄道という交通手段が提案された。

当時の役員たちはまだ軌間という概念そのものを知らなかったと考えられる。

一方で、イギリスからは次のような提案を受けた。

山間部が多い日本は急カーブを作ることを余儀なくされるため狭軌が好ましい。

1,067mmという線路幅はその当時はイギリスの植民地で使われていた規格。一方のイギリスでは1,435mmの標準軌が一般的だった。

不平等条約などがあったことでもわかるように、日本を植民地に近い存在としてイギリスは捉えていたこともあって、日本に狭軌を推奨した説はかなり有力。

建設費が安い、工期が短い

狭軌は標準軌に比べてレール幅が短いことでその分建設費を安く抑えることができるというメリットがある。さらに、使う資材の量も少ないことで、工事も短いという特徴がある。

当時はまだ線路敷設のための重機などはほとんどなく、作業者の手作業で工事を行うしかなかった。

明治初期という時台は「富国強兵」の時代。西欧化を進めるために一刻も早く鉄道を全国に建設することを国を挙げて取り組んでいた。

広範囲に短期間で建設するためには、1路線辺りの建設費をできるだけ低く抑え、さらに工期を短くさせることが求められた。

これらの時代的な背景からすると、標準軌よりも狭軌の方が軍配が上がるのが推測できる。

大量輸送の必要性に乏しかった

標準軌のメリットとは、鉄道車両1両のサイズを大きくできること、長編成での運転に向いていることが上げられる。

標準軌を導入していたヨーロッパ各国やアメリカは国土が広大なこともあって大量輸送の需要が大きい。

一方の日本は国土が狭い。大量輸送の必要性があまり重視されず、あくまでも全国各地を鉄道で結ばれるネットワークを完成させることの方が優先される傾向があった。

何が何でも標準軌を選択してまで大量輸送という点を重視する理由がなかったことが、国鉄が狭軌を選んだ理由の1つと推測される。

なお、現在でも日本は大陸の各国と比べると貨物列車の1編成当たりの輸送量が小さい。それよりも高頻度での運転の方に力が入れられている。

さらに旅客列車の運転が重視されている。通勤電車を走らせることこそが日本の鉄道ならではの事情だが、明治初期でさえも旅客輸送に力を入れる傾向が見られた。

大量輸送ではなく、「利便性」が重視されたとも受け取れる。

私鉄はなぜ標準軌の事業者があるのか?

標準軌の京阪(関西の私鉄)

それでは、なぜ私鉄はJRとは違って1,435mmの標準軌を採用しているところがあるのか。

参照:全国の鉄道の路線ごとの「レール幅」の規格一覧

これも戦前の鉄道黎明期に根拠がある。

国鉄は官営だったが、私鉄は今と同じく民間企業が運営する鉄道事業者だった。

結論を言うと、軌道法に基づいて路面電車または地下鉄道として敷設した鉄道事業者は狭軌ではなく標準軌を選択した例が多い。

私設鉄道法、後の地方鉄道法に基づいて敷設した私鉄は国鉄と同じく1,067mmの狭軌を選ばざるをえなかった。

標準軌を選んだ私鉄にある背景

  • 軌道法に基づいて路面電車として線路を敷設
  • ふつうの鉄道では国鉄との競合禁止など、条件が厳しくて認可されず
  • 都市間輸送はアメリカの事例(標準軌)を参考にした事例が多数

軌道法に基づいて路面電車として敷設

軌道法に基づく路面電車

当時の鉄道とは今では一般的な専用軌道ともう1つ「併用軌道」という路面電車があった。

路面電車は軌道法に基づいて建設できたが、これに関する条件は緩いものだった。

一方の専用軌道で鉄道を敷設する場合は私設鉄道法という法律に基づいて作ることが義務付けられていたが、これには厳しい条件がいくつもあった。

特にネックとなっていたのが国鉄との競合エリアへの敷設禁止に関する条件。国鉄の既存路線と並行する地域では専用軌道の鉄道を敷設できなかった。

しかし路面電車という扱いにすればほぼ自由に建設できた。関西を中心とする私鉄はこうして軌道法に沿って鉄道を建設した。

路面電車の線路幅は標準軌の1,435mmまたは馬車軌間の1,372mmのいずれかが主流だったため、狭軌とは異なった規格で敷設することとなった。

私鉄各社は標準軌のアメリカを参考にして鉄道を走らせたこともあり、1,435mmの標準軌を採用する事例が多かった。

関東の私鉄もまた、軌道法に基づいて線路を敷設した鉄道事業者は1,435mmまたは1,372mmを採用した。(今も京急・京成・京王が該当)

さらに、市電や地下鉄への乗り入れを想定して標準軌(1,435mm)や馬車軌間(1,372mm)で建設する例も多かった。

京急や京王は東京都電への乗り入れを想定して線路幅を1,372mmにした。

京浜急行の子会社だった湘南電鉄は東京地下鉄(銀座線)への乗り入れを想定して標準軌を選んだ。

<関東私鉄の線路幅の事情>


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