JR東日本では電車の発車の際のブザー合図を行っていない。車掌から運転士へ向けたシグナルを送ることなく、ドアが閉まると直ちに出発する方式をとっている。
首都圏では、他の鉄道会社ではドアが閉まってもすぐに発車するわけではない。最後尾に乗務している車掌がブザーで合図を送ってから電車が動き出す。
JR東日本のみ、すべてのドアが閉まっていることを示す知らせ灯が点灯したらすぐに発車し、合図による信号は発しない。
なぜ、このようにJR東日本だけブザー合図を行っていないのか。何か特別な事情はあるのか。いろいろと今回は調べてみた。
国鉄時代から続く伝統
発車の際に知らせ灯の点灯を確認するだけのやり方は国鉄時代から続いている。それがJR化した後の今でも続いているという形だ。
私鉄の場合、以前から出発の際にブザーを車掌から運転士へ送るというやり方を行ってきた。地下鉄でも私鉄流のやり方となっている。
国鉄時代は、全国でブザーなしで発車していた。首都圏のみならず、中部地方や関西地区でも今のJR東日本のような形となっていた。
2000年代に入ると、駅を出発する際の安全確認が重要視されるようになったことから、JR各社でもブザー合図を行うようになった。
JR東海やJR西日本でも、私鉄と同じように「発車OK」のしるしとしてブザーを長押し1回を行うようになった。
そして、何も変えずに国鉄時代のままのやり方で通しているのがJR東日本のみとなったというわけだ。北海道・東海・西日本・四国・九州とは追従しなかった。
過密ダイヤでできない?
JR東日本と他の地区との違いといえば、東京をカバーするかしないかの違いがある。首都圏は他のエリアとは比べ物にならないほど運行本数が多く、その分ダイヤが過密状態となっている。
発車の際の安全確認が重要であることには変わりないものの、ブザー合図のシステムを取り入れるほどJR東日本の各路線ではダイヤに余裕がないのが現状といえる。
朝ラッシュの時間帯となる7~8時台は2、3分間隔で電車が行き来するのは当たり前である。それでも、輸送力が不足状態となっているところも数多くある。
ドアを閉めてから運転士にブザーで発車オーライの合図を送るための時間はそれほどかからないものの、秒単位で運転されている環境の中では少なからずロスタイムとなる。
速やかに電車を動かさなければならない環境にあるJR東日本だからこそ、他の地区や私鉄各社とは違って知らせ灯のみとなっているのだろう。
ただし、気動車については例外となっている。非電化区間では、車掌が乗っている場合にはブザー合図を行っている。これは、他のJR各社や私鉄と変わらない。
知らせ灯のみで発車しているのはあくまでも電化区間のみとなっている。特急も通勤電車も同じである。