なぜ京成電鉄の線路幅は1,435mm(標準軌)なのか!?

1,435mm(標準軌)のレール幅の京成線

京成線の線路幅はなぜ「標準軌」と呼ばれる1,435mmの規格なのか。JRや他の私鉄各社のように1,067mmの狭軌でない理由について考察。

日本国内では1,435mmのレール幅を採用するのは新幹線の全線をはじめ、地下鉄と関西の私鉄の多くが例に上げられる。

一方で私鉄では、標準軌を採用するのは首都圏だと京成以外には新京成電鉄と京浜急行電鉄のみである。少数派であることがわかる。


標準軌(1,435mm)の理由

主な理由 詳細な内容
もともとは東京都電と同じ1,372mm 京成線が開業した1910年代当時は東京都電に合わせて1,372mmの線路幅にする私鉄が存在。京浜急行、京王も同じく1,372mmに統一。
都営浅草線、京急本線との相互直通運転のため 京成全線で1959年に1,372mm→1,435mmへ改軌工事を実施。都営浅草線、京浜急行本線と相互乗り入れを行うため。
※都営浅草線建設の際、京急と京成の協議の結果、車両在籍数が少ない京成電鉄側が改軌を行うことで決定。

京成電鉄の各線は最初は1,372mm(馬車軌間)で建設され、戦後の1959年に1,435mm(標準軌)に改良する工事が行われ、今のような形になった。

改軌の理由は後述するが、都営浅草線を経由して京浜急行へ乗り入れるため。京急側との協議で京成がレール幅を見直す方針に決定した。

>>なぜ京浜急行の線路幅は1,435mm(標準軌)なのか!?

京成でそもそも最初は1,372mm「馬車軌間」を採用した点には歴史上の理由がある。

専用軌道を走る鉄道は「私設鉄道法」によって国鉄と同じ1,067mmで建設することが求められていたものの、路面電車は「軌道法」が適用されたため、1,372mmまたは1,435mmで建設する鉄道事業者が相次いだ。

私設鉄道法は鉄道建設の条件が厳しく、鉄道会社にとってはなかなか参入できないものだった。特に国鉄が走る地域では競合相手になるという理由から建設そのものが認可されなかった。その代わりとなったのは軌道法に基づいて路面電車として作る方法だった。

東京都電のレール幅を採用

京王線が初めて開業したのは1912年の押上~曲金(現京成高砂駅)間である。当時の京成電鉄では「馬車軌間」と呼ばれる1,372mmを採用。

当時は路面電車を指す「併用軌道」に該当する区間が存在していたため、軌道法という法律に沿って京成電鉄の各線が建設された。

他の関東私鉄でもこの軌道法に基づいて作れて、レール幅を1,372mmにするところが複数事例があった。京王線も1,372mmで新線を建設した。

参照:なぜ京王線の線路幅は1,372mm(馬車軌間)なのか!?

この1,372mmは東京都電が採用していた規格。都電とは東京都内を走る路面電車のことであり、今では都電といえば荒川線しか残っていないものの、ここでも1,372mmが使われているのはこのため。

今ではこの「馬車軌間」の1,372mmのレール幅で存続している鉄道路線は都電荒川線、同じく路面電車の東急世田谷線、それに京王電鉄各線(井の頭線以外)のみとなっている。

京浜急行でも元々は1,435mmで建設したものの、品川駅から東京市電への乗り入れるために、路面電車で使われていた1,372mmへ改軌した。京成電鉄が開業した1910~20年代はすでに1,372mmだった。

元々はいずれも東京都電に合わせる形で自社の路線を建設したため、馬車軌間の1,372mmの規格を採用した背景がある。

京成電鉄でもこのような流れに合わせる形で、東京都電と同じ1,372mmのレール幅で建設した。

この段階で、国鉄の規格である1,067mmの「狭軌」を使うという選択肢にはならなかった。

>>全国の鉄道の路線ごとの「レール幅」の規格一覧

都営浅草線、京急本線との相互直通運転のため改軌

都営浅草線

京成電鉄は都営浅草線および京浜急行線への直通運転を行うため、戦後の1959年に1,372mmから1,435mmへ改軌した。

京浜急行は戦前の1933年に1,372mmから1,435mmに改軌した。戦後も1,435mmの標準軌にて鉄道を運行していた。

そこに都営浅草線という地下鉄が建設されることが決まり、京急と京成それぞれとも相互直通運転を行うことが前提となっていた。

3社局の協議の結果、車両数が少なかった京成電鉄側が改軌する形で決着し、1,372mm→1,435mmへの改軌工事が実施された。

京浜急行線では1,435mmだったため、もしここで1,067mmの狭軌に改軌しようとすると、今度は京浜急行側までも改軌する必要性が生じる。

線路幅を変更する工事を行う区間をなるべく少なくさせるためにこそ、京成電鉄だけが改軌工事することとなった。

もし都営浅草線ができなかったら、京成電鉄と新京成電鉄では今でも京王線と同じく1,372mmを使用していただろう。

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